2016 Fiscal Year Research-status Report
自閉スペクトラム症における感覚障害を用いた診断マーカーの開発および病態解明研究
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15K09865
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
安田 由華 大阪大学, 医学部附属病院, 特任助教(常勤) (20448062)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山森 英長 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (90570250)
藤本 美智子 大阪大学, 医学系研究科, 特任助教(常勤) (50647625)
藤野 陽生 大阪大学, 人間科学研究科, 助教 (20707343) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 自閉スペクトラム症 / 診断マーカー / 感覚障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
自閉スペクトラム症は対人的コミュニケーションと相互作用の質的な障害、常同的な行動・興味を特徴とする神経発達障害である。人種を問わず人口の約1%を冒し、遺伝因子と環境因子による多因子疾患である。他の精神疾患と比較して遺伝率が高い(~90%)ことより、遺伝因子の関与が大きいと考えられている。その病態は不明で、根本的治療方法はなく、疾患概念そのものが発展途上にある。2013 年には診断基準が改定され(DSM-5)、「感覚障害」の項目が新しく設けられた。しかし、感覚障害は、診断基準に採用されたにも関わらず、評価方法として定まったものがなく、メカニズムも不明である。そこで、本研究においては、感覚障害の診断の為の客観的評価方法を同定し、診断マーカーを確立する。また、診断マーカーと、患者の認知機能、脳構造、神経生理機能、関連遺伝子との関連を検討し、病態解明の一助とすることを目的とする。 研究計画としては、自閉スペクトラム症患者と健常対象者に対して、数種類の異種刺激を用いて知覚および痛みを定量化する。また、痛みの感受性の強さと痛みの質についても群間比較し、自閉スペクトラム症における痛みの特性を明らかとし、診断マーカーとして有効な、感覚障害の客観的評価方法を確立する。さらに、定量化した痛みと、臨床症状、言語性記憶、視覚性記憶、注意・集中力、遅延再生記憶、言語流暢性、ワーキングメモリー、知能などの認知機能、三次元脳構造画像や拡散テンソル画像などの脳MRI 画像、前頭葉課題時の脳賦活や眼球運動などの神経生理機能のデータとの関連を明らかとする。また、痛みと、自閉スペクトラム症で特徴的な症候を組み合わせることにより、診断に寄与する因子を同定するとともに、リスク遺伝子との関連についても解析を進める。見出したリスク遺伝子については、細胞レベル、動物レベルで分子病態を明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
我々は、年齢と性別をマッチさせた、自閉スペクトラム症罹患群と健常対照群において、異種刺激に対する痛覚閾値を定量化し、群間比較を行った。刺激には、知覚・痛覚定量分析装置(Pain Vision;ニプロ)と温冷痛覚刺激装置(PTHWAY: Medoc)を用いた。また、前述の方法で、痛みを感じるだけの十分な刺激量(痛み耐性閾値)を同定し、痛み耐性閾値における痛みの主観的評価を測定した。この際、痛みの測定方法として世界的に普及している、visual analogue scale(VAS)により痛みの強さを測定した。同時に、McGill Pain Questionnaire(MPQ)を測定し、痛みの質の感覚的側面と感情的側面の両方を定量した。その結果、痛みを感知する閾値と、痛み耐性閾値において、2群間における有意な差は認めなかった(VAS; electrical: p = 0.044, cold: p = 0.011, heat: p = 0.042)。また、電気刺激と冷刺激に対する痛みの感情的側面におる感覚は、自閉スペクトラム症において、健常群よりも有意に低かった(SF-MPQ; electrical: p = 0.0071, cold: p = 0.042)。以上の結果より、自閉スペクトラム症罹患者では、痛みの身体的な感覚には障害がないが、痛みを認知する過程が障害されていることが示唆された。また、今回我々が用いた、痛みの感覚の測定方法は、自閉スペクトラム症の感覚障害の同定において、有益である可能性が示唆された。これらの成果について既に報告し(yasuda et.al, Ann Gen Psychiatry.2016.15:8.)、進捗は順調に進展していると考えられる。また、更に自閉スペクトラム症との鑑別が問題となっている統合失調症において、疼痛刺激によるデータを収集している。現在収集は順調に進行している。今後我々が報告した自閉スペクトラム症における知見と比較検討することにより、疼痛検査の疾患異性を検証し、診断マーカーとしての有益性について明らかにしていくことを予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は最終年度となるため、収集したサンプルにおいて、自閉スペクトラム症における感覚障害についての検討を行う。具体的には、自閉スペクトラム症との異同が問題となっている、統合失調症サンプルにおける感覚障害についても解析を行い、自閉スペクトラム症で得られた知見との比較検討により、疼痛検査が自閉スペクトラム症の疾患特異的な診断マーカーとして有益であるかどうかを検証する。 また、同時に、被験者の認知機能、三次元脳構造画像などの脳MRI 画像、脳波、眼球運動などの神経生理機能のデータについて、これらの諸検査間の相関関係について、比較検討を進める。疾患群と健常対照群を比較検討し、差を認めた場合、その認知機能、生理学的検査の特徴および臨床症状との関連について検討し、感覚障害のメカニズムを説明できるような、認知機能、生理機能、その他の中間表現型の特徴を見出すことが期待される。さらに、今後、これらの障害された中間表現型とリスク遺伝子の関連が明らかになることで、自閉スペクトラム症の分子遺伝学的基盤が明らかとなり、生物学的な病態の理解が促進することにより、疾患の予防、早期診断、早期介入および治療に役立ち、非常に意義深いと考えられる。 さらに、自閉スペクトラム症が症候群であることを考慮し、知能を含む認知機能、常同性、感覚障害などを用いて、集積したサンプルを異なるサブタイプに分類し、同様の手法によって、サブタイプ特異的な診断マーカーを見出し、そのメカニズムを解明することにより、疾患の病態解明を目指す。
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[Journal Article] Plasma metabolites predict severity of depression and suicidal ideation in psychiatric patients-A multicenter pilot analysis.2016
Author(s)
Setoyama D, Kato T, Hashimoto R, Kunugi H, Hattori K, Hayakawa K, Sato-Kasai M, Shimokawa N, Kaneko S, Yoshida S, Goto Y, Yasuda Y, Yamamori H, Ohgidani M, Sagata N, Miura D, Kang D, Kanba S. Plasma metabolites predict severity of depression and suicidal ideation in psychiatric patients-A multicenter pilot analysis.
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Journal Title
PLoS One
Volume: 11
Pages: e0165267
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Presentation] ASD-associated de novo mutations in POGZ impair the DNA-binding activity of POGZ.2016
Author(s)
Nakazawa T, Matsumura K, Nagayasu K, Kasai A, Hayata-Takano A, Shintani N, Takuma K, Yamamori H, Yasuda Y, Hashimoto R, Hashimoto H.
Organizer
55th American COllege of Neuropsychopharmacology (ACNP)
Place of Presentation
Florida, U.S.A
Year and Date
2016-12-04 – 2016-12-08
Int'l Joint Research
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