2015 Fiscal Year Research-status Report
愛着関連障害診断および被虐待乳幼児とその親のオキシトシン濃度についての研究
Project/Area Number |
15K09874
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Research Institution | Mejiro University |
Principal Investigator |
青木 豊 目白大学, 人間学部, 教授 (30231773)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤原 武男 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 社会医学研究部, 部長 (80510213)
遠藤 利彦 東京大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (90242106)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 反応性愛着障害 / 脱抑制対人交流障害 / 児童虐待 / オキシトシン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、2つの目的を持っている。第1は、反応性愛着障害及び脱抑制対人交流障害(DSM-5)(以下2つを愛着関連障害)の、構造化された評価法による症例検討である。愛着関連障害は、重度の社会的ネグレクト・剥奪により生じる障害とされており、虐待へのアプローチの中で、最重要な障害ではあるが、発生頻度は低いとされている。現時点まで、本邦では、症例のスケッチのみしか発表されていない。平成27年度にわれわれは、神奈川県下の全ての児童相談所と研究協力を行い、同障害が疑われ保護者の同意を得られる症例の抽出の方法を模索した。結果、年度末に1事例、構造化された評価法(愛着障害面接、愛着障害観察法、成人アタッチメント面接など)を行った、2人の評価者は一致して同症例は愛着関連障害ではないと判定した。今後、2年で反応性愛着障害と脱抑制対人交流障害をそれぞれ少なくとも2例ずつ、報告することが目的となる。 本研究の第2の目的は、被虐待乳幼児と虐待者の唾液中オキシトシン濃度を測定することである。近年愛着や絆形成の生物学的基盤として、視床下部で形成されるオキシトシンというホルモンが重要な役割を果たしていることが明らかになってきた。虐待は乳幼児の愛着や絆形成に負の影響を与えることが知られているが、世界的にもその時点で虐待されている子供としている親のオキシトシン濃度は研究されていない。倫理的な問題や、症例の選定など、これも困難な過程であったが、主に横浜市児童相談所との協力関係をより構築し、同所にて虐待サンプルを、主任研究者がパートで所属するクリニックにおいて対照をとることが決まった。平成27年の12月ごろよりその作業を始めた。まだ児童相談所での虐待例が得られていないが、クリニックで2症例の協力を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上記2つの研究が遅れている共通した理由は、研究協力者の同意をとることの困難さである。愛着関連障害は、そもそも頻度が稀な障害である。さらに重度のネグレクト例であるために、児童相談所がすでに支援を始めており、児童相談所との虐待している親との関係の困難な中、研究同意は容易ではない。虐待-オキシトシン研究においても、虐待サンプルについては同様の理由があり、昨年度末から始めたとはいえ、まだサンプルを得ていない。クリニックにおける対照(非虐待サンプル)については、既に2例を得ており、この速度を加速できる可能性がある。虐待―オキシトシン研究が、遅れている理由は、さらに1つある。唾液中オキシトシンのアセイは、共同研究者である成育医療研究所藤原武男氏に担当していただいていた。同氏が、平成28年度より、東京医科歯科大に移ったために、オキシトシンアセイが、その段階から中断せざるを得なくなった。現在、同氏とともに、オキシトシンアセイができる施設を探求中である。
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Strategy for Future Research Activity |
愛着関連障害研究については、児童相談所と共同して症例を見つけるためのさらなる工夫を行う。平成27年度末に、神奈川県の児童相談所のすべての保健師と会議を持つことができた。保健師は虐待症例のほとんどに関わっているために、同障害疑いの子どもを見つける可能性が高い。結果、平成28年の4月新年度に、保健師の意見もあり、2例へのアプローチが始まっている。 虐待-オキシトシン研究については、まずオキシトシンアセイが実際できる施設をできるだけ早く見つける計画である。既に記したように、藤原武男氏とともに、現在協力施設を探している。また、横浜児童相談所で虐待例の保護者に研究協力してもらうことの困難がある。唾液採取に加えて、虐待の内容や親の被虐待歴を詳細に聞く質問紙(それぞれICAST, CTQ)などがあり、支援の妨げになる可能性が生じるため、研究者側が対象に協力を申し出る可能性を低めている。これら質問紙を実施しない選択肢を検討する。
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Causes of Carryover |
本研究は,児童虐待を受けている乳幼児とその親を対象としているため,事例の収集について関係諸機関とシステムを作る必要があり,本年度はそのシステムづくりに多くの時間が必要であった。そのため,本来事例を評価する時点で必要となる経費を,本年度中は使用できる状況ではなく,そのため一定額の次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本研究において,唾液中のオキシトシンの測定,AAIの有資格者への評定依頼には,それぞれ相応の経費が必要になる。次年度以降は,事例が集まりはじめ,オキシトシン,AAIの評定共に開始されると考えられる。そのため,次年度以降は,これらの事例の評価に経費を使用する予定である。
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