2015 Fiscal Year Research-status Report
マイコプラズマ肺炎におけるEGFRシグナルの解析とその制御戦略の基盤的研究
Project/Area Number |
15K09589
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
桑野 剛一 久留米大学, 医学部, 教授 (60215118)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 武司 久留米大学, 医学部, 助教 (20632566)
木田 豊 久留米大学, 医学部, 講師 (30309752)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | Mycoplasma pneumoniae / TLR2 / EGFR / サイトカイン / トランス活性化 / 炎症 / IL-8 |
Outline of Annual Research Achievements |
Mycoplasma pneumoniae(Mp)感染に伴う肺炎の病態は、宿主のMp菌体への過剰な免疫反応により惹起されることが知られている。私どもの研究室では、Mp由来のリポプロテインがTLR(Toll Like Receptor)2/1及びTLR2/6を介して炎症性サイトカインの産生を誘導することを明らかにした。しかし、その双方に必須のTLR2を欠損したマウスにおいても、なお炎症性サイトカインの産生が認められたことから、Mp感染においてはTLRs非依存的な炎症誘導機構の存在が予想される。 そこで本研究では、このTLRs非依存的な炎症誘導におけるEGFRの関与について検討した。平成27年度の研究により、Mpは感染細胞にEGFRの活性化を惹起する事、また、このEGFR活性化においてEGFRの「トランス活性化」は必須であるが、それだけでは十分ではない事を明らかにした。さらにMp感染におけるEGFRの活性化にはMpとEGFRの相互作用が一定の関与を示すという作業仮説の元、MpはEGFRと相互作用を示す事、また、MpにEGFR結合性を示すタンパク質が存在する事を明らかにした。 次年度以降は、Mp由来のEGFR結合タンパク質に着目し、当該分子の炎症誘導活性、EGFR活性化機構の詳細についてin vitro/vivo実験にて解析する予定である。これらの解析によって、Mpの未知の肺炎症状惹起機構の一端が解明されると期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
我々は本研究を実施するに当たっての予備実験で、EGFR阻害薬はMp感染に伴うEBC-1細胞のIL-8産生を顕著に抑制するという実験成績を得ている。そこで平成27年度は、まず、Mp感染におけるEGFRの活性化を解析した。その結果、Mpは感染細胞にEGFRのリン酸化とtranslocationを惹起する、すなわち、MpはEGFRを活性化する事が明らかとなった。 さらに、その活性化機構の詳細を明らかにするため、病原微生物の感染に伴うEGFRの活性化に重要な「トランス活性化」の阻害薬によって、Mp感染におけるIL-8の産生が低下するか調べた。「トランス活性化」阻害薬はIL-8の産生を有意に低下させたが、その効果は限定的であった。そこで、MpがEGFRと直接あるいは間接的に結合することによってEGFRを活性化するのではないかと考え、MpとEGFRが相互作用を示すかpull down assayにて解析したところ、MpはEGFRと結合する事が明らかになった。 このEGFRとの結合に関わるMp由来の分子をアフィニティクロマトグラフィにて精製した結果、EGFRに対して相互作用を示すタンパク質が分離された。平成27年度はin vivoでのEGFR活性化の解析と、EGFR活性化に関わるMp由来のタンパク質の同定及び機能評価を予定していたが、EGFR結合タンパク質の解析に時間を要したため、これらの解析は実施できなかった。また、EGFR活性化に関わるMp由来のタンパク質の同定はトランスポゾン変異株ライブラリを用いて行う予定であったが、MpとEGFRに相互作用が認められたことから、これに代えてアフィニティ精製による同定作業を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度はまず上述のEGFR結合タンパク質の同定及び組み換えタンパク質の作製とその機能評価を行う。タンパク質の同定はMALDI-TOF/MSによるPMF解析にて行い、組み換えタンパク質は大腸菌及びBrevibacillusにて作成する予定である。組み換えタンパク質が得られたら、これがEGFRの活性化並びにIL-8の産生をEBC-1をはじめとする細胞株や初代培養細胞に対して惹起するか、また、EGFRと相互作用を示すか解析する。さらに組み換えタンパク質にEGFRの活性化並びにIL-8の産生を惹起する性質が認められた場合は、これがEGFRと当該分子の相互作用に起因するかどうかを調べる為に、点変異を導入した各種組み換えタンパク質や断片化した組み換えタンパク質を作製し、活性の評価を行う。また、EGFRの活性化が「トランス活性化」に依らないことを調べる為、TLRsのノックダウンによってEGFRの活性化レベルが変化するか解析する。また、in vitroだけではなく、in vivoにおいても同様の所見が得られるかどうかを、組み換えタンパク質を経鼻投与したマウス由来のBALFsや肺組織切片をWestern blot法、定量PCR法及びIHC法等にて解析することで評価する。当初の予定ではトランスポゾン変異株を用いてin vivo解析を行う予定であったが、EGFR活性化に関わるMp由来分子の候補の探索にトランスポゾン変異株ライブラリではなく、アフィニティ精製を用いたことから、in vivo解析においても組み換えタンパク質を使用する予定である。
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Causes of Carryover |
平成27年度は上述のとおりEGFR結合タンパク質の精製に時間を要したため、研究計画に遅延が生じ、それに伴い一部の研究経費(25万円)を平成28年度に繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度使用額は直接経費は130万円および前年度繰越額25万円の合計155万円を予定している。まず、Mp由来のEGFR結合タンパク質の組み換えタンパク質の作製に必要な試薬類の購入費用として25万円を計上する。組み換えタンパク質の作製、Western blot用試薬類(32万円)及びIL-8 ELISAキット(20万円)を購入する。また組み換えEGFと活性抑制実験に使用する組み換えEGFRを購入する予定である(20万円)。さらにEGFR結合タンパク質の活性評価のためのマウス購入費として18万円、その後の組織切片の受託作製費用に10万円、IHC法用試薬類に5万円、定量RT-PCR法用試薬類の購入費用として10万円を見込んでいる。最後に、細胞培養に関わる培養試薬、ディスポーザブルチューブ、チップ、カルチャープレート等の消耗品購入費として15万円を計上している。以上の総合計が155万円である。
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Research Products
(2 results)