2017 Fiscal Year Research-status Report
自己免疫寛容の誘導を目的としたmTOR阻害剤によるTregワクチン療法の開発
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15K09555
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
前田 伸治 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80381854)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | IL-2 / 関節炎 / Th17 / JAK阻害剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)関節炎モデルマウス(SKGマウス)を用いた「関節炎を惹起→Tregコンバージョン誘導実験」。mTOR阻害剤(everolimus)を関節局所(リポソーム使用)、全身投与(腹腔内)を行ったのちにmIL-2/IL-2Ab complex(以下mIL2cx)を投与し、関節炎の改善の有無を検討した。Tregは著増したが、関節炎の改善は認めなかった。一方、非炎症病態(非関節炎時)に投与したmIL2cxは、関節炎発症の予防効果を認めた。背景にある炎症病態が、mIL2cxによるTreg増加のみならず非TregのCD25陽性活性化T細胞を活性化させる可能性が示された。そこで、炎症病態を直接阻害する薬剤の併用を行うことで、自己免疫寛容を再誘導する方法を検討した。IL-6受容体抗体、TNFα阻害剤、CTLA-4-Ig(Abatacept)、JAK1/2阻害剤(Balicitinib)を関節炎モデルの疾患抑制に効果があるかを検討した。しかし、TNFα阻害剤、CTLA-4-Ig(Abatacept)においては、関節炎の予防効果は期待できるものの、発症後の疾患抑制は認められなかった。JAK1/2阻害剤(Balicitinib)の使用は、早期に関節炎モデルも疾患活動性の抑制が確認された。 2)ヒトの末梢血T細胞を移入したNOGマウスを用いたxeno-GVHDモデルにおけるhuman-IL-2/IL-2Ab complex(以下hIL2cx)の検討。hIL2cxにより一過性のTreg(CD4+CD25+Foxp3+)増加を確認し、早期投与の方がxGVHDを抑制したが、その後の検討でhIL2cx非投与と比べるとxGVHDは悪化することが示された。hIL2cxにより、Treg増加のみならず、Th1/Th17(IFNγ+IL-17+CD4 Tcells)も増加することが確認された。ヒト免疫細胞においても、背景にある炎症病態がTregによる自己免疫寛容誘導の阻害要因となると考えられ、ヒトTh1/Th17(Th17.1)細胞をターゲットとした免疫抑制治療が重要である可能性が示された(これらの結果を学会発表し、論文発表にむけて執筆中である)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本課題の最終目標は、IL-2/IL2Ab complexにより制御性T細胞を増強し、自己免疫疾患を改善させヒトに応用することであるが、ヒト化マウスを用いたその後の詳細な解析により、当初の予想に反し、ヒト免疫細胞へは、炎症を逆に惹起する作用があることが確認された。これを解決し本課題の最終目標に近づくため、炎症を増悪させる因子を詳細に解析する必要が新たに生じ、これを遂行するため、研究に遅れが生じている。次年度も継続して未使用額をその経費に充てることとし、研究の延長申請とした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度前半は、まず関節炎モデルマウスを用いた研究において、JAK阻害剤(Balicitinib)が関節炎の抑制が顕著であったことから、BalicitinibとmIL2cxとの併用により、Tregを増加させつつ関節炎病態を抑制し、mIL2cxにより誘導されるTregが疾患の長期抑制を行えるかを検討していく。 平成30年度後半は、ヒト化マウスのx-GVHDモデルにおいて、同様にJAK阻害剤をhIL2cxと併用し、hIL2cxによりTregを増加させつつJAK阻害剤でx-GVHD病態を抑制し炎症環境を改善させ、hIL2cxにより誘導されるTregが疾患の長期抑制を行えるかを検討していく。 これらにより、炎症病態を強く抑制させる免疫治療と、IL2cx(マウス、ヒト)との併用により、IL2cxのTreg誘導が疾患抑制、長期抑制維持を達成できるか確認し、学会発表、論文執筆で公表する予定である。
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Causes of Carryover |
本課題の最終目標は、IL-2/IL2Ab complexにより制御性T細胞を増強し、自己免疫疾患を改善させヒトに応用することであるが、ヒト化マウスを用いたその後の詳細な解析により、ヒト免疫細胞へは、炎症を逆に惹起する作用があることが確認された。これを解決することが本課題の最終目標に近づくため、炎症を増悪させる因子を抑制することを目標とした研究の変更が必要であった。次年度も継続して未使用額をその経費に充てることとしたい。 直接経費の物品費は、JAK1/2阻害剤を用いるため、それらの薬剤の購入と、JAK阻害剤をマウスに安定して投与するための薬剤ポンプosmotic pumpの購入、および追加実験のためのマウス購入費やフローサイトメトリー解析のための蛍光抗体の購入にあてる予定である。また人件費・その他は、論文執筆の英語校正や学会発表の出張費などにあてる。
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Research Products
(3 results)