2015 Fiscal Year Research-status Report
下肢閉塞性動脈硬化症に対する新規生体吸収型バイオステントの開発
Project/Area Number |
15K09968
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
吉川 公彦 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (10161506)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 内皮細胞 / ステント / 内膜過形成 / 平滑筋細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
高齢化社会の到来に伴い動脈硬化性疾患が急増し、下肢動脈の閉塞性動脈硬化症による間欠性跛行や重症下肢虚血に対する治療として血管内治療が従来の外科的バイパス手術に置き換わって第一選択となっている。我々は、これまでに下肢動脈疾患に対して金属ステントを導入し、治療成績を向上してきたが、慢性期においてはステント内の内膜過形成による再狭窄が問題となる。さらに浅大腿膝窩動脈では、歩行や運動により外力のストレスにさらされ、ステント破損による再閉塞が問題となる。金属ステントは長期的には生体内に異物を残す点で望ましくないため、近年、生体吸収型ステントの研究が盛んに行われているが、過去の生体吸収型ステントの臨床試験でもステント治療に起因した炎症細胞浸潤、内膜過形成が問題となっている。そこでわれわれは内皮細胞の膜を生体吸収型ステントの表面に生着させるバイオステントの開発を行ってきた。生体吸収型ステントの表面に内皮細胞を生着させることで、ステント留置直後からステント内腔は内皮細胞に被覆され、抗血栓性の機能を有し、かつ細胞増殖を抑制することが期待される。まず市販のナイチノール性自己拡張型金属ステントを内皮細胞で被覆し、抗血栓性の評価を行った。走査型電子顕微鏡及び免疫染色にて内皮細胞が金属ステント表面を均一に被覆されている事が確認出来た。ステントを目的の病変部位に留置するためにはカテーテル内に収納する必要があるが、ステントの圧縮、カテーテル内への収納を行っても、内皮層へのダメージや欠損は認められなかった。しかしステント内腔のバルーン拡張を行うと、内皮層の断裂、脱落が生じ、同部位には多量の血小板凝集が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ステント表面の内皮細胞層の確立に困難を極めた。妊産婦の臍帯から培養された内皮細胞層を有したステントが生体内に留置されると、内皮細胞が血流のshare stressに抵抗出来ずにwashoutされる事象が生じるため、生体の動脈系を模した循環システム内で条件付けを行う必要がある。まず最初の2週間で平滑筋細胞層を確立してから内皮細胞を注入し、さらに1週間の循環システム内での条件付けを行ったが、計3週後にはすでに大部分の内皮細胞層はwashoutされていた。原因として平滑筋細胞の過増殖のために内皮細胞の接着部が消失してしまい、内皮細胞が容易にwashoutすることが推察された。平滑筋細胞層の生着は行わずに、内皮細胞層のみ培養したが、1週間の条件付けでもすでに多くの細胞がwashoutされていた。最終的に2日間の条件付けで内皮細胞層がconfluentであることが確認出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
金属ステントの内皮細胞層の確立は達成されたので、生体吸収型ステントでの内皮細胞層の確立と抗血栓性の評価をin vitroで行う。生体吸収型内皮被覆ステントの抗血栓性が確認されれば、ステントデリバリーシステムへの収納を確立し、ビーグル犬での留置試験を実施する。その際にはビーグル犬の細胞とヒト臍帯内皮細胞の性質が異なる事が予想されるので、ビーグル犬の内皮細胞の培養とステントへの生着も確立する必要がある。ビーグル犬へのステント留置後3ヶ月で摘出し、内膜過形成の程度やステントの吸収率の程度など、組織学的評価を行う。
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Causes of Carryover |
当初循環ポンプ2個購入予定であったが、本年度はinvitroでのステント内皮化確立のため、循環ポンプを1つのみしか必要としなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
動物実験の段階でステント大量生産必要時に、循環ポンプを追加購入する予定である。
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