2016 Fiscal Year Research-status Report
インフルエンザ罹患後の症候性・無症候性心機能障害の発症頻度とその経過
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15K09588
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Research Institution | Osaka Medical College |
Principal Investigator |
伊藤 隆英 大阪医科大学, 医学部, 講師 (00319550)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石坂 信和 大阪医科大学, 医学部, 教授 (20270879)
浮村 聡 大阪医科大学, 医学部, 教授 (50257862)
寺崎 文生 大阪医科大学, 医学部, 教授 (20236988)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | インフルエンザ感染症 / 心筋炎 / 心電図 / 心エコー / 心筋障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、心症状のないインフルエンザウィルス感染症患者における、サブクリニカルな心血管検査異常の有無と頻度、および内容を調査することである。 昨年度までに、63名の症名(うち41名は科研費取得以前に倫理審査を受け、これを通過した後に検査データの収集を行ったもの)から検査データを取得している。これまでの結果から、心電図では軽微なST変化や不整脈など認める症名が7名、心エコーではごく軽度の拡張障害や微量の心嚢水を認めた症名が9名、血液検査ではCK-MBの軽度上昇を認めた症名が3名、それぞれ存在していた。また、これらの異常が認められた12名に対し再度同じ検査を施行、一部の異常所見が消失したことも確認している。具体的には心電図でST変化が基線に戻った2名、そして心エコーでは心嚢水が消失した1名で、左室の拡張障害や収縮障害のドップラー法のパラメータが改善傾向を示したケースも存在した。 このように、無症状のインフルエンザ感染患者においても、少なからず心機能に関するサブクリニカルな検査所見が認められた。また、可逆性の所見を呈した一部の症名からは、これらの所見は心筋に対するダメージまでは及ばない、一過性の反応である可能性が示唆された。 今年度は44名のインフルエンザ患者に対し、心電図、エコー、および採血を行ったところである。また、採血の際に生じた残血清は冷凍庫に保管している。今後、ウィルス抗体価などを測定することになるが、得られた結果をどのように解釈し、いかに病態の理解につなげていくのかが今後の課題である。 引き続き、データの解析と検討を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
インフルエンザウィルス感染症は季節性であるため、症名の取得は12月から翌年の3月に集中する。 初年度は41名、本年度は45名のインフルエンザ感染治癒後の患者から研究参加への同意をいただき、データの取得を行った。前述のように科研費取得以前の症名を合わせると、対象者は計104名となった。 研究計画書では対象者100名程度が一つの目標でもあったので、進捗状況は順調といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は計104名のデータの詳細な解析に入る。心エコーの心嚢水貯留や拡張障害低下はそれぞれ非特異的な、そして検者独自の判断に基づく所見であり、「異常」と断定することは少々無理がある。また、軽度のCK-MBやBNPの上昇は、条件や体質によっては認められることが報告されている。 したがって、明確に「異常」と判断することができるのは心電図所見のみと考えられる。104名中、心電図変化が認められた症名は13名(13%)、うちはっきりと心筋炎にみられるようなST変化が認められたのは2名のみ(2%)であることから、これ以上対象者の上乗せを行っても、研究結果に有意な傾向が現れないように思われる。 そこで、今年度でもって対象者の収集は打ち切り、今後は対象者が増えた状況での学会発表と論文執筆に注力する予定である。また、各対象者から得た冷凍血清を、病態解明に向けて今後どういう形で利用すべきなのか、考察を重ねていく考えである。
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Causes of Carryover |
データの収集が比較的順調だったとはいえ、収集対象が季節性の疾患で年によって症例数にばらつきがあること、必ずしもすべての患者から研究への同意が得られなかったこと、得られたとしてもフォローアップの検査に同意されない患者が少なくなかったことなどより、当初予想していた症例数よりも30%から40%ほど少なかった。また、ウィルス抗体価計測など血清学的な検査を講じるための時間的な余裕を持てなかった。さらに、最初の2年間はデータ収集に追われ、学会発表あるいは研究会発表の十分な機会を設けられなかった。以上の理由から研究費としての出費が減額され、残高持越しに至ったものと考える。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
先述したように、データ収集についてはある程度の症例数が集まったので前年度で打ち切りとする。今後はウィルス抗体価の評価に加え、学会や研究会での発表、そして論文執筆・投稿など、に対して、研究費を充てることを考えている。また、余裕があれば、データ解析専用のPCやハードディスクその他の購入も考えている。
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Research Products
(1 results)