2015 Fiscal Year Research-status Report
腫瘍特異性の高い放射線増感剤の開発-メトフォルミンを用いた胃癌細胞での検討-
Project/Area Number |
15K10008
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
茂松 直之 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (30178868)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
深田 淳一 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (50338159)
川田 哲也 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (60234077)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 胃癌 / 放射線増感剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、ヒト由来胃癌細胞(MKN_45、MKN_74)に対して放射線照射、メトフォルミン投与、両者の逐次投与、同時投与を行い、細胞生存率、アポトーシス誘導、細胞周期の変化について検討した。まず照射との併用に適したメトフォルミン濃度の測定をMTTアッセイ法で行った。その結果、薬剤濃度10mM程度から細胞生存率の減少が観察され、25mMで40%程度となった。再現性も良好であったためこの薬剤濃度を投与濃度として設定した。次に、コロニー形成法で生残率を測定したところ、照射と薬剤両者の投与において最もコロニー形成率が低下した。MKN_74における形成率は、コントロールを100%とすると、コントロール、薬剤単独、照射単独、照射と薬剤投与で100、83、71、66%であった。次にアポトーシス早期を示す細胞分画の比率についてアネキシンV抗体を用いてフローサイトメトリーで測定した。MKN_74における、コントロール、照射単独、薬剤単独、逐次投与、同時投与の5群で 0.3、1.3、1.8、1.1、1.8%であった。次に、細胞周期の変化を前述の5群で検討した。その結果、逐次投与でG1細胞の比率低下、G2細胞の比率上昇が見られた。MKN_45ではコントロール、逐次投与でG1/G2がそれぞれ49/12、49/30、MKN_74では60/11、47/17であった。他の投与法ではこの比率に大きな変化は観察できなかったが、DNA量のピーク値には変化が観察された。 本年度のまとめとして、メトフォルミン投与に適した濃度を決定して、照射とメトフォルミン投与による生存率と細胞周期の変化を測定した。胃癌細胞の生存率は両者を投与することで低下したが、アポトーシス分画の著明な増加は見いだせなかった。また逐次投与において、細胞周期の変化が観察された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒト胃癌細胞セルラインを用いたコロニー形成法では、メトフォルミンと照射を併用することでコロニー形成率の低下が観察された。コロニー形成法は結果が判明するまでに時間を要することから、他の実験と並行して施行しており、実験を効率的に進めて、期間内に成果が得られるように計画している。これに対して、MTTアッセイは簡便かつ速やかに薬剤の至適投与量を探索・決定することができた。 フローサイトメトリー法による細胞周期測定においては、逐次投与を除き、細胞周期の明らかな変化は検出できなかった。DNA量のピーク値にシフトが見られることについては、文献等も参考に他の解析法でも結果を確認、検討する。同じくフローサイトメトリー法によるアネキシンV抗体を用いたアポトーシス分画の検出では、照射と薬剤投与によるアポトーシス細胞比率の増加は見出すことができなかった。 全体として、本年度目標としていた①放射線照射、メトフォルミン投与による細胞生存率測定、②両者併用時の用量決定、③放射線照射、メトフォルミン投与、両者併用時それぞれの細胞応答(生存率、アポトーシス、細胞周期)の評価を行うことができた。 以上より予定の実験をすべて終了していないものの初年度としてはおおむね順調であると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は、①細胞周期の変化の観察、②アポトーシスの誘導について引き続き実験を継続し、フローサイトメトリー法を用いて照射、メトフォルミン投与、両者の併用による細胞応答を確認する。初年度は同時投与による有効性を明らかにすることができなかったが、②についてはTUNEL法による蛍光顕微鏡による観察を行い、結果を確認することも可能である。①については、より詳細に、細胞周期関連因子についてチェックポイント因子発現の変化をWestern blot 法、免疫染色法などで精査することでキーとなる因子について探索、特定することも検討する。これに加えて、メトフォルミンの抗腫瘍効果の機序とされている③AMPK活性及びPI3K-Akt-mTOR経路の活性測定を行う。メトフォルミンによる照射抵抗性の改善、照射の増感効果について検討するために、照射単独、薬剤単独、照射と薬剤の併用それぞれについて、上記経路の活性度をWestern blot 法、免疫染色法を応用することで評価する。放射線抵抗性については、④がん幹細胞マーカー(表面マーカー)の照射、薬剤と照射併用による治療前後の発現比率についてフローサイトメトリー法で測定し、検討を進める。
|
Causes of Carryover |
若干の未使用額が発生したが、消耗品の調達を効率的に行った結果と考えている。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度分の予算と合わせ、主に消耗品費に充当する予定である。
|