2015 Fiscal Year Research-status Report
発症機序最上流に表皮バリア機能異常があるという新視点による乾癬表皮・免疫病態解明
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15K09769
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
中島 喜美子 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 准教授 (20403892)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 真有子 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 助教 (20423478)
中島 英貴 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 講師 (70314995)
佐野 栄紀 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 教授 (80273621)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 乾癬 / バリア障害 / Stat3 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、皮膚の角層バリア機能において重要な脂質の1つであるセラミドの合成酵素遺伝子を表皮特異的に破壊したマウス(K5.SPT KOマウス)では乾癬様皮疹を自然に発症したことを報告した (J Invest Dermatol 2013; 133: 2555)。これは表皮バリア障害によって乾癬様病変が誘導された可能性を示したものである。本研究はバリア機能障害が乾癬病態発症の最も上流に位置するいう新しい視点からバリア障害に引き続く表皮シグナルと免疫系クロストークについて乾癬モデルマウスを用いて検討することを試みた。我々の研究室で開発した乾癬モデルマウス(K5.Stat3Cトランスジェニックマウス)はテープストリッピングによるバリア破壊によって乾癬様皮疹を誘導でき、その乾癬様皮疹は、IL-23/Th17軸に依存しており、この軸を標的とする抗体によって乾癬様皮疹形成が抑制されることを報告した(J Immunol 2011; 186: 4481)。今回我々はK5.Stat3C トランスジェニックマウス、K5.Stat3C ノックアウトマウス、正常マウスにテープストリッピングを施行後、2.5時間後、6時間後、24時間後の経表皮水分蒸散量(Transepidermal water loss: TEWL)を測定しTEWL回復率を算定した。2.5時間後のTEWL回復率はK5. Stat3C, WT, K5.Stat KOの順で高い値を示し、24時間後には3つのマウス群でほぼ同じ値を示した。また、24時間後の皮膚における抗菌ペプチドの発現をreal-time RT-PCRで測定したところ、K5.Stat KOマウスの皮膚のみ、抗菌ペプチドの値が上昇した。以上の結果より、テープストリッピングによって乾癬様病変を誘導する実験系においてはバリア修復能遅延が乾癬様病変の引き金ではないことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
バリア機能障害が乾癬病態発症の最も上流に位置するという視点から乾癬の病態を解明することを試みた。乾癬モデルマウス(K5.Stat3C トランスジェニックマウス)、K5.Stat3C ノックアウトマウス、正常マウスにテープストリッピングを施行後、2.5時間後、6時間後、24時間後の経表皮水分蒸散量(Transepidermal water loss: TEWL)を測定し、TEWL回復率を算定した。2.5時間後のTEWL回復率は、K5. Stat3C, WT, K5.Stat KOの順で高い値を示し、24時間後には 3つのマウス群でほぼ同じ値を示した。これは、乾癬モデルマウスにおいてはバリア障害回復は促進していることを示す結果であった。また、24時間後の皮膚における抗菌ペプチド(b-デフェンシン3,4, S100A8,A9)の発現をreal-time RT-PCRで測定したところ、K5.Stat KOマウスの皮膚のみ、抗菌ペプチドの値が上昇した。以上の結果より、テープストリッピングによって乾癬様病変を誘導する実験系においてはバリア修復能遅延が乾癬様病変の引き金ではないことを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、TPA (12-O-Tetradecanoylphorbol 13-acetate)塗布による乾癬様病変におけるバリア障害について検討し、表皮バリア障害によって生じるStat3活性化シグナル経路、表皮バリア障害によって誘導されるランゲルハンス細胞活性化のシグナル伝達、Stat3の活性化とランゲルハンス細胞の活性化のシグナル伝達経路などを明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
次年度に購入予定の試薬の種類が多いため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験試薬購入。
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