2016 Fiscal Year Research-status Report
骨細胞におけるリンの感知と低リンくる病責任分子の発現制御:Pit1の関与について
Project/Area Number |
15K09635
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Research Institution | Research Institute, Osaka Medical Center for Maternal and Child Health |
Principal Investigator |
山崎 美和 (若林美和) 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立母子保健総合医療センター(研究所), 環境影響部門, 研究員(移行) (50455549)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | リン / Pit-1 / Pit-2 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はこれまで、骨芽細胞などの種々の細胞種において、細胞外無機リン酸 (Pi) 刺激がⅢ型ナトリウム-リン酸(Na+/Pi)共輸送担体Pit-1やFGF受容体を介して細胞内にシグナルを惹起し、遺伝子発現を制御することを報告してきた。本研究においては、CRISPR/Casシステムを用いたゲノム編集により、Pit-1およびもう一つのⅢ型Na+/Pi共輸送担体であるPit-2遺伝子をノックアウトした骨芽細胞株を樹立し、骨芽細胞・骨細胞におけるリン酸シグナルの受容およびリン代謝関連分子の発現制御におけるPit-1とPit-2の役割を解析している。マウス骨芽細胞系細胞株MC3T3-E1 Subclone4を使用し、ゲノム編集によりPit-1ノックアウト(Pit1-KO)およびPit2ノックアウト(Pit2-KO)クローンを単離した。各クローンのPit-1およびPit-2遺伝子配列をシーケンスし、欠損や変異が生じフレームシフトをきたしPit-1およびPit-2遺伝子がノックアウトされたクローンを選択し、今年度はPit2-KO細胞の解析を行った。Pit2-KO細胞ではPi取り込み能が減弱していることを確認した。分化誘導培地で8週間培養したところ、Pit2-KO細胞とコントロール細胞との間で石灰化能に違いは見られなかったが、遺伝子発現変化を検討したところ、コントロール細胞においてはPit-1、osteopontin、Fgf23の発現が培養期間中に上昇を示したのに対し、Pit2-KO細胞では明確な発現変化を認めなかった。Pit2-KO細胞において、分化誘導培地での長期培養における遺伝子発現誘導が認められなかったことから、慢性的なPi負荷の作用はPi取込みの減少により減弱することが推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Pit-1およびPit-2 KO細胞の樹立がすでに終了し、その解析を進めることができている。今回、Pi存在下で培養することにより良好な石灰化を示すマウス骨芽細胞系細胞株MC3T3-E1 Subclone4を使用し、長期的および短期的なリン酸応答性の検討をDmp1、Fgf23といった低リン血症性くる病責任遺伝子の発現を指標とし順調に進めることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
Pit-2過剰発現レンチウイルスベクターを作成しPit2-KO細胞にて発現させ、Pit2-KO細胞で見られた結果がレスキューされるか検討する。またPit-1に関しては、リン酸輸送に必要なアミノ酸が同定されているため、リン酸輸送能を欠くPit-1変異体を、ゲノム編集の際ドナーベクターを共導入し相同組み換えによりPit-1配列に変異配列をノックインすることにより作成する。これらのPit-1変異体がPi輸送能を欠くことをPi取り込みアッセイにより確認し、Pi惹起シグナル輸送におけるPit-1の機能がPiの細胞内取り込みに依存した機能であるのかどうか検討する。
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Causes of Carryover |
今年度は人件費・謝金が発生しなかったため、次年度使用額が生じたと考えられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は最終年度であるため、論文作成や掲載のための費用として、繰越金と翌年度分として請求した助成金を合わせて使用する予定である。
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