2017 Fiscal Year Research-status Report
脳に発現する免疫分子MHCの注意欠如・多動性障害への関与
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15K09862
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
中原 大一郎 宮崎大学, 医学部, 研究員 (80128389)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村上 元 埼玉医科大学, 医学部, 講師 (70613727)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | MHC-I / マウス / ドーパミン受容体 / メチルフェニデート |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ドーパミンシナプス結合の変化が推定されるMHC-I欠損型マウスが、注意欠如・多動性障害(ADHD)の新たな動物モデルになり得るか否かについて検索することである。 本年度は、まずドーパミン起始核(腹側被蓋野、黒質)と投射野(側坐核、線条体、前頭前野)におけるチロシン水酸化酵素、ドーパミントランスポーターおよびドーパミン受容体mRNAの発現量について解析した。その結果、野生型マウスと比較して、MHC-I欠損型マウスのドーパミン受容体mRNAの発現量に有意な変化が認められた。しかし、チロシン水酸化酵素、ドーパミントランスポーターおよびドーパミン受容体mRNAの発現量には違いが認められなかった。次に、二重染色法を用いて、ドーパミン受容体D1RとD2Rをそれぞれ有するニューロンについて、c-Fos発現に及ぼすメチルフェニデートの効果を調べた。その結果、メチルフェニデートの少量投与により、両群マウスで共に、c-Fos発現細胞数が減少した。また、MHC-I欠損型マウスでは、溶媒投与群に比べ、メチルフェニデート投与群のc-Fosを発現するD2Rの割合がD1Rに比べ増加した。しかし、野生型マウスでは、両者の割合は溶媒投与群とメチルフェニデート投与群で変わらなかった。以上の結果から、MHC-I欠損型マウスでは、少量のメチルフェニデート投与によりD2R発現細胞が優位に刺激され、ドーパミン系活動が抑制され、c-Fos発現が全体で減少することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、定量的PCR 法を用いて、ドーパミン起始核と投射野におけるチロシン水酸化酵素、ドーパミントランスポーターおよびドーパミン受容体mRNAの発現量について解析した。さらに、二重染色法を用いて、ドーパミン受容体D1RとD2Rをそれぞれ有するニューロンについて、c-Fos発現に及ぼすメチルフェニデートの効果を調べた。当該年度に予定した研究を一部変更したが、内容についてはほぼ計画通りに実施することが出来た。その結果から、MHC-I欠損型マウスにおける多動性、衝動性および不注意に及ぼすメチルフェニデートの改善効果の背景機構について詳しく分析することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究により、MHC-I欠損型マウスがADHD様行動(多動性、衝動性、不注意)を示すことが明らかになった。また、メチルフェニデートはMHC-I欠損型マウスのADHD様行動(多動性、衝動性、不注意)を改善することが明らかになった。MHCの遺伝子座は自閉症スペクトラム障害や統合失調症との関連性においても注目されているので、30年度の追加実験では、社会的行動試験とプレパルス抑制試験においてMHC-I欠損型マウスが示す行動特徴について検索する。
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Causes of Carryover |
当初予定していたマイクロダイアリシスによる細胞外ドーパミン濃度の測定実験を免疫組織学実験に変更したことにより経費を縮小できたため。また、予定していた学会参加を取りやめたため。 研究分担者および連携研究者との共同研究のための旅費、学会参加費、研究成果の発表のための論文掲載費に使用する予定である。
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