2016 Fiscal Year Research-status Report
逐次近似的再構成法によるX線CT画像の三次元的画質実態解明
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15K09883
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
森 一生 東北大学, 医学系研究科, 大学院非常勤講師 (90375171)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
町田 好男 東北大学, 医学系研究科, 教授 (30507083)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | エックス線・CT / 画像再構成 / 画質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的: X線CTにおいてこれまでのFBP(filtered backprojection)に代わる新たな画像再構成法として逐次近似的再構成法が大きなトレンドである。低被曝線量で高画質とされ、大量の肯定的評価報告がある。近年はタスクベースド評価という考え方で臨床実態に近い条件での物理評価が台頭しているが、この結果も同様である。しかし我々はこの考え方にも大きな誤りがあり、過大評価と考えている。誤解のままに高価な逐次近似法への移行が進むのは是正が必要である。本研究では、脱タスクベースドの考え方で非線形CT画像の画質の定量的評価法を確立し、逐次近似的再構成法のエフィカシーについて明らかにする。
初年度で、必要な計測技術の開発を行った。すなわち、(1)雑音指標としてNPS(Noise Power Spectrum)をxy面内とともにz方向においても同時に得る。(2)xy面内の解像力指標として、超低CNR(Contrast-to-Noise Ratio)におけるMTF(Modulation Transfer Function)。(3)z方向の解像力指標として超低CNRでのSSP(Slice Sensitivity Profile)。これらの全てが、従来にない低CNR条件での高精度計測である。 当年度(28年度)での研究状況は次の通り。(4)前記の諸計測法の論文化は、論文執筆が遅れており不十分である。(5)xy面内とz方向とでそれぞれ個別に雑音と解像力を計測した画質指標群を「三次元的に統合する手法」の開発。逐次近似的再構成法が優れるとするこれまでの報告はz方向が抜けている点は誤りと考えられるからである。限られたデータではあるが、この考えが正しいことが確認できた。(6)逐次近似的再構成法では信号量が保存されない場合があることを発見した。これもこれまでの画質評価の誤りの一因子である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度は応分の達成度であるが、本年度とは進捗の程度がやや遅れている。今年度での予定と実態とは次のようである。 ・まず、初年度で得た知見と手法の論文化(論文化が為されなければ本研究の社会的意義が毀損する)。その1は微小なテスト被写体を用いた超低CNRでのMTFと信号量の計測である。今年度中に論文掲載のつもりであったが、ようやくMedical Physics誌に投稿し査読中となった段階である。その2は超低CNRでのSSP計測法であり、既に開発は終わっておりデータも集積しているが、いまだ原稿執筆中である。 ・最も重要なこととして、三次元統合評価のデータを得る、すなわち、信号量保存の問題も含めて三次元的に統合した画質評価を代表的な逐次近似応用再構成法および真正の逐次近似法に適用して、その意義を明らかにする。現状は一部の逐次近似的再構成法にこの三次元統合評価法を適用してようやくサンプルデータを得た段階で、多少の遅れである。しかしこのデータは、従来の評価法では逐次近似的再構成法が優れるという結論になるが、三次元的統合評価では、そうではないことを示している。すなわち逐次近似的再構成法による画質改善(解像力の代償無しに雑音低減あるいは被曝低減)は本質的に無効という初期の予想どおりとなることを示している。従って、初期からの研究方向は正しく、遅れはあっても確かな進捗である。充実した確実なデータを揃えるべく継続中である。 一方では予定外の成果があった。それは微小な信号の信号量保存の問題である。FBPなどの線形再構成では信号量は保存量である。しかし逐次近似的再構成法による画像は非線形であり、信号量は保存されず、FBPよりも低下する場合があることを発見した。小信号の視認性がFBPより悪化するのであり、画質の純損である。これも従来の画質評価が見過ごしている誤りである。
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Strategy for Future Research Activity |
新たな着目点による新たな計測評価技術はもはや必要ではなく、これまで得た知見と手法は十分なものと考える。その知見と手法に基づき、確実なデータを蓄積し、公表する。すなわち、 信号量保存の問題も含めて三次元的に統合した画質の物理評価を代表的な逐次近似応用再構成法および真正の逐次近似法に適用して、確実に信頼できるデータにまとめる。逐次近似的再構成法がFBPに比べより解像力が高くより低雑音の画像を提供するのか、視認困難な被写体構造の視認性を真に上げるのか、これらを論理的にスキの無い物理データの形で明快に示す。 そして論文の形で公表する。論文化は重要である。これが無ければ、本研究の社会的意義が損なわれる。
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Causes of Carryover |
本年度予算はほぼ使い切り、残額は2445円のみである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
データ採取のための旅費等に充当する。
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Research Products
(7 results)