2015 Fiscal Year Research-status Report
先天代謝異常症(ライソソーム病)に対する新規細胞治療法の開発
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15K09603
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
石毛 美夏 日本大学, 医学部, 助教 (90420950)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 太郎 日本大学, 医学部, 教授 (50366580)
谷ヶ崎 博 日本大学, 医学部, 准教授 (90378141)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 再生医療 / 間葉系幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
はじめに、臍帯組織における間葉系幹細胞(MSC)および神経幹細胞の局在について、臍帯動脈周囲、臍帯静脈周囲、Wharton jellyの3部位において、特異的マーカーを用いて免疫組織学的検討を行った。その結果、臍帯組織においては、MSCマーカー陽性細胞の多くは臍帯動脈内皮近傍およびWharton jellyに多く分布する傾向があった。神経幹細胞については、臍帯動脈内皮直下に神経堤マーカーであるp75NTR陽性細胞が多数認められた。これより、臍帯組織は均一ではなく幹細胞の局在があり、MSCは Wharton jellyから、神経幹細胞は臍帯動脈周囲からより高効率に分離可能と考えられ、臍帯組織は免疫寛容誘導、造血幹細胞維持および神経細胞修復の細胞治療に利用が可能と判断できた。 さらに、皮下脂肪組織および臍帯、胎盤羊膜からMSCを含む分画を分離培養した。羊膜は間質と上皮に組織をわけて検討を行った。分離培養した各細胞群とも継代を続けると細胞形態が変化し上皮様細胞が減少し繊維芽細胞類似の形態をとるため、長期継代後の細胞は性質変化が予想され細胞治療への使用は困難と判断し、MSCを含む細胞群の継代回数は3回以内が適切と考えられた。定常状態における細胞表面抗原の発現はCD105、CD73、CD90,CD13,CD44,CD29陽性かつ血液細胞マーカーおよびHLA-DR陰性であり、MSCのミニマルクライテリアと一致していた。さらに免疫原性の抗原では、HLA-ABCの発現が確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度であり、各種手続きや検体入手、実験手順の確立について時間を要した。臍帯における免疫染色では、間葉系幹細胞(MSC)および神経幹細胞の局在を組織学的に明確にするために、組織固定の方法を凍結・エタノール・パラホルムアルデヒド・ホルマリンなど種々検討し、さらに、染色用の一次抗体のクローンや発色のための二次抗体についても濃度や反応時間を検討し、固定方法と使用抗体の組み合わせから最適な発色が得られるものを選択するように準備を重ねたため予想より時間を要してしまった。細胞分離および培養方法の条件についてもExplant法と酵素処理法について比較し、酵素処理の時間や濃度、培養液の血清濃度も慎重に検討を行ったため時間がかかり、さらに、実験において継代回数を重ねた細胞群を使用することが難しいことが判明したため、全体の進行が予想より遅れることとなってしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
臍帯において幹細胞の局在が示されたが、各部分を厳密に分離しての培養は非常に煩雑であり検討可能な細胞数も限られるため、当初はMSCマーカーを多く含む分離培養の容易なWharton Jelly部分を用いてフィーダー細胞の検討を行う。初代培養方法も検討し、分離や培養にかかる時間を減らし、より多くの検体から分離や培養が行えるようにする。培養効率を改善し、継代数が少ない細胞を多く得られるようにすれば、機能解析が容易となり、今後の研究推進が可能である。
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Causes of Carryover |
初年度であり、各種手続きや検体入手について時間を要し、さらに、免疫染色や細胞分離および培養方法の条件について慎重に検討を行い、継代回数を重ねることが難しいことが判明したため、進行が予想より遅れることとなってしまった。そのため、細胞の機能解析が十分に行えず、その実験のために計上していた消耗品や動物の使用が少なくなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
培養方法および使用組織の効率性についても検討し、分離培養にかかる時間を減らし、培養効率をあげる。それにより実験の推進をはかり、細胞のin vitro機能解析を十分に行う。すなわち、脂肪細胞、臍帯、羊膜、骨髄からMSCを含む細胞を効率をあげて分離培養し、定常状態またはサイトカイン刺激下における各種因子の発現の変化を表面抗原、PCR法などを用いて調べ、免疫寛容誘導機能を検討する。さらに、これら細胞の造血幹細胞機能の維持、増殖、ホーミングに与える影響および神経細胞保護・再生機能について、各種因子の発現の変化や共培養により検討したうえで、これらの培養細胞のうち適切なものを用いて、生着不全モデルや疾患モデルを用いたin vivoでの細胞治療の条件設定を行う。
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