2015 Fiscal Year Research-status Report
放射線曝露細胞由来DAMPsが癌病態に及ぼす影響解明と制癌への応用
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15K09985
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
吉野 浩教 弘前大学, 保健学研究科, 助教 (10583734)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ダメージ関連分子パターン / DAMPs / 放射線治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
ダメージ関連分子パターン(DAMPs)はストレスに傷害された細胞から放出される因子である。がん治療において癌細胞由来DAMPsは抗腫瘍免疫誘導因子の一つとして注目されているが,ストレスやDAMPsの種類によっては腫瘍の増殖や転移を促進するなど不利益な点も明らかとなってきている。放射線治療は有効ながん治療であるが,放射線曝露細胞由来DAMPsが癌病態に及ぼす影響は不明である。本研究課題では,放射線曝露細胞由来DAMPsが癌病態に及ぼす影響を解析するとともに,そのDAMPs応答機構の解明を目指す。 初年度は,DAMPsを含有する放射線曝露細胞由来馴化培地(ICCM)を用いて,癌細胞由来ICCMが癌細胞の細胞増殖および抗がん処理に対する応答性に及ぼす影響を解析した。実験にはヒト肺癌細胞(A549及びH1299)を使用した。癌細胞にX線を照射し,24時間培養後,培養培地を回収,遠心し,上清を回収した。その後,フィルター濾過し,ICCMとして使用した。 まず,ICCM処理がA549の細胞増殖に及ぼす影響を評価したところ,ICCM処理による顕著な影響は認められなかった。次に,ICCM前処理が肺癌細胞のX線に対する応答性に及ぼす影響を検討した。非照射及び8Gy照射ICCMで前処理したA549とも8Gy照射により細胞死細胞集団が増加したが,興味深いことに,8Gy照射ICCMで前処理した細胞群では非照射ICCM処理群と比べて照射後の細胞死細胞集団の割合が有意に低かった。この結果から,ICCM前処理により放射線誘発細胞死に対する抵抗性が誘導されることが示唆された。また,p53遺伝子を欠損したH1299においても同様の結果が確認されたため,この現象はp53に依存しないと考えられた。次年度は,この作用機序を解明するとともに,浸潤・転移能などの癌病態解析および正常細胞に対する影響を解析する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
最適な実験条件の設定に予想以上に時間を要したため,当初の計画よりも若干の遅れが見られる。しかしながら,本年度で実験条件を確立することができ,また興味深い知見を得ることができたため,次年度における大きな進展が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度実施予定であった癌細胞の浸潤・転移に関する解析は次年度に実施する。本年度得られたICCM前処理による癌細胞の放射線誘発細胞死に対する抵抗性獲得に関しても,次年度にその機構解明に取り組む。その他の検討項目に関しては,当初の研究計画の通りに遂行する。
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Causes of Carryover |
平成27年度の研究に若干の遅れが生じたため,本年度の支出が当初より少なくなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度に実施出来なかった検討項目は次年度に実施するため,繰り越した分の助成金は検討項目実施のための実験消耗品費として次年度に使用する。その他の研究費の使用計画については申請書の通りに遂行する。
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