2016 Fiscal Year Research-status Report
スフィンゴ脂質代謝異常による流産のメカニズムの解明と治療薬の開発
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15K09711
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
水岸 貴代美 京都大学, 医学研究科, 研究員 (70518448)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 胎児医学 / スフィンゴ脂質 |
Outline of Annual Research Achievements |
スフィンゴ脂質代謝は妊娠の維持、特に子宮の脱落膜化に重要な役割を果たしている。スフィンゴ脂質代謝の重要な酵素である、スフィンゴシンキナーゼの遺伝子改変マウスでは、妊娠早期にほぼ全ての胎児が子宮内で死亡する。これまでの研究で、スフィンゴシンキナーゼ遺伝子改変マウスの脱落膜組織において、CXCL1、CXCL2などの好中球遊走因子の発現が著明に増加しており、その部位に一致して好中球が異常に浸潤して脱落膜組織障害が起こり、ほぼ全ての胎児の早期死亡につながることを明らかにしてきた。昨年度から今年度にかけて、異常に浸潤した好中球が組織障害を起こすメカニズムについて検討を行った。近年、好中球の新たな殺菌作用としてneutrophil extracellular traps (NETs)が注目を集めている。NETsは、自己免疫疾患、血栓症など多様な疾患の病態に関与していることも報告されている。今回、スフィンゴシンキナーゼ遺伝子改変マウスの妊娠子宮におけるNETsの役割について検討した。この遺伝子改変マウスの脱落膜組織では、好中球の顆粒成分、DNA、ヒストンなどが細胞外に共局在しており、大量のNETsが形成されていることが明らかになった。また、ヒストンの翻訳後修飾、およびそれに関わる酵素の発現が異常に亢進していることもわかった。ヒストンの翻訳後修飾に関わる酵素の発現を阻害する化合物を、スフィンゴシンキナーゼ遺伝子改変マウスに投与すると、流産の発症が抑制されることも明らかになり、流産の発症におけるNETsの重要性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画に従い、順調に研究を進めており、非常に興味深い結果が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
遺伝子改変マウスを用いた研究データはかなり揃っており、ヒトにおける意義について検討を進める。その後、研究成果をまとめて、学術論文を投稿する予定である。
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Causes of Carryover |
研究は順調に進んでいるが、今年度は、他の助成金などが得られたため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究をさらに発展させるため、試薬・消耗品の購入費、動物飼育費、論文投稿・掲載費用などに使用する。
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