2015 Fiscal Year Research-status Report
血液細胞の免疫反応および造血器腫瘍における核酸センサー分子DHX29の役割
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15K09500
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
杉本 直志 京都大学, iPS細胞研究所, 特任研究員 (10447956)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | DHX29 / 血液細胞 / 造血器腫瘍 / 核酸センシング / 自然免疫 / 造腫瘍性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ヒト血液細胞の自然免疫反応ならびに造血器腫瘍におけるDHX29分子の役割を明らかにすることを目的としている。平成27年度は、先ずは正常血液細胞や造血器腫瘍におけるDHX29分子の発現を、リアルタイムqPCRやウェスタン・ブロット法によって調べた。前者につては、健常者末梢血から、単球やB細胞、CD4+T細胞・CD8+T細胞、NK細胞を単離し、それぞれに応じた分化や刺激の培養も行い試料を準備した。その結果、分化させた単球に発現を認めたが、その他では発現は乏しかった。また単球由来細胞に対するLPS刺激は、特に変化が見られなかった。このことから、DHX29は、単球由来の分化細胞では機能している可能性が示唆された。 他方、造血器腫瘍細胞株を幅広く10種類以上収集して発現を解析したところ、THP-1細胞とその分化させた状態を始め、多くの細胞株について強い発現が認められた。合わせて考えると、正常細胞では、限られた細胞でしか発現していないのに対し、多くの造血器腫瘍株で発現していることから、DHX29は造腫瘍性に強く関係していることが示唆された。なお、試みにTHP-1細胞においてDHX29のノックダウンを施行したところ、ノックダウンに伴い細胞数の減少が認められた。 また、昨年には他の複数のグループより、同じDExD/Hヘリカーゼ・ファミリー分子であるDDX41の変異が、家族性および散発性の骨髄異形成症候群/急性白血病に多く見られることが報告された。その中の一報ではDHX29の変異も2例報告されていた。これらのことからも、DHX29が造血器腫瘍において重要な役割を果たしていることが強く示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
H27年度においては、血液細胞や造血器腫瘍におけるDHX29分子の発現を調べるため、正常末梢血由来の血液細胞、造血器腫瘍細胞株に加え、組織由来の血液・免疫細胞および造血器腫瘍の臨床献体などの多種多様な試料についてウェスタン・ブロットおよびリアルタイム定量PCRを実施予定であった。正常末梢血由来の血液細胞については、単球(単離直後、マクロファージおよび樹状細胞に分化後、さらにLPS刺激後)やB細胞(単離直後および抗CD40リガンド/IL-2刺激後)、CD4+T細胞・CD8+T細胞(単離食後および抗CD3/抗CD28/IL-2刺激後)、NK細胞(単離直後およびIL-2刺激後)を単離し、各細胞特性に応じた分化や活性化の培養を経て試料を準備して、DHX29の発現を調べられた。 造血器腫瘍細胞株については、THP-1やK562, U937, HEL, Jurkat, MOLT4, Ramos, KIS1, U266,P716など、骨髄性およびリンパ性の約10種類の各種造血器細胞株について発現の解析が可能であった。そのほかにも約20種類の細胞株が必要に応じて準備可能となっている。 組織由来の血液・免疫細胞および造血器腫瘍の臨床献体については、予想以上に検体の収集が困難であったこと、研究代表者の異動があったことから、進行が一時期遅滞し、十分な試料収集にいたらずデータ解析には至っていない。 他方、H28年度予定のDHX29のノックダウンについては、必要なプラスミドなどが入手できており、いつでもプラスミドやshRNAウィルスの作成が可能な状況となっている。実際、予備実験を始めており、次年度に向けた準備が順調に進んでいる状況となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
H27年度の、正常末梢血血液細胞ならびに造血器腫瘍株の発現解析の結果を踏まえ、正常末梢血細胞分画については、単球由来樹状細胞およびマクロファージに発現が認められたことから、これらの細胞で適用可能なsiRNAまたはshRNAによるノックダウンを施行し、分化および免疫反応について解析を行う。具体的には、TLRによる膜型および細胞質内センシングの双方について、刺激前後の細胞表面形質や産生サイトカインを比較検討する。 造血器腫瘍細胞株については、重要性が強く示唆されることから、強く研究を進めていきたい。まずは複数の発現株について、shRNA, 強制発現ベクターを用いて、腫瘍株の増殖・生存について解析を行う。また、家族性および散発性の骨髄異形成症候群/急性白血病の一部でDHX29の変異が認められたことから、シークエンシングも検討する。さらに、造血器腫瘍について報告がされたDDX41についても発現や機能の比較検討を行う。以上の様な解析を、DDX41とともに、腫瘍化に関連が深いと疑われる骨髄異形成症候群/急性白血病については、細胞株および臨床株について、重点的に検討を行う。機能解析の結果、特に重要な役割を果たしていると考えらえる臨床献体や細胞株については、その分子メカニズムの解明を行う。方法としては関連すると想定される分子について、シグナリングや発現はウェスタン・ブロットを行い、相互作用が想定されるタンパクについては免疫沈降で結合を解析し、共焦点顕微鏡にて局在の有無を検証する。 以上のような研究方法によって、DHX29の血液細胞、造血器腫瘍における役割を詳細に明らかにしたい。
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