2015 Fiscal Year Research-status Report
自己免疫疾患におけるエクソソームによる炎症制御機構の解明
Project/Area Number |
15K09550
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
高松 漂太 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30584411)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 自己免疫疾患 / レポーター細胞 / 炎症 / エクソソーム / 遺伝子改変技術 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は自己免疫疾患ごとに炎症プロファイルが異なるとの予想に基づき、その炎症プロファイルの違いがエクソソームによる炎症誘導活性の違いよるか否かについて明らかにしようとするものである。 本年度は、各自己免疫疾患における炎症プロファイルを同定するために、通常のELISA法に加えて、レポーター細胞を用いた評価系を構築し、自己免疫疾患由来血清におけるサイトカイン活性や、炎症誘導活性の測定を行った。 これは、NFkBやIRFといった炎症誘導分子のプロモーター下流にレポーターを挿入することで炎症誘導活性をモニターすることが可能な細胞で、これらにサイトカイン受容体を強制発現させることによりサイトカイン活性を評価できたり、CRISPR/Cas9システムを用いて炎症誘導に重要な自然免疫系受容体の欠損細胞株を作成することで、炎症誘導活性や関与するシグナル経路の同定が可能となる細胞である。また、このレポーター細胞は、実際の生物学的活性やエクソソームなどの膜小胞に内包された物質による炎症誘導活性を評価することが可能で、さらに、shRNAや遺伝子改変技術を併用することにより炎症誘導に関与する分子メカニズムまで解析が可能となる。 本年度は、エクソソーム分画に細分化する前に、エクソソームを含んだ血清全体による炎症誘導活性について検討し、我々のシステムの有用性を検証した。また、これまで遺伝子導入や遺伝子改変が困難と言われていたヒト単球系細胞であるTHP-1細胞株への遺伝子導入方法を確立し、STING欠損THP-1レポーター細胞株も樹立した。現在、MyD88など様々な炎症関連分子欠損レポーター細胞株の樹立を行っており、今後、エクソソームを用いた実験を効率よく進められるよう実験基盤を整えることに労力を費やした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
エクソソームによる炎症誘導活性の評価は、従来ヒト末梢血単核球細胞を単離してそれに振りかけ、24時間後の培養上清をELISA法により評価する方法で検討していた。手間、費用、再現性、系の発展性といった観点から、評価系の改良の必要性を認識し、研究実績に記したように炎症誘導活性の評価系の樹立に労力を割いた。 当初の計画とは若干戦略や方法が異なってはいるが、これまでに樹立した評価系は、比較的安価にハイスループットな解析が可能で、遺伝子改変技術を応用したり、新規薬剤のスクリーニングにも応用可能であるなど、系の発展性という意味において非常に有用な評価系が樹立できたものと思われる。今後、研究計画に基づいた炎症誘導活性や誘導機構の違いについて評価可能な状況になりつつある。 また、関節リウマチのサンプル収拾については、生物製剤の利便性が高まったことにより、治療導入を外来で行ってしまう症例が増加し、合併症や薬剤投与による修飾を受けないフレッシュな患者検体の収拾が予想を下回ったため当初の予定よりも若干遅れている。また、臨床的意義を明らかにするための患者医療情報データベースの整備に時間を要していたため、患者検体を用いた評価については当初の計画よりもやや遅れてしまっている。 エクソソームのプロテオミクス解析については、炎症誘導活性の表現形とリンクさせた形で進めたいと考えておりまだ着手できていない。今後、炎症誘導活性や誘導経路を指標に分類してプロテオミクス解析を進めたい。
|
Strategy for Future Research Activity |
炎症誘導活性モニター細胞を用いて、様々な自己免疫疾患における炎症プロファイルを評価するほか、血清からエクソソームを単離しエクソソームによる炎症誘導活性について評価する。 また、様々な自然免疫受容体(MyD88, TLRs, STING, MAVS, IFN受容体など)の遺伝子欠損レポーター細胞株を樹立し、自己免疫疾患由来血清やエクソソームによる炎症誘導機構について検討する。 炎症誘導活性と患者医療情報とを照合し、疾患や病態に特徴的な炎症プロファイルや炎症誘導活性について評価し、その臨床的意義について検討する。 炎症誘導活性や誘導経路を指標に単離したエクソソームを分類し、各エクソソームのプロテオミクス解析を行い、エクソソームに含まれる炎症性物質の同定を行う。
|
Causes of Carryover |
炎症誘導活性モニタリングシステム構築後、プロテオミクスや次世代シークエンサーを用いた解析を予定しており、そのための費用として本年度は予算の執行を最小限に抑えるよう心掛けた。 また、遺伝子改変や遺伝子導入は既存のウイルスベクター等を用いたことにより、ラボにある実験機器やリソースにより準備することが可能であった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
28年度は、炎症誘導活性モニタリングシステムが樹立できるものと予想され、樹立後プロテオミクスやNGS等の解析を行う予定である。1検体当たり10-15万円ほどかかることが見積もられており、そのための予算として、27年度の残予算を使用したいと考えている。
|