2016 Fiscal Year Research-status Report
ワクチン導入によるロタウイルス分子疫学的変化~G8遺伝子型の流行を通じて~
Project/Area Number |
15K09693
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
津川 毅 札幌医科大学, 医学部, 講師 (00631863)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
近藤 謙次 札幌医科大学, 医学部, 研究員 (60718138) [Withdrawn]
大野 真由美 札幌医科大学, 医学部, 研究員 (80749309)
赤根 祐介 札幌医科大学, 医学部, 研究員 (20759112) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ロタウイルス / G8 / ワクチン |
Outline of Annual Research Achievements |
ロタウイルスは急性胃腸炎の主要な原因ウイルスであり、小児の急性胃腸炎による入院の約40%を占める。わが国では2011年にワクチンが承認されたが、2012年以降、これまでに報告された事のない遺伝子再集合体(リアソータント)の報告が相次ぎ、ワクチン接種が野生株の遺伝子変化に与える影響も示唆されている。2014年北海道で稀なG8遺伝子型ロタウイルスの流行を経験した。 H27年度の解析にて、G8P[8]は苫小牧市で50.0%(42/84)、浦河町で55.0%(11/20)、室蘭市で17.6%(3/17)、札幌市で6.9%(2/29)と検出率に大きな地域差を認め、全11遺伝子型はG8-P[8]-I2-R2-C2-M2-A2-N2-T2-E2-H2で株間の相同性は99.6%以上と高く保存されていた。 本年度の解析により、G8P[8]と非G8P[8]の臨床像の比較において、年齢・性別・ワクチン接種率・下痢や嘔吐の頻度・入院率などに有意差を認めず、病原性が増したためにG8遺伝子型が流行したとは考えにくかった。今回のG8P[8]株は全11遺伝子分節を通じて、ベトナムやタイより2014年に分離された株と99%以上の非常に高い塩基相同性を示した。また、これらの株の7遺伝子分節(VP2-4, VP6, NSP1, NSP3, NSP5)は、2012年以降に日本やアジアで報告が相次いでいる遺伝子再集合体(DS-1-like G1P[8])と相同性が高く、他の4分節(VP1, VP7, NSP2, NSP4)は日本国内の分離株とは異なり、アジアのウシなど偶蹄類の株との相同性が高かったため、今回の流行株は日本国外で複数回の遺伝子組換えが起こり、最近日本に持ち込まれたと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H27年度は、2014年に苫小牧市、浦河町を中心に北海道内で流行したロタウイルスG8P[8]遺伝子の全58株のGP遺伝子型と代表的な15株の全11遺伝子分節の遺伝子型(G8-P[8]-I2-R2-C2-M2-A2-N2-T2-E2-H2)を決定し、株間の塩基相同性が99.6%以上と高度に保存されている事を解明した。 本年度は、苫小牧市の84名の外来・入院患者の臨床情報を用いてG8P[8]と非G8P[8]の比較を行ったが、年齢・性別・ロタウイルスワクチン率・下痢や嘔吐の頻度・入院率に有意差を認めず、病原性が増したためにG8遺伝子型が流行したとは考えにくかった。全11遺伝子分節を通じて、今回のG8P[8]株と非常に高い相同性(99%以上)を示す株が、ベトナムとタイより2014年に分離され、日本国内の分離株とは異なり、G遺伝子もアジアのウシ株との相同性が高かったため、今回の流行株は日本国外で複数回の遺伝子組換えが起こり、最近日本に持ち込まれたと考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
H29年度は、過去の豊富な検体および2015年以降の検体を継続的に解析する事により、今回のG8P[8]株が2015年以降も北海道内で継続的に検出されているか否を中心として、ワクチン導入によってロタウイルスGP遺伝子型の変化に与える影響について検討をしていく。
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