2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K09901
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
岩澤 多恵 横浜市立大学, 医学研究科, 客員教授 (40625175)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | MDCT / CAD / interstitial pneumonia / pulmonary fibrosis |
Outline of Annual Research Achievements |
間質性肺炎とは、間質と呼ばれる肺の構造が病変の首座となる疾患の総称であり、このうち、特発性で慢性に経過するものを慢性線維化性間質性肺炎と呼び、これには特発性肺線維症(以下IPF)と、特発性非特異性間質性肺炎(以下NSIP)が含まれる。IPFとNSIPではIPFのほうが予後不良であること、またNSIPはステロイドや免疫抑制剤が適応となるが、IPFでは抗線維化薬が使用され、ステロイドは推奨されないため、両者の鑑別は重要である。ただし、現実には画像での鑑別診断が難しい症例が多数ある。 岩澤と横浜国大後藤研究室は、これまで間質性肺炎のCT画像の定量評価システム;Gaussian Histogram Normalized Correlation segmentation system (GHNC システム)を開発してきた。今年度、我々は神奈川県立循環器呼吸器病センターで過去に外科的肺生検を行った症例について、GHNCの結果と病理診断を比較し、GHNCが肺の線維化を抽出できていることを確認した。これを北米放射線学会で発表し、Certificate of Meritを受賞した。病理との比較から、GHNCで肺表面のCTデータを分析することによりIPFとNSIPを鑑別できることを見出し、これらを論文として報告した(European Journal of Radiology, in-printing)。本技術は特許出願中である。 また、GHNCの肺抽出、血管抽出の技術の一部を応用し、横浜国大後藤研究室とともに肺灌流画像の解析の研究を行い、論文として発表した。 さらに、今年度我々は、間質性肺炎用のCTのファントム作成に取り組んだ。次年度は多施設において、このファントムを用いたCT装置、およびCTの再構成関数の違いによる画像の違いを検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1、病理所見とGHNCの比較 神奈川県立循環器呼吸器病センターで過去に外科的肺生検を行った症例について、GHNCの結果と病理診断を比較した。その結果、GHNCで線維化として抽出した領域は、病理学的にも線維化に対応することが確認できた。これまで、間質性肺炎のコンピュータ解析で、病理と直接比較したものはなく、GHNCの解析の妥当性が示された結果と考えている。またこうした病理との比較をもとに、IPFとNSIPの鑑別には肺の表面データの解析が重要なのではないかという仮説を立て、GHNCに改良を加えて、肺表面のCTデータを分析したところ、表面のごく浅い部分のGHNC解析の結果でIPFとNSIPを鑑別できることを見出した。これらの結果を論文として発表した(European Journal of Radiology, in-printing)。またこれらの結果をふまえて、GHNCの解析結果が実際に放射線科医師の診断に役立つか読影実験を行った。間質性肺炎が専門ではない放射線科医師5名で、GHNCの解析結果を参照しながら読影した場合、参照しなかったときに比較して有意に正診率が向上した。これについても学会発表をおこなった。 2、ファントム作成; これらのGHNCの結果を多施設共同研究での検証を進めるために、ファントムを作成した。CTは各メーカーごとに画質がやや異なる。現在、画像の定量評価とその臨床応用を目指す世界的な会議(QIBA)の活動の一環として、ファントムによるCT画像の画質の均質化が行われている。今回我々はやや不均一な発砲ウレタンファントムを用いて、間質性肺炎類似の内部不均一なファントムを作成した。 3、GHNCの肺抽出、血管抽出の技術の一部を応用し、横浜国大後藤研究室とともに肺灌流画像の解析の研究を行い、論文として発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
1、間質性肺炎におけるGHNCの診断能を評価する目的で、多施設共同研究を行う。参加施設は以下の6施設を予定している(神奈川県立循環器呼吸器病センター、横浜市立大学、琉球大学聖路加国際病院、小諸厚生病院、横浜南共済病院) 2、これらの施設で、ファントム撮影を行い、そのCT値や標準偏差の分布を検討する。 3、施設の倫理委員会承認のもと、文書による同意を得て、前向きに全体で100例程度の症例のCT画像を集める。これらのCTデータをGHNCで解析し、GHNCにおける肺表面の解析が、間質性肺炎の診断に有用か検討する。
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