2015 Fiscal Year Research-status Report
マイクロRNA含有エクソソームを用いた関節リウマチの新規治療の開発
Project/Area Number |
15K09526
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
中町 祐司 神戸大学, 医学部附属病院, その他 (80379429)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河野 誠司 神戸大学, 医学部附属病院, 准教授 (20351512)
三枝 淳 神戸大学, 医学部附属病院, 講師 (20514970)
笠木 伸平 神戸大学, 医学部附属病院, 助教 (80457051)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | エクソソーム / マイクロRNA / 関節リウマチ |
Outline of Annual Research Achievements |
関節リウマチ(RA)は、わが国では70万人以上が罹患している原因不明の自己免疫疾患である。主に中・壮年層に罹患し関節痛・関節変形によるADL・QOL の低下は、経済的損失とも相俟って医学的にも社会的にも重要な疾患である。生物学的製剤による治療法は従来の治療法と比して各段に優れているが、無効例あるいは効果減弱例が認められることや治療費が高価なことが問題である。ヒトではマイクロRNAが1/3の蛋白の発現を制御していると考えられている。われわれはラットアジュバンド関節炎モデルを用いてmiR-124前駆体を関節局所に投与した結果、関節炎を抑制することを明らかにした。さらに、コラーゲン誘導関節炎モデル(CIA)マウスを用いて全身投与を行ったがその効果は弱く、miR-124 を炎症局所および担当細胞に運ぶ適切な運搬体の検討が必要となった。近年、マイクロRNA を細胞外へ分泌する運搬体としてエクソソームが発見された。エクソソームは異なる種類の細胞へ取り込まれ、エクソソーム内のマイクロRNA は取り込まれた細胞で機能することが明らかになっている。 本研究は、miR-124を豊富に含むエクソソームを用いてRAの新たな治療法の開発を目的とする。 平成27年度の研究計画は関節炎治療用エクソソームを作成し、マウスCIAモデルに投与することであった。 間葉系幹細胞由来のエクソソームは免疫能を抑えるとの報告があることからヒト間葉系幹細胞にmiR-124前駆体をトランスフェクションしmiR-124が豊富な間葉系幹細胞由来エクソソームを作成し、ヒトRA滑膜細胞株E11と共培養した結果、E11の増殖を抑制したことから間葉系幹細胞由来のmiR-124が豊富なエクソソームがRA滑膜細胞に取り込まれ機能することが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成27年度までの実験計画はマクロファージやFLS に貪食されやすくかつ免疫能を抑制するエクソソームにmiR-124を豊富に含有させ関節炎治療用エクソソームを作成し、マウスコラーゲン誘導関節炎モデル(CIA)に全身投与することであった。 まず、エクソソームの抽出法を確立するのに時間を要した。エクソソームは直径50-100nmの膜で包まれた小胞であるということだけで明確な定義はない。また、細胞から排出される小胞は多数報告されている。エクソソームの抽出は標準的方法の超遠心法や市販のキットが用いられている。エクソソームを高回収率する超遠心法での条件を綿密に検討し確立したが、結果として回収率が悪くかつにin vivoの実験に使用するための全工程無菌的操作が困難であるこが判明した。しかし、市販の抽出キットも満足なものはなかったが、最近開発されたキットで、エクソソームの回収率が高いとされる抽出キットが市販され、検討中である。 また、ヒト間葉系幹細胞にmiR-124前駆体をトランスフェクションし、培養上清のエクソソームを超遠心法で抽出し、miR-124が豊富なヒト間葉系幹細胞由来エクソソームを作成した。このエクソソームとヒトRA滑膜細胞株E11を共培養した結果、エクソソーム中miR-124がE11で機能することが明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
コラーゲン誘導関節炎(CIA)マウスにmiR-124が豊富なエクソソームを全身投与するためにマウス由来間葉系幹細胞を用いてmiR-124が豊富なエクソソームを作成し、RANKL刺激マウスマクロファージ細胞株RAW264.7と共培養しmiR-124が直接的に作用するNFTAc1の発現低下を確認する。その後、このmiR-124豊富なエクソソームを関節炎治療用エクソソームとしてマウスCIAモデルで関節炎抑制効果を検討する。関節炎マウスおよび非関節炎マウスに関節炎治療用エクソソームを尾根部に静脈投与を行い、関節炎誘導後day 45 まで関節スコア、体重を観察する。Day 45にマイクロCT で骨破壊の程度を評価した後、踵関節の病理標本を作成、HE 染色後、関節炎の程度を観察する。また副作用の影響を観察するために踵関節以外の組織も病理標本を作成し評価を行う。 また、GFP を共発現するmiR-124 発現ベクターを関節炎治療用エクソソーム産生細胞に導入し、GFP 陽性関節炎治療用エクソソームを作成する。このエクソソームをマウスCIA モデルの尾根部に静脈内投与を行い、関節炎治療用エクソソームの組織への移行をマルチスペクトルイメージング装置で確認する。 さらに、関節炎抑制の免疫的機序を明らかにするために、関節炎治療用エクソソーム投与CIAマウスの血漿中および関節組織中のサイトカイン・ケモカイン(TNFα、IL-6、IL-1β、IL-17、MCP-1など)濃度をELISAで検討する。免疫細胞の機能は脾細胞を調整し、T 細胞分画をフローサイトメトリーで評価する。また、踵関節の病理標本を作成し、免疫染色で詳細に検討する。
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Causes of Carryover |
当初の計画より少し遅れているため少額の繰越額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
関節炎治療用エクソソームを作成し、コラーゲン誘導関節炎(CIA)マウスにこの関節炎治療用エクソソームを全身投与し関節炎抑制効果およびその機序を研究するために使用する。
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