2017 Fiscal Year Research-status Report
脂肪酸β酸化障害に基づく小児急性脳症の発症機序解明と治療法の開発
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15K09593
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
山口 清次 島根大学, 医学部, 特任教授 (60144044)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | β酸化異常症 / 急性脳症 / 骨格筋障害 / タンデムマス法 / in vitro probe assay / ベザフィブラート / カルニチン療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
ミトコンドリア脂肪酸β酸化異常症(FAOD)は、遺伝子型によって3つの臨床型に大別される。すなわち、(1) 新生児期から心筋障害などで発症する致死型、(2) 乳幼児期から全身けん怠、肝障害、急性脳症などの間欠的に急性発症する中間型、(3) 学童~成人期に筋力低下、筋痛など骨格筋症状で発症する骨格筋型である。いずれも急性エネルギー産生不全が主病態である。発症機序、予防法、治療法に関する研究を行い、今年度以下の成果を得た。 1)乳児突然死症例のうち、後方視的に代謝異常症の判明した症例を収集したところ、20例中15例がCPT2欠損症であった。CPT2欠損症は、タンデムマス法(TMS)で見逃しが多かったが、高精度の診断指標を開発した。これにより発症前診断の技術が向上した。 2)CPT2欠損症の同胞を出生直後から観察したところ、生後4日以降に異常が出現したが、生直後にはCPT2欠損症は見逃される可能性のあることが分かった。 3)治療法として期待されている高脂血症薬ベザフィブラート(BEZ)の薬理作用を、培養細胞を用いるin vitro probe assayで検討したところ、BEZ低濃度条件では最重症型以外では効果が最もよく、BEZ負荷量を増大させると見かけ上異常代謝産物は減少しているように見えるが、細胞自体が死滅する傾向がみられた。BEZの過剰負荷はβ酸化異常症を悪化させる危険性がある。 4)β酸化異常症の治療にカルニチン投与について議論があるが、世界的には結論に至っていない。骨格筋型の極長鎖アシル-CoA脱水素酵素(VLCAD)欠損症で、カルニチン投与中に筋痛発作の回数が増加し、カルニチン中止後に減少した症例を観察した。VLCAD欠損症に関してはカルニチン投与が有効とはいえず、むしろ増悪させる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
培養細胞の環境条件(温度、サイトカイン、解熱剤など)によるβ酸化機能に及ぼす影響のin vitroでの結果、新しいβ酸化異常症の病態についていくつかの点を明らかにしてきたが、学会論文発表をしていない。無症候性と考えられている短鎖脂肪酸脱水素酵素の病態を明らかにしていない。
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Strategy for Future Research Activity |
1.β酸化異常症の治療法としてBEZの至適量、適応疾患を明確にする。 2.カルニチン投与の是非について他の疾患について臨床観察する。 3.最近明らかにされたβ酸化異常症(グルタル酸血症Ⅱ型の新病型、クロトナーゼ欠損症など)の症例を収集し、病態を解明する。 4.最近アジアでもTMSによるβ酸化異常症の診断スクリーニングが普及しつつある。共同研究によって、頻度、疾患種類、重症度、遺伝子型などの多様性を明らかにして、遺伝背景を明らかにし、治療法向上を図る。
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Causes of Carryover |
研究遂行上の消耗品等の費用が、他の研究と一部共有できたため、当初の予算より低く抑えることができた。生じた次年度使用額は主に研究成果の公表(論文作成、学会発表等)に充てたい。
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Research Products
(12 results)
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[Journal Article] Open-label clinical trial of bezafibrate treatment in patients with fatty acid oxidation disorders in Japan2018
Author(s)
Yamada K, Shiraishi H, 1, Oki E, Ishige M, Fukao T, Hamada Y, Sakai N, Ochi F, Watanabe A, Kawakami S, Kuzume K, Watanabe K, Sameshima K, Nakamagoe K, Tamaoka A, Asahina N, Yokoshiki S, Miyakoshi T, Ono K, Oba K, Isoe T, Hayashi H, Yamaguchi S, Sato N
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Journal Title
Mol Genet Met Rep
Volume: 15
Pages: 55-63
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Newborn screening for carnitine palmitoyltransferase II deficiency using (C16 + C18:1)/C2: Evaluation of additional indices for adequate sensitivity and lower false-positivity2017
Author(s)
Tajima G, Hara K, Tsumura M, Kagawa R, Okada S, Sakura N, Maruyama S, Noguchi A, Awaya T, Ishige N, Musha I, Ajihara S, Ohtake A, Naito E, Hamada Y, Kono T, Asada T, Sasaio H, Fukaoo T, Fujikip R, Ohara O, Bo R, Yamada K, Kobayashi H, Hasegawa Y, Yamaguchi S, Takayanagis M, Hata I, Shigematsu Y, Kobayashi M
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Journal Title
Molecular Genetics and Metabolism
Volume: 122
Pages: 67~75
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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