2015 Fiscal Year Research-status Report
マルチカラーフローサイトメトリーを用いた食物アレルギーの発症および治癒機構の解析
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15K09669
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
柘植 郁哉 藤田保健衛生大学, 医学部, 教授 (00231431)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 食物アレルギー / 経口免疫療法 / フローサイトメトリー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、有効な食物アレルギーの予防法や根治療法の確立に資することを目的に、食物アレルギーの経口免疫療法実施中の食物アレルギー患者を対象に、multicolor flow cytometryを用いて、食物アレルギーの発症と治癒および経口免疫療法の免疫学的機序について検討する。 本年度は、低アレルゲン化ミルクを用いて行った4ヵ月間の経口免疫療法が及ぼす影響を解析した。対象は、1歳から9歳までの牛乳アレルギー児20例で、プラセボ投与2ヵ月と治療2ヵ月の群9人と4ヵ月治療群11人にランダム化した。治療開始前と開始後2カ月、4ヵ月で採血し、免役学的検討を行った。 T細胞に関しては、末梢単核球をミルク抗原で刺激した後、CD154と細胞質内サイトカイン(IL-4, IL-5, IL-10, IFN-γ)、転写因子Foxp3を蛍光標識し、multicolor flow cytometryで解析した。その結果、アレルゲン特異的T細胞のサイトカイン産生の検討では、4ヵ月治療群では治療前後でIL-4産生牛乳特異的T細胞数の有意な低下をみとめた。また治療2ヵ月の時点で、経口負荷試験でミルク摂取可能量の増加をみとめた治療反応群では、有意にIL-4産生T細胞が低下していた。 好塩基球については、リンパ球ゲートでのCD3-、CRTH2+、CD203c+を指標に好塩基球を同定し、細胞表面のCD63、IgE、カゼイン特異的IgE、FcRIをmulticolor flow cytometryで検討した。蛍光標識したカゼインを用いて行ったカゼイン特異的IgE陽性好塩基球の検討では、好塩基球の蛍光強度と牛乳特異的なIgEが強い相関を示し(p=0.96)、検討方法の妥当性に関しては期待できる結果であったが、免疫療法自体は各種パラメーターに有意な影響を与えなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の対象は、①食物アレルギー患者、②食物アレルギーが自然治癒した患者、③OIT臨床研究参加者および、④食物アレルギーのない対照であり、実際には、経口免疫療法の臨床研究参加者の占める割合が大きい。これまで行ってきた、低アレルゲン化ミルクを用いた経口免疫療法が今年度で終了し、現在「抗IgE抗体療法併用による牛乳アレルギーに対する急速増量経口免疫療法の有効性と安全性の改善効果を検討するためのパイロットスタディー」が進行中であるが、エントリー基準に合致する研究参加者の獲得に苦慮している。 また、当初予定していたmulticolor flow cytometryによる解析も、アレルゲン特異的Th2細胞(CD4+CD154+IL-4+)、Treg細胞(CD4+CD25+FoxP3+)、Tr1(CD4+CD154+ IL-10+)、ILC2細胞(lineage-CRTH2+)、好塩基球(SSClowCD3-CRTH2+)についてはデータが蓄積されつつあるが、Breg細胞(allergen+ IgG+IgE-IL-10+)の解析は進んでいない。
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Strategy for Future Research Activity |
上述したように、本研究の対象者は主として食物アレルギーの経口免疫療法に関する臨床研究の参加者であるため、本研究の遂行には経口免疫療法の順調な進行が不可欠であるが、現在、これまで行ってきた低アレルゲン化ミルクを用いた経口免疫療法が今年度で終了し、新たな臨床研究「抗IgE抗体療法併用による牛乳アレルギーに対する急速増量経口免疫療法の有効性と安全性の改善効果を検討するためのパイロットスタディー」の参加者が十分に得られていない。これに関しては、さらに広報活動に努力するとともに、新たな免疫療法を開始するべく計画中である。 また、multicolor flow cytometryによる解析についても、現在進行中のアレルゲン特異的Th2細胞(CD4+CD154+IL-4+)、Treg細胞(CD4+CD25+FoxP3+)、Tr1(CD4+CD154+ IL-10+)、ILC2細胞(lineage-CRTH2+)、好塩基球(SSClowCD3-CRTH2+)に加え、当初の計画に含まれたBreg細胞(allergen+ IgG+IgE-IL-10+)の解析を進めるとともに、アレルギー制御に重要とされるinducible Treg (iTreg, CD4+,CD154-,LAP+)についての解析も開始する予定である。
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[Presentation] 中島 陽一, 大高 早希, 森 雄司, 大久保 悠里子, 田中 健一, 山脇 一夫, 犬尾 千聡, 平田 典子, 鈴木 聖子, 近藤 康人, 柘植 郁哉, 宇理須 厚雄2015
Author(s)
魚経口負荷試験242例の検討
Organizer
第64回日本アレルギー学会
Place of Presentation
東京
Year and Date
2015-05-26 – 2015-05-28