2016 Fiscal Year Research-status Report
再構成低線量CT画像と仮想観察者実験システムを用いた被ばく低減の診断能評価
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15K09898
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
白石 順二 熊本大学, 大学院生命科学研究部(保), 教授 (30551311)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 医療被ばく / コンピュータ断層撮影(CT) / シミュレーション / 観察者実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,コンピュータ断層撮影(CT)検査における撮影線量(医療被ばく)の最適化を目的として,撮影線量を減少させた場合に低下する可能性がある診断能を評価するための,簡便で再現性が高い手法を開発し,同時にその評価手法の正当性の検証を試みている. 2年目となる平成28年は,ヒトに代わってコンピュータが診断能の比較の観察者実験を行う手法(iReaderシステム)を開発し,その初期検討として,本手法を表示性能の異なる2機種の液晶モニタの性能評価に用いた.この研究では,既存のファントム画像(信号あり20画像,信号なし20画像)を表示性能の異なる2機種の液晶モニタに表示し,その表示された画像をカメラで取り込み,得られた試料画像上の信号の有無とその程度をコンピュータが解析し,ヒトと同じように評定スコアを出力し,その評定スコアをROC解析で評価した. このiReaderシステムでは,ヒトの目のレスポンス関数をフィルタに応用することで,ヒトの観察者の検出能が観察距離によって変化するという現象を再現することが可能となり,さらに,試料画像の画像特徴量を入力データとして、人工ニューラルネットワーク(ANN)を学習させることで信号の見えやすさの違いを段階的に表現することが可能になった.そして,2機種の液晶モニタの検出能をiReaderシステムによって評価した結果,一般用の液晶モニタと医療用の高精細液晶モニタでは,医療用モニタの方が信号の検出能が高いということが,ヒトによる観察者実験を行わずに証明された.これらの成果は複数の学会において研究発表を行った. 平成27年度に完成させた低線量CT画像をシミュレーションにより作成する手法については,新規に開発した一対比較法により,そのシミュレーションの精度を検証する実験を開始した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成28年4月に発生した熊本地震により,研究室のPC類が破損し,結果的には,研究再開に2ケ月近くを要したため,全体的に研究の進行が遅れてしまった. また,本研究の2年目となる平成28年には,本研究の低線量CT画像再構成法を用いて作成した低線量CT画像と実際に低線量で撮像したCT画像との画質の比較を一対比較法により評価する予定であったが,地震後の院内システムの再開や,倫理規定に関係する個人情報保護法の改訂に伴って倫理審査の延長申請が遅れたため,年度の後半になってようやく一対比較法の観察者実験を開始することが可能となった. さらに,iReaderの開発では,当初,液晶モニタの性能とは逆の結果を示す事象が認められたため,システムの見直しを行い,ヒトの目のレスポンス関数を適用することでヒトが観察した場合と同じ結果を示すことが可能となったが,その過程において予想以上の時間が必要となり,開発が少し遅れてしまった.
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Strategy for Future Research Activity |
まず,現在進行形である本研究の低線量CT画像再構成法の正当性を評価するための一対比較法の観察者実験の結果をまとめて学会等で発表,論文化を進める.また,iReaderシステムについては,臨床画像(一般に公開されている胸部単純X線像における結節影のデータベースを使用する予定)を用いた研究を開始し,ヒトではなく,コンピュータが病変を検出し,その検出能をROC解析で評価することを試みる.そして,そのコンピュータにより得られた評価結果をヒトによる観察者実験の結果と比較し,本研究で開発しているiReaderシステムの臨床応用における有用性を証明する予定である.さらに,本研究の最終目標であるiReaderシステムを用いたCT撮影における撮影線量の最適化の評価に必要となる非常に淡い肝腫瘤を含む既存の肝膵領域CT 画像のレトロスペクティブな収集を開始する予定である.
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Causes of Carryover |
平成28年4月に発生した熊本地震の影響で研究計画に遅れが生じ,当該年度中に開始予定だった観察者実験の開始が延期されたため,観察者実験に参加する予定だった観察者(医師,診療放射線技師等)に支払う予定の謝金が使用されずに残ったため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度には観察者実験を開始し,当該年度に使用する予定だった分も合わせて,謝金として使用する予定である.
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Research Products
(4 results)