2016 Fiscal Year Research-status Report
サイトメガロウイルス感染症に対する新規治療薬候補の分子機構の解明
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15K09587
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Research Institution | Hokuriku University |
Principal Investigator |
村山 次哉 北陸大学, 薬学部, 教授 (60159184)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
定成 秀貴 北陸大学, 薬学部, 講師 (60121274)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ヒトサイトメガロウイルス / トリシン / ケモカイン / CCL2 / CCL5 / 抗ウイルス薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画: ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)に対するトリシン(4’, 5, 7-trihydroxy- 3’, 5’- dimethoxyflavone) の抗HCMV作用に関連する遺伝子・転写産物について網羅的に解析し、これまでに数種類の候補分子を明らかにしてきたので、今年度はトリシンと候補分子の関連性の分子機構を検証する。 H28年度の成果:1)HCMV感染により増強した宿主因子CCL2の発現は、トリシン処理により有意に抑制される事が明らかになっていたが、新たにCCL5の発現もmRNAおよび蛋白質の両者共にCCL2と同様の挙動を示すことが示された。 2)siRNAによりこれらのケモカインをノックダウンさせた細胞では、HCMVの複製が対照に比較して有意に抑制される事から、ケモカインCCL2・CCL5は抗HCMV薬のための良き標的分子である事が示唆され、トリシンはその有力な候補化合物である可能性がある。 3)HCMV感染細胞内のSTATタンパク質のリン酸化に対するトリシンの影響を調べたところ、STAT1とSTAT3のリン酸化が影響を受けることがわかった。そこで、STATタンパク質が発現調節しているMxA遺伝子(IFN誘導性遺伝子の一つ)の発現について調べたところ、MxAのmRNAは、HCMV感染細胞では感染後一過性に増加し感染72時間では著しく減少したのに対し、IFN-α処理だけの細胞では一過性のMxAのmRNAの増加があったが、72時間処理後も減少は見られなかった。感染細胞、IFN-α処理細胞のどちらにもトリシンを共存させると、MxA遺伝子の一過性の発現増加を抑制したが、感染細胞で72時間後に見られたMxA遺伝子発現の著しい減少は、トリシン存在下では見られなくなった。 以上のことから、トリシンの抗HCMV作用に関する分子機構の一端を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
候補遺伝子機能の検証の解析において、発現が変動した宿主細胞由来ケモカイン遺伝子の抑制目的に、siRNAを細胞内導入によるノックダウン細胞用いて、HCMV感染増殖に対するトリシン作用の減弱を確認する事等が比較的順調に進んだ事。さらに、発現低下した宿主細胞由来の遺伝子産物に対するリガンドを用いて、HCMVを感染に対するトリシン作用を再検証するなどの研究が、研究計画に沿っておおむね順調に進展する事ができた。
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Strategy for Future Research Activity |
1、H27年度と28年度に明らかにしたHCMV複製に介入する宿主分子ケモカイン・CCL2とCCL5の関与について、その分子基盤をさらに精査し、トリシンによるこれらのケモカインの発現抑制の機序やHCMVとケモカインの相互作用について解析する。 2、ケモカインおよびトリシン反応性宿主関連分子の宿主細胞内シグナル伝達経路について解析し、トリシンの抗HCMV作用の分子機序を明らかにする。
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Causes of Carryover |
当初の計画として、複数回の国内学会および国際学会のへの参加を予定していたが、スケジュールの調整がつかず全て参加する事ができなかった。また、2年目まで予定していたDNAチップを用いた遺伝子の発現変動の網羅的な解析が順調に進みほぼ初年度で完了した事、およびsiRNAの購入価格が予算案よりも安価であったために、予定していた予算執行が少なくて済んだ。以上のことから、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終年度の研究遂行に必要な物品費および研究成果発表に伴う旅費や論文作製に伴う経費等に使用する。
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Research Products
(13 results)