2015 Fiscal Year Research-status Report
致死性不整脈を合併する心筋緻密化障害の網羅的遺伝子解析と発症機序の解明
Project/Area Number |
15K09685
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
市田 蕗子 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 准教授 (30223100)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西田 尚樹 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 教授 (10315088)
木下 耕史 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 助教 (10585920)
畑 由紀子 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 助教 (30311674)
小澤 綾佳 富山大学, 大学病院, 診療助手 (40596540)
廣野 恵一 富山大学, 大学病院, 助教 (80456384)
高崎 麻美 富山大学, 大学病院, その他 (80749739) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 心筋緻密化障害 / 遺伝子解析 / サルコメア遺伝子 / 致死性不整脈 / 突然死 / iPS細胞 / 次世代シーケンサー / 機能解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
心筋緻密化障害は、心室壁の過剰な網目状の肉柱形成と深い間隙を特徴とした心筋症で、難治性心不全や致死性不整脈の合併が高率にみられ、予後は不良である。心筋緻密化障害は、2006年AHAの提唱では、遺伝的要素が強い心筋症のカテゴリーに分類されているが、QT 延長症候群やカテコラミン感受性多形性心室頻拍などのイオンチャネル病も、同じカテゴリーに分類されている。私共も心筋緻密化障害において、イオンチャネルのSCN5A遺伝子が合併する不整脈と密接な関連があることを報告した。 本研究では、これまでの心筋緻密化障害の臨床遺伝学的研究の集大成として、Ⅰ.次世代シーケンサーを用いて、胎児心筋の発達や致死性不整脈にかかわる約80の遺伝子に関して網羅的解析を行い、Ⅱ.遺伝子異常が判明した患者由来のinduced pluripotent stem cell(iPS細胞)を樹立し、Ⅲ.iPS細胞から分化誘導した心筋細胞を用いて増殖分化能や機能解析を行い,心筋緻密化障害と高率に合併する致死性不整脈の発症機序を明らかにすることが研究目的である。 H27年度は、次世代シーケンサーを用いて、胎児心筋の発達や致死性不整脈にかかわる約80の遺伝子に関して網羅的解析を行った。その結果、診断時35歳以下の日本人心筋緻密化障害患者の82名中23名(28%)にサルコメア遺伝子異常が認められた。この変異を有する患者の予後は、変異のない者と比べ有意に不良で、特に、二重変異やTPM1、ACTC1、TNNC1の変異では、致死性不整脈や突然死など予後不良の傾向が明らかとなった。今後より多くの患者を検討することで、予後予測および適切な治療介入の一助となる可能性があり、有用であると考えられた。 次年度は、遺伝子異常が判明した患者由来のiPS細胞を樹立し、さらに分化誘導した心筋細胞を用いて機能解析を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H27年度は、次世代シーケンサーを用いて、胎児心筋の発達や致死性不整脈にかかわる約80の遺伝子に関して網羅的解析を行った。 その結果、診断時35歳以下の日本人心筋緻密化障害患者の82名中23名(28%)にサルコメア遺伝子異常が認められた。さらに、7種のサルコメア蛋白関連遺伝子(MYH7、MYBPC3、TPM1、ACTC1、TNNC1、TNNT2、TNNI3)のすべてのexonについてdirect sequence法で変異を確認した。見出された変異について:23人(28.0%)に24変異を認め、3人において二重変異が見出された。その多くは新規変異であった(79.2%)、変異の種類は1変異のみinversionで、他はすべてmissenseであった。変異はMYH7、MYBPC3、TPM1、ACTC1、TNNC1の5遺伝子において検出され、分布はMYH7が45.8%で最も多く、次いでMYBPC3が20.8%であった。TPM1、ACTC1、TNNC1における変異はそれぞれ12.5%、12.5%、8.3%と少数であった。変異の有無による臨床的特徴の違いを検討したところ、変異あり群と変異なし群の2群に分けて比較を行ったところ、性別、発症年齢、心疾患合併率などでは差が見られなかったが、家族歴と心予後不良が有意に変異あり群で多かった。特に、二重変異やTPM1、ACTC1、TNNC1などの低頻度の遺伝子変異では、致死性不整脈や突然死、心移植など予後不良の傾向が明らかとなった。今後、これらの予後不良患者のiPS細胞を作成し、さらに分化誘導した心筋細胞を用いて機能解析を行い、致死性不整脈が関与する機序を明らかにする予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
次世代シーケンサーを用いて、胎児心筋の発達や致死性不整脈にかかわる遺伝子に関して網羅的解析を行った結果、Ⅱ.遺伝子異常が判明した患者由来のinduced pluripotent stem cell(iPS細胞)を樹立し、Ⅲ.iPS細胞から分化誘導した心筋細胞を用いて増殖分化能や機能解析を行い,心筋緻密化障害と高率に合併する致死性不整脈の発症機序を明らかにする。具体的には、、Ⅱ.遺伝子異常が判明した患者血液サンプルから、レンチウィルスベクターにより細胞のリプログラミングに必要な因子(Oct3/4, Sox2, Klf4,c-Myc)を遺伝子導入しiPS細胞を作成する。iPS細胞を、Bone Morphogenetic Protein (BMP)およびその内因性阻害因子であるActivin A、basic Fibroblast growth factor、Wnt賦活剤および阻害剤を用いて心筋細胞へと分化誘導する。 Ⅲ 患者iPS細胞由来心筋細胞の機能評価 iPS細胞由来心筋細胞の分化能評価:野生株と患者由来株の間で分化能および形態的な表現において差異を生じるか、遺伝子発現レベルおよび蛋白の発現レベルを評価する。 iPS細胞由来心筋細胞の増殖能およびアポトーシスの評価:野生株と患者由来株の間で増殖能およびアポトーシスに差異を生じるか、Flow cytometry法と免疫組織染色を行い評価する。 iPS細胞由来心筋細胞の電気生理学的機能測定:パッチクランプ増幅器と倒立顕微鏡を用いてiPS細胞由来心筋細胞からパッチクランプ法記録を行い、野生株と患者由来株の電気生理学的性質を比較し、催不整脈性の有無を検討する。
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Causes of Carryover |
旅費使用が予定よりも少なかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
物品費として使用予定である。
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Research Products
(15 results)
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[Journal Article] Early Neurodevelopmental Outcomes after Cardiac Surgery in Infancy: A Multi-center Retrospective Analysis of 1,718 Patients.2015
Author(s)
Gaynor W, Christian Stopp, David Wypij, Dean B. Andropoulos, Joseph Atallah, John Beca, Kim Duncan, Nancy S, Fukiko Ichida,et al.
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Journal Title
Pediatrics
Volume: 135
Pages: 816-25
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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