2016 Fiscal Year Research-status Report
オーダーメイド治療を目指した日本人白血病細胞株バンクの整備と抗がん剤感受性の解析
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15K09645
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
犬飼 岳史 山梨大学, 総合研究部, 准教授 (30293450)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 急性リンパ性白血病 / 化学療法 / 薬剤耐性 / 遺伝子変異 / 一塩基多型 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 白血病細胞株バンクの整備; BCP-ALL細胞株は日本人由来が3株増えて86株に、非日本人由来株も含めると93株が解析可能となった。T-ALL細胞株は日本人由来が7株で、海外で樹立された17株も含め24株が解析可能となった。 2. ボルテゾミブおよびカルフィルゾミブに対する感受性因子の同定; IKZF1遺伝子の欠失を有する株がボルテゾミブに高感受性を示す一方で、P-gp陽性のALL細胞株はカルフィルゾミブに選択的に耐性を示しP-gp阻害剤との併用で耐性が克服されることを明らかにした。 3. ゲノム編集技術を応用した薬剤感受性遺伝子の機能解析;CRISPR-Cas9を用いて、BCP-ALL株のキロサイドの感受性と関連するDCK遺伝子をノック・アウトし、キロサイドとクロファラビンに対して著明な耐性を認めた。さらに、遺伝子の変異や多型の薬剤感受性への影響を検証するために、CRISPR-Cas9による相同組み換え技術を応用して目的の遺伝子変異や多型を導入する実験系の最適条件を決定した。 4. L-asparaginase感受性におけるASNS遺伝子のメチル化状態の意義;ロイナーゼ(L-asparaginase)に対する感受性が、ALL細胞におけるASNS遺伝子のメチル化状態と強く相関することを明らかにして、ASNS遺伝子のメチル化状態を指標にL-asparaginase感受性を予見できる可能性が示唆されたので、臨床応用を目指してHPLC法による解析方法を企業と共同で開発中である。 5. 薬剤感受性におけるGWAS解析;日本人由来のB前駆細胞型ALL細胞株の72株を対象に遺伝子多型(SNP)の網羅的アレイ解析を行ってデータ・ベース化し、GWAS(genome-wide association study)解析を能動的に活用するための体制を構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1. 白血病細胞株バンクの整備; BCP-ALL細胞株は93株、T-ALL細胞株は24株の計117株の多様なALL細胞株が解析可能となった。 2. 遺伝子多型(SNP)の網羅的アレイ解析データ・ベースを活用した薬剤感受性関連SNP同定のためのGWAS解析:72株の日本人由来BCP-ALL細胞株において、小児ALLに対する基本薬8剤(ステロイド・ビンクリスチン・ダウノルビシン・ロイナーゼ・エンドキサン・キロサイド・メトトレキセート・ロイケリン)に対する感受性を解析してデータ・ベースを構築し、同一の72株を対象にした遺伝子多型(SNP)の網羅的アレイ解析のデータ・ベースと連結化した。その結果、小児ALLに対する基本薬8剤の感受性に関するGWAS解析を行うことが可能になった。 3. ゲノム編集技術を活用した薬剤感受性遺伝子およびSNPの解析体制の構築;CRISPR-Cas9によるゲノム編集技術を活用して、白血病細胞株において解析対象の遺伝子をノック・アウトさせて薬剤耐性への関与を検証する実験系を確立した。また、CRISPR-Cas9と相同組み換えを活用して、白血病細胞株において遺伝子の変異や多型を導入して薬剤耐性への関与を検証するための実験系を確立した。 4. 個別化治療を目指したASNS遺伝子のメチル化状態の評価;ALLに対する中心的な化学療法剤の1つであるロイナーゼ(L-asparaginase)に対する感受性が、ALL細胞におけるASNS遺伝子のメチル化状態と強く相関し、ALL細胞のASNS遺伝子のメチル化状態が、各症例のロイナーゼ感受性を予見する指標となりうることを明らかにして、将来的に個別化治療へと発展させうる可能性を見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 臨床検体の薬剤感受性解析;これまでの細胞株を用いた本研究の成果から、薬剤感受性を規定する諸因子が、臨床的に個別化治療のパラメーターとして応用できる可能性が明らかになった。そこで、小児ALLの全国治療研究において、診断時の白血病細胞を対象にin vitro薬剤感受性を評価する研究体制を構築するため、神奈川県立こども病院および浜松医科大学の研究者と連携して基礎的な解析を進める。 2. 薬剤感受性に関するGWAS解析;ALLに対する化学療法における基本薬剤8剤の感受性についてGWAS解析を行って、各薬剤の感受性関連SNPの同定と機能解析を進める。機能解析においては、これまでの基礎的研究から得られたゲノム編集技術を活用する。特に、ステロイド剤とロイケリン感受性のGWAS解析においては、ステロイド剤単独投与での初期反応性、および維持療法におけるロイケンの薬剤耐用性に関するGWAS解析データ・ベースとクロス・オーバーさせることで、臨床的にも意味のあるSNPを拾い上げて優先的に解析を進める。 3. 新規薬剤の感受性解析;慢性リンパ性白血病、多発性骨髄腫、悪性リンパ腫を適応に開発された、IburutinibやIdelalisib等の薬剤に対する感受性を解析して、ALLに対する適応拡大の可能性を検討し、対象となるALLのバイオマーカーの同定を試みる。
