2015 Fiscal Year Research-status Report
子宮頸癌幹細胞における放射線抵抗性機序の解明と癌幹細胞標的放射線治療法の確立
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15K09994
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小川 和彦 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40253984)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石井 秀始 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任教授(常勤) (10280736)
木村 正 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90240845)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 癌幹細胞 / 子宮頸癌 / 放射線抵抗性 / 標的治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、子宮頸癌幹細胞における放射線抵抗性機序の解明を行い、癌幹細胞を標的とした新規放射線治療法の開発に向けての基盤を構築することを目的とする。 子宮頸癌に対する放射線治療は効果的な治療法であるが、以前より、進行期子宮頸癌は予後不良であり、また初期癌においても局所再発や遠隔転移をきたす症例が存在し、さらには放射線抵抗性である腺癌の増加等により初期であっても根治が難しい症例も増えてきている。従って、更なる治療成績改善を目指した子宮頸癌の根絶を目指す革新的治療法の開発が必要である。 癌細胞の一部には、自己複製能、多能性、癌形成能を持つ癌幹細胞が存在し、放射線治療や化学療法等の治療に抵抗性であることが明らかとなっている。近年プロテアソーム活性の低い癌細胞群が、癌幹細胞としての特徴を持つという報告がなされている。プロテアソームはタンパク分解酵素であるが、その分解には特異的なアミノ酸配列(degron配列)の認識が重要であることが知られている。このdegron配列に蛍光タンパクであるZsGreenを結合させたタンパクZsGreen-degronを恒常的に発現させる細胞を作成すると、プロテアソーム活性の低い細胞(癌幹細胞群)では蛍光タンパクは分解されずに光り、プロテアソーム活性の高い細胞(非癌幹細胞群)は光らないという状況になる。 申請者は、子宮頸癌細胞においてZsGreen-degronを用いた同様の手法により、子宮頸癌幹細胞群の可視化、同定を行うことに成功した (Hayashi K, Ishii H, Ogawa K, et al. Int J Oncol, 2014)。本研究は、これらの可視化子宮頸癌幹細胞を使用し、子宮頸癌幹細胞の放射線耐性機序の解明、ひいては癌幹細胞を標的とした新規治療法の開発を目指した研究を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
子宮頸癌幹細胞における放射線耐性機序の解明を開始した。具体的には、癌幹細胞群、非癌幹細胞群におけるDNA repair(γH2AX 等)、ROS、Self-renewal (Wnt/β-Catenin、Sonic Hedgehog、Notch、Bmi-1等)に関連する遺伝子や蛋白発現の検討を行った。次に、確認できた子宮頸癌細胞の放射線抵抗性に関与する経路をウイルスベクターを用いてノックダウンあるいは過剰発現させた細胞に放射線照射を行い、放射線抵抗性のメカニズムの解明を目指した。照射線量については1回照射で2-10 Gyを行い、癌幹細胞群、非癌幹細胞群の細胞生存曲線の比較を行った。また、マイクロアレイによる網羅的遺伝子発現解析を行った。まず、in vitroで癌幹細胞と非癌幹細胞で比較しながら、cDNAマイクロアレイを用いて網羅的解析を行った。その後、マイクロアレイで同定された遺伝子群の発現状況の確認をreal-time PCR、蛋白発現はWestern blottingにて行った。
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Strategy for Future Research Activity |
現在の検討で同定を行っている標的遺伝子における機能解析や新規治療法の開発をin vitro, in vivoの両面にて行う。さらには、臨床検体を用いて、同定遺伝子発現の程度と予後との関連の検討を行う。具体的には、同定した標的遺伝子群による放射線耐性のマウス実験での確認、同定した標的遺伝子群を標的とした治療 (阻害剤によるマウス実験での放射線耐性改善の確認)を行う。 また、上皮間葉系形質転換(Epithelial Mesenchymal Transition (EMT) )経路の検討や、子宮頸癌幹細胞に対する新規併用療法(化学療法、分子標的療法)の開発を目指した検討を行う予定である。
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Causes of Carryover |
前年度に予定していた学会出張費と、本研究の実験に使用する消耗品の購入が予定より少なかったため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度以降は、実験に使用する消耗品の購入が多いことが予想されているため、消耗品の購入を主に使用する予定である。
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