2015 Fiscal Year Research-status Report
ゼブラフィッシュを用いた先天性貧血発症の分子メカニズムの解明
Project/Area Number |
15K09656
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
上地 珠代 宮崎大学, フロンティア科学実験総合センター, 研究員 (10381104)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | リボソームタンパク質遺伝子 / 翻訳異常 / ゼブラフィッシュ / ダイアモンド・ブラックファン貧血 |
Outline of Annual Research Achievements |
ダイアモンド・ブラックファン貧血(DBA)は、リボソームタンパク質(RP)遺伝子の変異により発症すると推測される。患者の約半数で、16種類のRP遺伝子いずれかの変異が確認されたが、発症機序の解明は進んでいない。本研究では、ゼブラフィッシュのDBAモデルを用いて発症の分子メカニズムに迫る。RP遺伝子の変異に伴って翻訳が抑制される遺伝子に着目し、リボソームがmRNA選択的に翻訳量の調節を行うメカニズムの解明を目指す。 1.DBAモデルで翻訳抑制を受ける遺伝子の解析 翻訳効率が50 %以下になる75個の遺伝子について、弘前大学が行った患者およびその家族のエキソーム解析を用いて変異の有無を確認した。24種類の遺伝子で、患者のみでみられる変異が検出されていることがわかった。 DBAモデルで最も翻訳効率が低下するGATA1は、4人の患者で変異が検出されたため、個別に確認作業を行った。その結果、2人については変異がないことが判明した。2番目に翻訳効率が低下した糖鎖修飾に関与する遺伝子については、1塩基変異を持つ患者が1人いることが確認された。しかし、家族のデータが入手できないため、疾患との関連は今のところ未知である。 2.RPS19遺伝子変異体の作製 ゲノム編集技術CRISPR/Casシステムを用いて、ゼブラフィッシュのゲノムに患者型の変異を導入する手法を試みた。このシステムを用いたランダム変異導入のパイロット実験をすでに行っており、50%以上の確率で変異が導入されることを確認した。これを応用して、標的部位での特定塩基の置換をおこすためのプラスミド構築、RNA合成を行い受精卵へ注入し、条件検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
DBAモデルの翻訳効率の解析と患者のエキソーム解析との比較で、有力な新規DBA候補遺伝子が抽出されることを期待していたが、そのような遺伝子の同定には至らなかった。しかし、特定の遺伝子の翻訳効率の変化が貧血の発症に関与する可能性は示唆された。また、新たなゲノム編集技術を用いたゼブラフィッシュモデルの作製も進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
rps19遺伝子の発現低下により翻訳効率が低下する遺伝子のなかに糖鎖修飾に関与する遺伝子が含まれていた。ゼブラフィッシュを用いて、血球表面に存在する糖鎖修飾を受けるタンパク質が減少しているかどうかを解析する。 また、ゲノム編集技術を用いて患者型変異を導入したゼブラフィッシュモデルの系統を確立し、詳細な発症メカニズムの解明を目指す。
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Causes of Carryover |
国際会議の旅費を予定していたが、主催者側が航空券、宿泊費を負担することとなり予定を下回った。また、人件費を計上していたが、先行研究の結果の確認作業を弘前大学との共同研究で行うこととなり、実験補助員が必要ではなかったため未使用分がでた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
発症機序をより詳細に解明するためには、これまでの遺伝子抑制ではなくゲノム編集技術を用いたモデルの作製が必要である。リボソーム病の疾患モデルの作製手法を確立するために、専門的知識をもつ博士研究員、または実験補助員を採用する経費およびその研究経費として未使用額を使用する。
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