2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K09911
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
古川 高子 名古屋大学, 医学系研究科(保健), 教授 (00221557)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 低酸素 / がん / NADH/NAD+比 / PET / Cu-ATSM |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では細胞質のNADH/NAD+比を検出できる蛍光タンパク質(PereDox)を利用して、がん細胞・移植癌組織内の低酸素状態を反映して集積するとされるPET診断薬Cu-64-ATSMの集積と、がん細胞および移植癌組織内、特に細胞質の酸化還元状態の関係についての理解を深め、Cu-64-ATSMのもたらす情報をより正確に判断し、診断・治療に役立てる基礎とすることを目的としている。 29年度は、28年度に続き、初年度に作製したPerDox発現細胞を用いて、培養溶液のpyruvate/lactateの割合による変化を基準に、低酸素の付加や培養溶液のpH、などがどの程度細胞の緑色/赤色蛍光比を変化させるかを検討した。28年度の検討で、蛍光強度の不足により結果の再現性が不十分であったことを受け、作製した細胞株のうち蛍光強度がもっとも強かったU87MG-PD#1-2株について検討を重ね、pyruvateやlactateの培地への添加による代謝変化に伴う細胞質の細胞質の酸化還元変化(=緑色/赤色蛍光比の変化)の際にCu-64-ATSM取り込み変化が起こること、また、Cu-64-ATSM取り込み変化が観察される低酸素負荷条件下で細胞質の酸化還元変化(=緑色/赤色蛍光比の変化)が起こっていることを確認した。培養溶液のpHについては、pH6.5以下では細胞へのダメージがみられ、取り込み変化がpHに依存するのか、付随する他の要因によるのかを特定することが出来なかった。 移植腫瘍についての検討では、in vivo蛍光撮像装置(IVIS, 住商ファーマ)での観察を試みたが、蛍光を捉えることはできたものの、緑色/赤色蛍光比の変化は測定できなかった。IVISの波長分解能の不足が主な原因を考えられるため、より蛍光波長分解に優れるMaestroによる観察を計画している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
課題採択後、予定外の所属研究機関の異動があり、それに伴う研究・実験環境の再構築に予想以上に時間がかかった。これまでは主に研究課題の申請時に所属していた研究機関(放医研)の研究施設・研究資源を利用して実験実施してきたが、遠距離で移動に時間を要するためスケジュール調整が難しく、また、2017年度は実験できなかった。より速やかな課題の遂行を可能にすべく、国内でCu-64を製造している数少ない研究機関であり、現所属機関からよりアクセスのよい福井大学の施設を利用させていただくことに了解を得、より速やかな実験実施が可能となってはいるが、これまでの遅れを取り戻すにはいたらなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
本課題の延長期間となる平成30年度は、細胞実験については結果についての普遍性を確保するため、これまでにデータの集積が進んでいるU87Mを親株とするPereDox発現株以外のPereDox発現株(A543-PD, HT29-PD)でのデータ取得を試みるとともに、移植腫瘍モデルでの腫瘍内緑色/赤色蛍光比の変化・分布データの取得を試み、CuATSMの分布と比較する予定である。これらin vitro, in vivoの結果を合わせて成果の取りまとめ、学会等での発表につなげたい。 これまでは主に前所属研究機関である放医研(千葉)にて実験を行ってきたが、本研究課題に不可欠なCu-64の使用が可能であり、前所属先に比べて現所属機関からアクセスのよい福井大学高エネルギー医学研究センター(BIRC)とコンタクトを取り、BIRCでも実験が可能な環境を確保することが出来たため、今後予定している実験のうち相当部分をBIRCにて行う予定である。また、動物実験および共焦点顕微鏡を用いる細胞実験の一部については浜松医科大学での実施も可能であることも確認しており、これらの施設を使用させていただくことで、これまでより速やかな研究課題遂行がかのうと考えている。
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Causes of Carryover |
研究課題の採択・開始後、予定外の異動があったため、計画全体に遅れを生じている。特に動物実験については、モデル作製を含めての飼育期間が長くなるため、実験施設の確保が難しく、異動後これまでほとんど進めることができなかったが、種々の手続きを経て、福井大学および浜松医科大学の施設を使わせていただくことが可能となった。 30年度の研究費はこれまで遅れの目立った動物実験を中心に、細胞実験の結果の再現性・普遍性の確認に必要な実験材料(実験動物、細胞培養試薬・器具)、実験実施に必要な旅費に使用するとともに、研究成果の発表にむけた準備にも当てる予定をしている。
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