2016 Fiscal Year Research-status Report
白血病に対する細胞免疫療法の最適化に向けて- T細胞ネットワークを輸注する-
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15K09506
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
藤原 弘 愛媛大学, 医学部附属病院, 講師 (20398291)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 養子免疫療法 / 遺伝子改変T細胞 / T細胞受容体(TCR)遺伝子 / キメラ型抗原受容体(CAR)遺伝子 / 白血病幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
急性骨髄性白血病(AML)・骨髄異形成症候群(MDS)に対する腫瘍抗原特異的T細胞受容体(T-cell receptor: TCR)遺伝子改変T細胞(TCR-T細胞)を用いる有効な細胞免疫療法の開発を目指して、我々は白血病抗原WT1を日本人に最も頻度の高いHLA-A24拘束性に認識するTCR-T細胞療法臨床試験(UMIN 0001159)を実施し抗白血病効果を確認した。その結果を米国血液学会で発表し論文化を進めている。 基礎研究として、腫瘍抗原Aurora Kinase A(AURKA)をHLA-A2拘束性に認識するTCR遺伝子を搭載した、独自の機能強化型siTCRレンチウイルスベクターを用いて遺伝子改変したT細胞の抗白血病効果を報告した。さらに、AML幹細胞がAURKA mRNAを高発現しており、この治療法がAML幹細胞を抑制できる可能性を示した。加えて、AML幹細胞を標的とする遺伝子改変CD4陽性T細胞を作成する目的で、白血病を発症するIDH1(Isocitrate Dehydrogenase 1)遺伝子R132H変異を含み日本人に頻度の高いHLA-DR4、DR15に提示される新たな腫瘍抗原エピトープ(ネオアンチゲン)の同定を進めている。 もう一つの遺伝子改変T細胞療法であるキメラ型受容体遺伝子導入T細胞(CAR-T細胞)の研究も並行して行っている。現在、臨床的に利用可能な全ての癌治療用モノクローナル抗体を利用できる万能型CAR-T細胞を開発しATL治療に応用できることを論文報告した。さらに、がん・精巣抗原NY-ESO-1を標的として、治療抵抗性多発性骨髄腫を対象疾患とする新たなCAR-T細胞療法(HLA-2/NY-ESO-1免疫複合体を認識するCAR-T細胞)の開発と、同一標的に対するT細胞活性化型bispecific抗体の研究も行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々は、白血病抗原WT1をモデルにHLAクラスI拘束性TCR遺伝子を導入したCD4+T細胞を作成して、遺伝子改変CD8+T細胞のメモリーT細胞化を促進する白血病特異的ヘルパーCD4+T細胞として機能する事を報告した(Fujiwara H et al. Leukemia,2016)。必然的に、白血病幹細胞を傷害するHLAクラスI拘束性TCR遺伝子をCD4+T細胞に導入すれば、より白血病抑制効果の高い遺伝子改変ヘルパーCD4+T細胞が得られる可能性がある。AURKA特異的siTCR-T細胞を作成して我々はこの可能性を示した(英文原著5)。また、我々は、既存の抗体を抗原認識に用いて抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)を発揮するエフェクター細胞である、FcγRIIIa-CD3ζキメラ遺伝子を導入したCD16ζCAR-T細胞を開発したが、この遺伝子導入CD4+T細胞も強力な抗腫瘍性ヘルパーT細胞として機能した(英文原著6)。並行して、我々は、白血病幹細胞が持つIDH1R132H遺伝子変異(driver mutation)由来のHLAクラスII拘束性ネオ・アンチゲンエピトープの探索を進め、汎用性の高い遺伝子改変ヘルパーCD4+T細胞の作製を検討している。 さらに、我々は、治療抵抗性多発性骨髄腫を対象に、TCRとCARのハイブリッドである腫瘍抗原エピトープ・HLA複合体を認識するCAR遺伝子を、がん・精巣抗原NY-ESO-1/HLA-A2複合体を認識するCARをモデルに作成しヘルパーCD4+CAR-T細胞の機能を検討している。その際、幾つかの問題点が確認された。そこで、体外で作成したCD4、CD8+T細胞ネットワークを輸注する方式と並行して、患者末梢血中のCD4、CD8+T細胞に同時に治療抗原特異性を付与出来るbispecific抗体も合わせて作成し、その有効性を比較検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究最終年度に当たる今年度は、白血病特異的CD4+T細胞シーズの拡大をさらに進める。第一に、骨髄性白血病幹細胞を認識できるネオ・アンチゲン特異的CD4+T細胞の樹立を加速させる。遺伝子変異が特定されている骨髄性疾患を対象として、遺伝子変異を含む抗原ペプチドプールを作成し、該当するHLAを持つ患者末梢血リンパ球のIFN-γ産生応答を指標にスクリーニングする。この目的の為の細胞株、患者検体、患者細胞の遺伝子変解析は終了している。第二に、HLAクラスI拘束性TCR遺伝子導入CD4+T細胞研究を発展させて、抗原エピトープ・HLAクラスI複合体を認識する新規モノクローナル抗体から作成したCAR遺伝子を導入したCAR-CD4+T細胞の検討を進める。現在、治療抵抗性多発性骨髄腫を治療対象として、NY-ESO-1/HLA-A2複合体を認識するCAR-T細胞と、さらにT細胞活性化型bispecific抗体を作成して、その抗腫瘍効果を比較検討している。さらに、制御性T細胞、免疫チェックポイント阻害剤を加えて検討を進める。加えて、質量分析法を用いて白血病細胞株及び患者細胞膜蛋白上のHLAクラスIに結合して提示される腫瘍抗原を網羅的に検索する。新たに見出した標的分子を認識するCAR遺伝子導入CAR-CD8+T細胞とCAR-CD4+T細胞を作成しその機能を解析する。高親和性CAR遺伝子を得るには、CD8を持たないJurkat細胞に遺伝子導入して抗原応答性サイトカイン産生を指標に選択する。これら研究から、前者は、様々な内因性白血病抗原に反応するCD8+T細胞を誘導することを目的としたアジュバント細胞的な白血病特異的CD4+T細胞として、後者は細胞内腫瘍抗原を標的に出来るCD4-CAR-T細胞として、CD8-CAR-T細胞と共にネットワーク輸注に用いる細胞製剤としての開発を目指す。
