2015 Fiscal Year Research-status Report
妊婦の睡眠障害と胎児・新生児への影響----産褥期うつ状態の早期発見のために
Project/Area Number |
15K09847
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Research Institution | The Ohara Memorial Institute for Science of Labour |
Principal Investigator |
西原 京子 公益財団法人大原記念労働科学研究所, その他部局等, 研究員 (80172683)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 妊婦 / 睡眠障害 / 胎動 / 母児体動の同期性 / 産褥期うつ状態 |
Outline of Annual Research Achievements |
妊婦の睡眠障害は、胎児の発達と共に妊娠後期に主に起きる。妊婦の睡眠中の胎児の動きと母親の覚醒・体動との同期性を検討し、母児の関係性の客観的な指標を作成し、産褥期に非適応状態であるうつ状態の早期発見を可能とする方法を検討する。本研究者は、産褥期の睡眠障害は、産褥期の非適応群に多く、新生児の発達に関係した要因と妊娠期の母親の睡眠障害などの精神生理学的要因に影響されると考えている。 本研究においては、本研究者が開発した胎児と母親の体動が同時に記録できるオリジナル胎動記録装置を用いて、特に母児の睡眠中の体動の同期性を検討し、この指標が、出産後の産褥期の非適応状態を示唆する指標になりうるか検討を行う。 本年度は、妊娠後期から産褥期までに、母児の体動記録を行うこと、さらに睡眠・授乳日誌、うつ状態、不安状態などの各種心理検査も行い、精神生理学的に総合的に検討する実験を計画し、この計画は、労働科学研究所の倫理審査委員会に承認された。胎動記録装置は、本来、胎児のwell-beingを見るために開発された装置である。2dhであり、1chは母親の腹部より胎動を記録し、もう1chは、母親の大腿部から母親の体動を記録する。胎児のwell-beingを見るためには、真の胎動信号を抽出することが必要で、母体動は、アーチファクトとして除去される解析ソフトを完成させた。この解析ソフトの妥当性を検討し、論文として発表した(Nishihara, et al, Plos One, 2015)。一方、このソフトで除外された母親の体動は、母親の睡眠中におきる、胎動に誘発される、Micro-arousalとの関係が予想され(Nishihara, et al, Early Human Dev 84, 2008)、ひとつの母親の睡眠障害の指標となりうる。そこで、母児の体動の信号を同定できているので、その同期性の検討をソフト上で行い、同時に起こった母児体動頻度を算出し、現在、検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
オリジナル胎動記録装置(2ch母児体動記録装置)で、母親の妊娠後期の睡眠障害の指標となりうるものは、臥床時間、臥床中の覚醒時間(1分間で母親の体動が4回あったと定義)、母児が同時に体動する回数である。これらの指標が、以前、われわれの睡眠ポリグラフィでで得られた結果と比較検討して、妥当であると考えられた。さらに、同期性だけでなく、母児のどちらが先行しているか、などと詳細に検討する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
データ処理のまず第一段階の見通しがついた。さらに妊婦さんの協力を頂き、実験を重ね、胎動記録装置が母親の睡眠障害を見るのにも有用であることを示す。
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Causes of Carryover |
現在、妊婦さんの協力を得て実験を行っている。この研究計画は、妊婦が被験者であるとともに、自らセンサーを腹部につけたり、レコーダの電源スイッチを入れるなど、実験者の側面をもつ。そこで実験に対して協力的な妊婦を選んでいるため、実験が遅れ、謝金の出費が少なくなっていて、繰り越した。 母の体動より、適切な睡眠障害パラメータを確立するためにソフトの改良を試みているが、まずは、マニュアル処理を行い、適切な定義づけをしてからと考えているので、ソフト開発の代金をまだ残している。 国際会議は、今年の学会に変更したので、その経費を残している。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
被験者謝金、ソフト改良代金、国際会議出席などに使用する予定である。
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