2016 Fiscal Year Research-status Report
ポルフィリン薬の効果増強を用いた光線力学的抗菌療法の新規開発と応用
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15K09562
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
豊嶋 恵理 旭川医科大学, 医学部, 助教 (20466501)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小笠原 浩二 旭川医科大学, 医学部, 研究生 (10726904)
大崎 能伸 旭川医科大学, 医学部, 教授 (30191935)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 光線力学療法 / 抗菌治療 / 光増感剤 / ピロリ菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
細菌感染症に対する抗生物質による治療は耐性菌誘導という問題を含有する。以前我々の研究グループは動物のグラム陽性菌感染症に対する光線力学的療法による殺菌的効果を示した。さらに光増感剤を併用することによりグラム陰性菌治療への応用が期待される。そこで多剤耐性菌対策となりうる、抗生物質に頼らない光線力学的抗菌療法の開発を目的として研究を行った。 一方胃癌の発生危険因子であるグラム陰性菌、Helicobacter pylori(以下ピロリ菌)は現在主に多剤併用抗生物質による除菌治療が行われるが、耐性を生じる問題は解決されていない。臨床の現場では上部消化管内視鏡検査により診断されるが、内視鏡時に実施可能な光線力学療法がピロリ菌の診断、除菌へ臨床応用可能となれば、抗生物質耐性ピロリ菌の機序の全く異なる治療である新規抗菌療法となる可能性がある。 そこで我々は赤色LED光源を照射したピロリ菌の光増感剤を検索することにより、安全性が高く有効な光増感剤を併用した抗菌作用の増強を目指す。またマウスのピロリ菌感染モデルを作成する。作成したピロリ菌感染マウスに光増感剤を併用した光線力学療法を行い、ピロリ菌感染に対する治療効果を評価する。マウス胃壁へのLED照射による治療効果をピロリ菌の生菌残存数によって評価すると同時に胃壁の病理組織学的検討を行う。以上から光増感剤を併用したピロリ菌に対する光線力学療法のシステムを開発することにより、臨床への応用を模索する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前段階としてピロリ菌培養株に対して感受性試験を実施した。培養ピロリ菌に薬剤を投与することによりLED照射時の光線感受性の変化を検討した。メチレンブルー及び重曹を添加することにより感受性が増加した。いずれもヒトへ投与可能な薬剤であり本研究の光増感剤とした。 一方、マウスにピロリ菌を経口反復投与して胃内にピロリ菌を感染させるマウスモデルを作成した。投与群で胃壁内のピロリ菌感染が確認出来た後に光増感剤としてメチレンブルーと重曹を、また対照群に蒸留水を経口投与した。赤色LED光源を用いて腹腔内からマウス胃壁に麻酔下で照射した。1回照射後及び2回照射後に治療群、増感剤投与単独群、対照群の胃を摘出しピロリ菌を分離培養するとともに病理組織標本による評価を実施した。結果光増感剤投与のみによるピロリ菌感染の影響や胃損傷は認めなかった。光増感剤併用照射治療群でピロリ菌生菌数の減少を認めたが除菌には至らず、2回治療後の群にピロリ菌の増殖を認めた。
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Strategy for Future Research Activity |
上部消化管内視鏡を想定して麻酔下で経口的に直径1.8mmのファイバー束型のLED照射装置をマウスに挿入したところ、高頻度に物理的な胃損傷を合併した。そこで光線照射方法を再検討し、腹腔より胃壁に光源を接触させて照射した。照度の測定より直接照射に比して60%の積算照射量を得られたため、照射方法を変更した。 マウスのピロリ菌経口感染モデルを作成するにあたり、報告があるマウス及びピロリ菌株を採用した。しかしながら胃壁内のピロリ菌の存在は確認したがヒト慢性感染例で認める典型的な変化に至らなかった。胃炎惹起性が不足した可能性も考慮して、更に高病原性を有する株を用いることを検索している。ただし本研究で用いたマウスにおける感染報告がないため、投与動物の変更も必要となる。 光線照射方法を経口的挿入から腹腔内経由へ変更後に胃損傷は回避され研究を続行した。しかし胃壁内のピロリ菌が少数残存し、更に経過中2回照射後にピロリ菌の増加が認められ、胃壁内での生菌残存及び増殖が示唆された。現法のままでは臨床応用には治療効果不十分と予想される。照射方法変更の影響も考慮されるが照射量は確認しており否定的である。さらなる増感の目的でメチレンブルーと併用する薬剤を追加することを検討している。
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Causes of Carryover |
当該年度中に実施予定の動物実験開始がずれたため、薬剤購入時期が予定より遅延したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
光増感剤の組み合わせを更に追加する予定がある。高病原性ピロリ菌及び感染対象とする動物を購入し、追加実験する予定を組んでいる。
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