2015 Fiscal Year Research-status Report
先天性中枢性性腺機能低下症に伴う糖・脂質代謝異常症における新規疾患成立機序の解明
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15K09613
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 直子 東京大学, 医学部附属病院, 登録研究員 (10383069)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
瀬尾 美鈴 京都産業大学, 総合生命科学部, 教授 (60211223)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 中枢性性腺機能低下症 / 糖脂質代謝異常 / 遺伝子解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
中枢性性腺機能低下症(HH)は、思春期遅発症、不妊症を示す疾患である。現在20種類以上もの原因遺伝子が同定され、特にFGF-FGFRネットワーク関連遺伝子群(以下FFN)の変異はHHの約3割の原因を占めている。HHでは、しばしば代謝疾患の合併がみられ、近年FFNに属する遺伝子の変異例がHHのみならず代謝疾患を合併することが報告された。さらに我々はFFNに属さない候補遺伝子Aの変異陽性HH例に高頻度に代謝疾患を合併することをみいだした。これらの結果は、HH責任遺伝子の一部が代謝疾患の合併発症に関与する可能性を示している。本研究の目的は、HHにおいて、上記の遺伝子群に関する変異解析・機能解析を行い、新たなHHの原因究明に加え、糖脂質異常症の新規疾患成立機序を明らかにすることである。
当該年度では、①対象症例の約20例の検体収集および臨床情報の収集を行った。今後も引き続き検体・情報収集を行っていく予定である。②次世代シーケンス法による責任遺伝子群の変異解析法に対する条件の最適化を実施後、変異解析を開始し、蛋白機能低下が予測される変異を同定した。残りの症例においても、継続して対象責任遺伝子群に対する変異解析を実施する③同定した変異の機能解析を共同研究者と共に現在検討中である。次年度にルシフェラーゼ活性、蛋白発現解析、関連遺伝子群のシグナル伝達解析、神経機能解析などの機能解析を行う予定である。
今後は研究期間中に、変異解析、同定された変異の機能解析と臨床経過(治療経過、身体所見、検査所見)の収集を行い、本疾患と代謝異常の発症との関連を検討し、疾患成立機序を明らかにしていく予定である。また、糖・脂質異常症・肥満の進行に留意し、成長・加齢に伴う体組成の変化に対する生活指導と基礎疾患に対する治療法を確立し、患者のQOLの向上を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度では、糖・脂質代謝異常症を有するHH患者と有さないHH患者の両者を対象に約20検体の収集を行った。現在も検体収集と臨床情報の収集を引き続き行っている。遺伝子解析では、次世代シーケンサーを用いた当疾患の責任遺伝子群の変異解析条件を最適化し、解析方法をほぼ確立した。20検体のうち、8検体の解析を終了し、3症例において変異を同定した。インシリコ解析により、これらの変異は機能低下変異であると予測され、共同研究者と共に現在機能解析を検討している。同定された一部の遺伝子変異の機能解析システムは既に構築されており、順調に機能解析が進行すると考えられる。それに並行して、臨床解析では、患者のHHおよび糖・脂質代謝異常症の治療経過を集積し、重症度の評価を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
①平成28年度では、前年度の成果を発展させ、次世代シーケンス法による迅速な遺伝子解析方法を確立し、変異解析を継続する。②新たに同定された変異の機能解析を順次行い、当該疾患とそれに伴う脂質代謝異常、肥満、糖尿病発症の関連と疾患成立機序を明らかにする。なお、本疾患に関連する既知責任遺伝子の機能解析システムは、共同研究者で機能解析担当である瀬尾美鈴により既に構築され、変異機能解析の体制が整っている。③変異が同定された場合、ルシフェラーゼ活性、蛋白発現解析、関連遺伝子群のシグナル伝達解析、神経機能解析などの機能解析を行う。⑤変異および臨床解析結果をデーターベース化し、臨床に直結するデータを患者へ還元する。⑥患者の臨床解析および経過観察を引き続き行う。遺伝子検査の結果が出ている症例では、遺伝子変異の機能解析と臨床経過(治療経過、身体所見、検査所見)を比較し、遺伝子変異の関与を検討する。また、糖・脂質異常症・肥満の進行に留意し、成長・加齢に伴う体組成の変化に対する生活指導と基礎疾患に対する治療法を確立し、患者のQOLの向上を目指す。
以上の実験がすべて順調に経過するとは限らないが、順調に進むものを重点的に解析し、当該研究期間の目的達成を目指す。
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Research Products
(3 results)