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Causes of Carryover |
差額がわずかであり、消耗品等の購入が出来なかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の消耗品購入に充てる。
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Research Products
(10 results)
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[Journal Article] Long-term outcome of 6-month maintenance chemotherapy for acute lymphoblastic leukemia in children.2017
Author(s)
Kato M, Ishimaru S, Seki M, Yoshida K, Shiraishi Y, Chiba K, Kakiuchi N, Sato Y, Ueno H, Tanaka H, Inukai T, Tomizawa D, Hasegawa D, Osumi T, Arakawa Y, Aoki T, Okuya M, Kaizu K, Kato K, Taneyama Y, Goto H, Taki T, Takagi M, Sanada M, Koh K, Takita J, Miyano S, Ogawa S, Ohara A, Tsuchida M, Manabe A.
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Journal Title
Leukemia
Volume: 31
Pages: 580-584
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] BCP-ALL細胞株のABT737感受性におけるBcl2ファミリー遺伝子の意義2016
Author(s)
黒田 格, 犬飼 岳史, 黄 媚賢, 加賀美 恵子, 阿部 正子, 中村 誠, 古市 嘉行, 佐藤 広樹, 高橋 和也, 根本 篤, 廣瀬 衣子, 小鹿 学, 杉田 完爾
Organizer
日本小児血液がん学会
Place of Presentation
品川プリンスホテル(東京都品川区)
Year and Date
2016-12-15 – 2016-12-17
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[Presentation] B前駆細胞性ALLのAraC感受性におけるdeoxycytidine kinaseの意義2016
Author(s)
黄 媚賢, 犬飼 岳史, 阿部 正子, 加賀美 恵子, 後藤 裕明, 峯岸 正好, 岩本 彰太郎, 杉原 英志, 渡邊 敦, 大城 浩子, 赤羽 弘資, 合井 久美子, 杉田 完爾
Organizer
日本小児血液がん学会
Place of Presentation
品川プリンスホテル(東京都品川区)
Year and Date
2016-12-15 – 2016-12-17
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[Presentation] BCP-ALL細胞株のthiopurine感受性におけるNUDT15遺伝子多型の意義2016
Author(s)
杣津 晋平, 犬飼 岳史, 森山 貴也, Yang Jun, 阿部 正子, 加賀美 恵子, 渡邊 敦, 大城 浩子, 赤羽 弘資, 合井 久美子, 杉田 完爾
Organizer
日本小児血液がん学会
Place of Presentation
品川プリンスホテル(東京都品川区)
Year and Date
2016-12-15 – 2016-12-17
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[Presentation] B前駆細胞型ALL細胞株の薬剤感受性におけるCASP8遺伝子のins/del多型の意義2016
Author(s)
篠原 珠緒, 犬飼 岳史, 渡邊 敦, 大城 浩子, 赤羽 弘資, 合井 久美子, 黄 媚賢, 阿部 正子, 加賀美 恵子, 後藤 裕明, 峰岸 正好, 岩本 彰太郎, 杉田 完爾
Organizer
日本小児血液がん学会
Place of Presentation
品川プリンスホテル(東京都品川区)
Year and Date
2016-12-15 – 2016-12-17