2016 Fiscal Year Research-status Report
A群レンサ球菌性子宮内感染症の病態解明と薬物耐性・分子疫学解析
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15K09578
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
高橋 孝 北里大学, 感染制御科学府, 教授 (00292855)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 細菌 / 子宮内感染症 / 菌側因子 / 宿主因子 / 薬物耐性 / 分子疫学 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度において以下の研究内容を実施し、その知見が得られたので報告する。 1.劇症型感染症を惹起した膣分泌物由来A群レンサ球菌分離株における全ゲノム配列(ドラフト)を決定し、そのデータに基づいて遺伝子発現カスタムマイクロアレイを構築した。ヒト細胞間透過前および同透過後において同分離株よりRNAを抽出し、同アレイを用いて遺伝子発現プロファイルを網羅的に解析した。その結果、透過前と比較して透過後に発現量が増加した遺伝子群として、病原因子群(sic他)・代謝遺伝子群(collagen-like protein他)を認めたが、転写調節因子群ではその変動は見られなかった。この妥当性評価として、同RNAを用いて逆転写リアルタイム核酸増幅法を行い、透過前と比べた透過後でのsic遺伝子の発現量増加を確認した。本知見は膣分泌物由来A群レンサ球菌株における細菌学的特性を示唆している。 2.2012年夏季に分離した膣分泌物由来A群レンサ球菌株(n=87)および同咽頭ぬぐい液由来A群レンサ球菌株(n=78)を用いて、外毒素プロファイル(speA-speB-speC-ssa-smeZ)を核酸増幅法により評価した。その結果、咽頭ぬぐい液由来株と比較して膣分泌物由来株ではspeAに関する検出が多い所見が得られた。同speA遺伝子の保有と劇症型感染症発症との関連性が既に報告されている点を踏まえ、同所見も膣分泌物由来株における特徴を示している。 3.上記膣分泌物由来A群レンサ球菌株を用いて薬物感受性試験を行い、当該薬物耐性遺伝子に関する評価も実施した。テトラサイクリン系薬およびマクロライド系薬に対する同MIC値の上昇が認められ、各々tet(M)耐性遺伝子およびerm(B)耐性遺伝子の主たる関与が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度において臨床分離A群レンサ球菌株(特に膣分泌物由来株)が保有する細菌学的特性が明らかとなり、今後展開する基礎実験(ヒト細胞感染・動物感染)へと有機的に反映することが可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
収集した膣分泌物由来A群レンサ球菌株の中から強毒株および弱毒株を選別して、ヒト細胞感染の実験および動物子宮感染の実験を展開する。
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Causes of Carryover |
当該年度における旅費に関連する支出がないため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度、学術集会において研究成果を発表する予定である。
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