2017 Fiscal Year Research-status Report
再構成低線量CT画像と仮想観察者実験システムを用いた被ばく低減の診断能評価
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15K09898
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
白石 順二 熊本大学, 大学院生命科学研究部(保), 教授 (30551311)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 医療被ばく / コンピュータ断層撮影(CT) / シミュレーション / 観察者実験 / 機械学習 / ROC解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,コンピュータ断層撮影(CT)検査における撮影線量(医療被ばく)の最適化を目的として,撮影線量を減少させた場合に低下する可能性がある診断能を評価するための,簡便で再現性が高い手法を開発し,同時にその評価手法の正当性の検証を試みている. 3年目となる平成29年は,前年度に開発した一対比較法を用いて,平成27年度に完成させた手法により,シミュレーションで作成した低線量CT画像の正当性を評価した.その結果,シミュレーションによる低線量画像の臨床における整合性が検証されたので,それらを国内外の学会で研究発表により報告した.現在は,それらのデータを論文として投稿するための作業を行っている. 人に代わってコンピュータが診断能の比較の観察者実験を行う手法(iReaderシステム)については,コンピュータが信号を検出する作業に,近年,開発が進んでいるディープラーニングによる機械学習を導入することにして,そのためのシステム開発を行った.現時点で,偽陽性となる誤認識の頻度が機械学習の採用により半分に減少することが確認されている.今後,さらに学習方法に工夫を加えて,ヒトと同等の検出率をコンピュータが発揮できるように近づける. さらに,観察者実験で得られた結果の評価には,ROC解析が有用であるが,そのためにシカゴ大学で開発され,世界中で広く用いられてきたソフトウエアを,最近のPC環境に対応可能となるように修正・開発を行い,その論文を投稿した. また,機械学習には,膨大な数の画像データベースが必要であるが, そのデータベースを確保するため,石川県予防協会で保存されている過去7年間の健診用の胸部CT画像を用いた画像データベースの構築のための準備作業を始めた.このデータベースが構築されれば,胸部CT健診における患者被ばく線量の低減化に向けたiReaderシステムの開発が飛躍的に進むと期待される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成28年4月に発生した熊本地震により,研究室のPC類が破損し,研究再開に2ケ月近くを要したため,全体的に研究の進行が遅れてしまった. 本研究の3年目となる今年度は,倫理規定に関係する個人情報保護法の改訂に伴って倫理審査の延長申請が遅れていた,一対比較法による低線量CT画像の評価を完了し,その整合性を検証することが可能になったが,最終目標としているROC観察者実験の実施には至らなかった.これは,観察者実験に必要な画像データベースの構築作業を,熊本大学病院の症例で実施する予定であったものを,より規模の大きなデータベースを石川県予防協会との共同研究で行う計画が進んだためである. さらに,iReaderの開発では,システムのさらなる精度向上を目的として,3年前の研究計画時には予定していなかったディープラーニングによる機械学習をシステムに組み込むように計画を変更したため,そのシステム開発に時間を要したため,研究の進捗がやや遅れることとなった.
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる今年度の目標は,ディープラーニング等の機械学習に利用可能となるように,ラベルデータを特化した次世代型の大規模胸部CTの画像データベース(約7万例)の構築に向けた環境作りを優先する.このデータベースの構築にあたっては,画像データは匿名化処理と症例分類がすべて自動的に処理されるようにシステムを開発し,省力化を目指す.システムが構築された後は,最終目標とするデータベースの2%程度の小規模なデータベース(約1500例)をテスト的に作成する. データベースの構築と並行して,ヒトに代わってコンピュータが観察者実験を行うiReaderシステムの開発は,上半期のうちにディープラーニングによる診断能の向上を目指し,テスト的に作成した画像データベースを用いて,患者被ばく線量を低減化処理した場合の診断能の評価を行うことを目標とする.
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Causes of Carryover |
平成28年度に生じた熊本県大地震の影響で,平成28年度の予算の消化が困難となり,その金額が平成29年度に持ち越された.平成29年度は,その分のほとんどを消化したが,依然として次年度に繰り越さざるを得なくなった.
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Research Products
(3 results)