2016 Fiscal Year Research-status Report
在宅家族介護者における抑うつ症状発症率とリスク要因の解明:地域調査の縦断的解析
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15K09852
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Research Institution | National Center for Geriatrics and Gerontology |
Principal Investigator |
荒井 由美子 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 長寿政策科学研究部, 部長 (00232033)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 家族介護 / 抑うつ症状 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、縦断的な検討を行うことを目的とし、まず、第一次富山調査(以下、T1調査)で得られたデータと、第二次富山調査(以下、T2調査)で得られたデータをリンケージさせ、縦断的な検討が可能なデータを抽出した(341名)。次に、これらの家族介護者のT1時点における抑うつ状態と、T2時点における抑うつ状態をthe Center for Epidemiologic Studies Depression Scale(CES-D)を用いて比較した。 まず、家族介護者のCES-Dの平均値は、T1時点で13.0±9.1、T2時点で13.4±9.4であり両者には、有意差が認められなかった(対応のあるt検定、p=0.39)。 次に、T1時点に抑うつ症状を呈していなかった家族介護者のうち、「T2時点に抑うつ症状を呈するようになった介護者」を悪化群とし、「T2時点にも抑うつ症状を呈していなかった介護者」を維持群とした。追跡期間中の、家族介護者における抑うつ症状の発症率は、14.1%であることが明らかとなった。 第三に、T1時点における悪化群と維持群の特性を比較することで、抑うつ症状の発症の関連要因を検討した。χ2乗テストの結果、悪化群の家族介護者における嫁の割合、および妻の割合は、維持群に比して、高い傾向があった(それぞれ、p=0.057, p=0.051)。一方、家族介護者への支援があるか否かについては、家族、友人、医師、介護関係者いずれの場合も、その割合において両群間に有意差は認められなかった。また、両群間における要介護者の認知症の重症度、日常生活自立度、要介護度についても、有意差は認められなかった。T1時点において、維持群よりも悪化群の方が「家族介護者の主観的健康状態」が低い傾向があった(p=0.02)。以上より、追跡開始時点での家族介護者の主観的健康状態が抑うつ症状の発症の関連要因と考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通り、本年度実施予定の1)T1調査時点とT2調査時点のCES-D得点比較、2)家族介護における抑うつ症状の発症率の算出、3)家族介護における抑うつ症状の発症に係る要因探索を完了しており、順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度、本報告書記載の解析に加え、多変量解析を行い、更に検討していく予定である。並行して、T1時横断データとT2時横断データをリンケージさせた縦断データファイル(TFCS縦断データ)を用いて、「T1時に抑うつ症状を呈していた介護者のうち、T2時に抑うつ症状を呈さなくなった家族介護者」(C群とする)と「T1時に抑うつ症状を呈していた介護者のうち、T2時にも抑うつ症状を呈していた家族介護者」(D群)を同定する。 →C/C+Dを計算することで、追跡期間中の、家族介護者における抑うつ症状の軽快率を明らかにすることができる。次にC群とD群の特性を比較し、家族介護者における抑うつ症状の軽快に係る要因を明らかにすべく解析を進める。なお、最終年度のテーマである、家族介護者の抑うつ症状軽快については、国内外の文献検討の結果、先行研究が寡少のため、本研究を通じて少しでも有用な知見を得るよう努力する所存である。
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Causes of Carryover |
本年度は、計画通り研究を遂行することができたため、生じた次年度使用額は端数となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、最終年度となるため計画的に使用できるよう留意し、研究を遂行する予定である。
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