2015 Fiscal Year Research-status Report
先天的p53機能亢進型変異による新たな疾患モデルの確立
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15K09644
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
中根 貴弥 山梨大学, 総合研究部, 准教授 (90422683)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | p53 / Xpd |
Outline of Annual Research Achievements |
p53機能亢進が小頭症、成長障害、免疫不全症、赤芽球癆等の特異的な症状を示すメカニズムを実験動物を用いて明確にすることを目的として、マウスおよびゼブラフィッシュにp53変異と、修飾因子であることが予想されるXPD変異を導入した。マウスについてはp53変異種を3系統、XPD変異種を1系統、またゼブラフィッシュについてはp53変異種を2系統、XPD変異種を1系統を作成し、系統維持することが出来た。マウス:p53ーCOOH末端に変異を導入し、p53機能活性化変異を生じたマウスを3系統樹立した(①c.1075_1076insC, p.Ser359GlnfsX20、②c.1074delC,p.Asp358GlufsX9、③c.1060_1091del, p.Glu354AlafsX3)。①はヘテロ体雄において、男性不妊が生じることが分かり、精巣も組織学的に精子を認めないことを確認した。男性不妊によりはホモ体は得られなかった。p53機能活性化変異のヘテロ体で有意な症状を示した報告は今までにない。②はヘテロ体は野生型と変化なく、ホモ体で早期死亡・発育不良を認め、今までの報告と合致した。③はホモ体の一部が早期死亡するが、生後早期を過ぎるとヘテロ体・野生体と同等の発育を示した。Xpdのフレームシフト変異をexon 2に導入したマウス(c.22delC, p.Leu8CysfsX18)はホモ体は胎生致死であった。引き続き、Xpdのフレームシフト変異をexon 7に導入したマウスを作成するべく遺伝子編集を行っている。ゼブラフィッシュ:p53に変異を導入したゼブラフィッシュを2系統(c.1101_1113delinsGGTAA, p.Asp367GlufsX12、c.937delG and c.998_1028del,, p.Glu313SerfsX6)作成したが、いずれもホモ体は有意な異常を認めなかった。Xpdのフレームシフト変異をexon 7に導入したゼブラフィッシュを1系統樹立した(c.510delTinsGGTAA, p.Pro171ValfsX16)。ホモ体は受精後72時間の時点で小眼球症・小脳症を認め、1か月までにすべてのホモ体が死亡した。ヘテロ体は野生体と同等の表現型であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウス、ゼブラフィッシュで遺伝子編集操作を行い、いずれのモデル動物でも期待した遺伝子組み換え動物を得ることができた。 【当初予期しなかったこと】p53活性化変異を導入したマウス3系統のうち、その1つの系統のヘテロ体で男性不妊症がみられたこと。このため、この系統ではホモ体が得られなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
上記で得られた遺伝子組み換え動物の解析を引き続き行う(生存曲線、身体発育、骨髄、肝臓、生殖器等の組織標本の作製、アポトーシスの評価、FISH,リアルタイムPCR、マイクロアレイによる遺伝子発現の検討、眼球組織を用いた細胞周期調節異常の解析)。とくにp53活性化変異マウスで今まで報告がなかった男性不妊については、胎児期より連続的に組織標本を作成し、男性不妊にp53がどのように作用しているのかを突き止める。p53変異導入動物とXpd変異導入動物を掛け合わせて、相乗効果、あるいは相殺効果がみられるか調べる。 上記で得られた遺伝子組み換えマウス(p53単独変異、Xpd単独変異、およびp53とXpd両方の変異)から線維芽細胞株を樹立し、それぞれの変異によるp53、Xpd活性の変化を確認する(紫外線照射によるアポトーシスの誘導を評価する)。
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Causes of Carryover |
経費節減に努めた結果、13800円の次年度使用額が得られた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の実験費用(動物飼育費等)に充当する。
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