2016 Fiscal Year Research-status Report
アンジェルマン症候群における認知記憶機能障害のメカニズムと治療法の探索
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15K09611
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
江川 潔 北海道大学, 医学研究科, 助教 (40450829)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | GABA持続抑制 / GABAシナプス伝達 / 自閉症モデル / アンジェルマン症候群 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度、アンジェルマン症候群モデルマウスの各脳部位からGABA持続抑制の強度を電気生理学的手法にて検討した。その結果、アンジェルマン症候群モデルマウスの海馬CA1錐体細胞ではGABA作動性持続抑制が減弱していることが示された。一方、視床のGABA持続抑制には有意な差をみとめず、持続抑制の減弱の程度は脳部位ごとに異なることが明らかとなった。脳神経機能は、脳領域間での信号情報のやりとりによって実現されるため、このような脳領域間での抑制強度の不均等が本疾患の脳機能障害の原因のひとつではないかとの仮説をたてた。この仮説を証明するため、海馬あるいは脳皮質特異的にGABA持続抑制を増強する薬剤の効果を検証することを着想し、近年そのような薬剤を開発した米国の研究機関との共同実験を立ち上げた。この薬剤の治療効果を検証する目的に、脳波測定、認知機能を評価するための水迷路試験を立ち上げ、現在検証をおこなっている。これらの試験をもちいてアンジェルマン症候群モデルマウスにおける脳機能障害を評価し、上記薬剤の機能改善効果を検証する予定となっている。 一方、当初計画していた検証対象薬剤(THIP、あるいはガボキサドール)は、脳全体のGABA持続抑制を増強する。したがって、脳領域間での抑制不均等が増強され、かえって脳機能障害を増強する可能性がある。THIP投与による脳機能評価の検討を行い、この可能性を検証する。 脳の領域ごとに持続抑制減少の程度が異なるという結果は当初の予想外であり、アンジェルマン症候群の病態生理を考えるうえで大変重要なものと考える。その機序として、細胞外GABA濃度を規定するGABAトランスポーターの発現が脳領域ごとに異なる可能性が考えられ、これも検証していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初小脳顆粒細胞で認めたGABA持続抑制の減少が、他の脳領域でも同様に存在するとの前提で研究計画を立てていたが、脳領域ごとに異なるという予想外の結果となったため、治療戦略の見直しが必要となった。時宜に適い、該当する脳領域特異にGABA持続抑制を増強させる薬剤が米国より発表され、その開発者と連絡をとりあい新規薬剤を試みることとなったが、そのための書類の手続きに時間がかかったため、治療効果を検証する実験に入るのが遅れている。しかしながら、試薬は無事に到着し、行動実験の進捗は良好であることから間もなく薬理実験に入るところである。最終的には当初の予定通り3年で実験は完遂するものと予想される。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで実験結果から、治療戦略の見直しを検討した。当初計画していた、脳領域全体にGABA持続抑制を増強するTHIPより、最近発表された海馬/脳皮質特異的にGABA持続抑制を増強する新規薬剤の方が、治療効果が高いのではないかとの仮説をたて、実際にそれぞれを病態モデルマウスに慢性投与し認知機能障害への改善効果を比較検討する予定である。すでに新規薬物は入手済みであり、実験を行うに際し大きな障壁は存在しないと考えている。
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Research Products
(2 results)