2017 Fiscal Year Research-status Report
ホウ素中性子捕捉療法おけるアブスコパル効果についての基礎研究と臨床応用
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15K09993
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
木梨 友子 京都大学, 原子炉実験所, 准教授 (80252534)
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Project Period (FY) |
2015-10-21 – 2019-03-31
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Keywords | アブスコパル効果 / ホウ素中性子捕捉療法 / DNA損傷 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は神経膠芽腫細胞を用いてTemozolomide (TMZ)による化学療法と放射線治療併用効果と免疫応答についての研究を実施した。がん抑制遺伝子p53変異型ヒト神経膠芽腫細胞T98Gおよび p53野生型ヒト神経膠芽腫細胞A172を用いて殺細胞効果と53BP1フォーカスアッセイによるDNA損傷についてTMZと中性子照射併用時の感受性の違いを調べた。ガンマ線照射時のD10値(生存率10%となる線量)はT98G細胞では7.0GyでA172細胞では4.8Gyであるが、中性子照射時(ホウ素10濃度が20μg/ml)のD10値はT98Gが1.1GyでA172細胞0.8Gyであり、ガンマ線照射に比べて中性子照射ではBNCTがエックス線抵抗性の脳腫瘍に対してより効果が期待できることが確認された。中性子照射後の53BP1フォーカス数はT98G細胞とA172細胞間に有意差はなかったがガンマ線照射後より多く中性子照射のDNA損傷はガンマ線より大きく回復も遅かった。中性子照射とTMZ の併用では両細胞ともに併用後の生存率では相乗効果は認められなかった。T98G細胞ではホウ素10が存在するBNCR反応において中性子照射とTMZ の併用により生存率が上昇しさらに抵抗性となった。BNCTにおいてもエックス線治療と同様に腫瘍細胞の遺伝子発現型によりTMZ併用時には治療効果が異なることが示唆された。放射線治療とDNA損傷系の抗ガン剤併用後に起きるDNA損傷のシグナルにより免疫反応が制御されていることが最近発表されている。T98GおよびA172細胞を用いて中性子照射とTMZの併用後にPD-L1を経時的に測定したが有意な免疫応答の変化はとらえられなかった。中性子照射線量が少なかったため免疫反応の影響がとらえられなかったと思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
原子力規制委員会の指示による試験研究炉用原子炉施設に対する新規制基準への対応のために京都大学研究用原子炉の改装工事の終了が当初予定よりも遅延した。さらに、再稼働後は多数に実験が込み合っていたため実験回数が制限され、研究課題の実験に想定以上に時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
放射線治療とDNA損傷系の抗ガン剤併用後に起きるDNA損傷のシグナルがガン細胞のPD-L1発現を誘発し免疫反応を制御しているかどうかを神経膠芽腫細胞の中性子照射実験により確認する。T98GおよびA172細胞を用いて中性子照射とTMZの併用後にPD-L1を経時的に測定して免疫応答の変化をとらえガンマ線照射時の変化と比較することでBNCT後のガン細胞に惹起される免疫反応の特徴を明らかにする。さらに、マウス移植腫瘍へのガンマ線照射実験により、照射部と脾細胞の組織変化を調べることでアブスコパル効果による免疫系の賦活化を検証する。腫瘍部位へガンマ線照射を行った時の照射部位ではない脾細胞障害の評価を脾細胞のアポトーシス誘導およびDNA-dsb (double strand breaks)修復関連タンパクgamma-H2AX および53BP1を染色してDNA-dsb部位に集積するフォーカス数の観察により脾細胞の障害度を把握する。さらに脾細胞における免疫反応の評価をPD1の測定と脾臓マクロファージの誘導を免疫染色で同定しBNCTに誘発される免疫反応を評価する。
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Causes of Carryover |
原子力規制委員会の指示による試験研究炉用原子炉施設の新規制基準に対応するため京都大学研究用原子炉の改装工事が行われたが工事の終了が当初の予定より遅延した。さらに原子炉再稼働後は多数の実験が込み合っていて研究課題の実験に必須のホウ素捕捉療法実験が当初計画通りに実施できなかったため、マウス購入費用および実験用試薬購入費用について次年度使用額が生じた。
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Research Products
(3 results)