2017 Fiscal Year Research-status Report
免疫・炎症・血栓性疾患における好中球細胞外トラップの役割の解明
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15K09499
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山下 浩平 京都大学, 医学研究科, 准教授 (80402858)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 好中球細胞外トラップ / スフィンゴシンキナーゼ / 流産 / PAD4阻害剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はこれまでの検討から、129Sv/C57BL/6バックグランドのsphingosine kinase-1および2(SphK1, SphK2)欠損マウスにおいて、SphK1(-/-)SphK2(+/-)雌マウスは妊娠をするものの脱落膜組織から大量に産生されるCXCL1およびCXCL2に反応して子宮組織に浸潤した活性化好中球による過剰な炎症のため、E7.5に流産をきたすことを報告した(Mizugishi et al. J Biol Chem 2015)。 今年度はこの流産モデルにおける好中球細胞外トラップ(NETs)の役割を解明する目的で実験を行った。その結果、好中球顆粒蛋白であるエステラーゼ、シトルリン化ヒストンH3、DNAに対する特異抗体などを用いて免疫染色を行ったところ、流産を起こした子宮組織ではこれらが陽性に染まる多量の好中球が検出され、NETsが大量に存在することが示された。また、NETs産生を抑制することが知られているPAD4阻害剤であるCl-amidineを流産マウスのday5ならびにday7に投与したところ、流産するマウスの割合が100%から約30%にまで減少すること、そしてその流産を回避できたマウスの子宮組織ではNETsの割合がほぼ検出できないレベルにまで抑制されていることが示された。さらに、ヒト脱落膜細胞にsphingosine kinase阻害剤であるDMSを加えて48時間培養して得られた上清によって健常人好中球を刺激した場合、DMS非添加群と比較して非常に有意なNETs産生が認められた。 以上の結果から、この流産マウスにおいてNETsが流産のエフェクターであることが示され、同様の機序が原因不明のヒト流産にも起こっている可能性が示唆された。 本研究の成果は、FASEB Journal, 31, 5577-91, 2017で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度までに研究課題の一つであるIgG4関連疾患の一表現型である自己免疫性膵炎の病態形成におけるNETsの役割を解明することができた。今年度はさらに我々が開発したスフィンゴシンキナーゼ欠損流産マウスモデルにおいて、NETsが直接的なエフェクター作用を有することを明らかにすることができた。以上、種々の免疫・炎症性病態においてNETsが様々に重要な役割を果たす可能性について報告することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は今回明らかにしたスフィンゴシンキナーゼ欠損流産マウスモデルにおけるNETsの直接的なエフェクター作用の詳細な分子機構について解析を進める予定である。網羅的シトルリン化蛋白の検討から非常に期待できる結果が得られており、その組織内での発現や他の蛋白との相互作用などを中心に解析を進め、これらの実験結果を纏めて報告したいと考えている。
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Causes of Carryover |
これまでに得られた実験結果を発展させてさらなる追加実験を行い、得られるデータを含めて研究成果をまとめ、これらを学会で報告したり、学術誌へ論文投稿したりするために次年度使用額が生じた。 具体的には、平成29年度に論文発表したスフィンゴシンキナーゼ欠損流産マウスにおける好中球細胞外トラップの役割について、シトルリン化蛋白の網羅的解析から標的分子を絞り、その分子動態から詳細なメカニズムを解析する予定である。
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Research Products
(1 results)