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Causes of Carryover |
全体として研究の進捗が見られ、それに応じて使用額が適正に近づいたが、免疫不全マウスを含めたin vivo実験に使用する資材の購入計画が一部29年度に掛ったことが主な要因として、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究計画の内容に従って、ベクター開発、細胞培養関連、遺伝子導入試薬、NOGマウス購入と飼育、in vivo imaging実験の費用に研究費を充てる。また、現在得られた結果を、学会等で成果を発表する旅費や国際雑誌に論文発表する経費等にその一部を充てる。
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Research Products
(28 results)
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[Journal Article] T-cell Receptor Signaling Activates an ITK/NF-κB/GATA-3 axis in T-cell Lymphomas Facilitating Resistance to Chemotherapy.2017
Author(s)
Wang T, Lu Y, Polk A, Chowdhury P, Zamalloa CM, Fujiwara H, Suemori K, Beyersdorf N, Hristov AC, Lim MS, Bailey NG, Wilcox RA.
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Journal Title
Clinical Cancer Research
Volume: in print
Pages: in print
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Dismal outcome of allogeneic hematopoietic stem cell transplantation for relapsed adult T-cell leukemia/lymphoma, a Japanese nation-wide study.2017
Author(s)
Fujiwara H, Fuji S, Wake A, Kato K, Takatsuka Y, Fukuda T, Taguchi J, Uchida N, Miyamoto T, Hidaka M, Miyazaki Y, Tomoyose T, Onizuka M, Takanashi M, Ichinohe T, Atsuta Y, Utsunomiya A; ATL Working Group of the Japan Society for Hematopoietic Cell Transplantation.
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Journal Title
Bone Marrow Transplantation
Volume: 52 (3)
Pages: 484-488
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Development of engineered T cells expressing a chimeric CD16-CD3ζ receptor to improve the clinical efficacy of mogamulizumab therapy against adult T cell leukemia.2016
Author(s)
Tanaka H, Fujiwara H, Ochi F, Tanimoto K, Casey N, Okamoto S, Mineno J, Kuzushima K, Shiku H, Sugiyama T, Barrett J, Yasukawa M.
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Journal Title
Clinical Cancer Research
Volume: 22(17)
Pages: 4405–4416
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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[Presentation] Adoptive immunotherapy using WT1-specific T-cell receptor gene-modified lymphocytes for the treatment of patients with acute myelogenous leukemia and myelodysplastic syndrome.2016
Author(s)
Fujiwara H, Tanimoto K, Tawara I, Masuya M, Miyahara Y, Nishida T, Murata M, Terakura S, Akatsuka Y, Ikeda H, Kageyama S, Nukaya I, Takesako K, Nobuyuki Emi N, Katayama N, Shiku H, Yasukawa M.
Organizer
The 7th JSH International Symposium
Place of Presentation
Awaji, Hyogo, Japan, Westin Hotel Awaji
Year and Date
2016-05-24 – 2016-05-25
Int'l Joint Research / Invited
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