2018 Fiscal Year Research-status Report
近年出現したA群レンサ球菌新型株のゲノム解析を利用した劇症型感染症発症機構の解明
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15K09575
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
立野 一郎 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 講師 (50311642)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長谷川 忠男 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (10314014)
井坂 雅徳 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 助教 (40336673)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | A群レンサ球菌 / 劇症型感染症 / NADase / fabT |
Outline of Annual Research Achievements |
1.A群レンサ球菌新型株(特徴として、spy1908 遺伝子を含む領域を欠損している)には病原性の高い株と病原性の低い株の2種類が存在する。この病原性の違いが、fabT遺伝子の変異に依存していることを前年度までに突き止め、解析結果を論文として発表済みである(2016)。但し、この論文内で実施したゲノム解析は不完全(一本の環状DNAとしてつながっていない)な状態であった。そこで、論文で使用した新型株である10-85を再度Pac-Bioを用いてシークエンスしなおした(Accession No.AP019548) 。 2.現在、劇症型感染症に必須の病原因子と確定しているものは存在しないが、筆頭候補はNADaseである。そして、NADase の分泌はsub-MIC濃度のクリンダマイシンの存在下で促進される(分泌誘導)。この泌誘導のメカニズムについて、前年度に続いて解析を続行中である。前年度の実績に追加される新たな知見とし、(i) covS自身が必要なわけではなく、クリンダマイシン非存在下における活性レベルが重要である可能性、(ii) sub-MIC濃度自身も必須ではない可能性が浮上した。 3.msrDが新型株のマクロライド耐性により大きな貢献を果たしていることを前年度までに明らかにし、既に論文として発表済みである(2016, 2018)。本年度はさらに研究を発展させ、msrDの機能解析を実施した。MsrDは当初、相同性のあるタンパク質との比較から排出ポンプのサブユニットであると予想されたが、想定外のメカニズムでマクロライド耐性に寄与している可能性が浮上した。 4.前年度までに、新型株のef-p遺伝子を欠損させると病原性が低下することを発見している。1-3の研究のため、本年度は予定した研究を実施することができなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.当初の第1目標をすでに達成している。すなわち、「高病原性と低病性の違いがfabT変異によるもの」であった。但し、この結果は最終目標である「新型株のゲノム解析を利用した劇症型感染症発症機構の解明」にはあまり期待できないと予想された。 2.第2の目標に関しては、解析方法を改良したことにより研究を発展させることが可能になった。次年度中には少なくとも論文投稿が可能と予想している。 3.本研究でゲノム解析を実施した結果副産物として、「mefAを含むファージ領域を保持している」ことを発見した。この領域について解析することで当初の研究課題をさらに発展させた。すなわち、msrDが新型株のマクロライド耐性により大きな貢献を果たしていることを明らかにした。msrDはABC-F family に属するタンパク質であり、ABC-F には一部の elongation factor (EF)も含まれる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度が最終年度になります。それぞれの研究結果を論文発表したい。 1. 新型株である10-85株の全ゲノムシークエンスの結果を論文投稿する。 2. NADase活性の誘導の研究は、次年度中に論文投稿する予定である。 3. msrDの機能解析の結果を論文投稿する。 4. 時間的な余裕があれば、EF-Pの機能解析を推進する。
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Causes of Carryover |
「研究実績の概要」と「現在までの達成度」に記載した通り、研究は、当初の計画を超えて発展している。課題1が予想以上に早く達成されたため、次年度使用額が生じた。進展中の研究課題に使用させていただきたい。
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Research Products
(3 results)