2015 Fiscal Year Research-status Report
酸性微小環境とのクロストークを介した癌のリンパ節転移メカニズムの解明
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15K10064
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
中西 雅子 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (60437382)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | リンパ管内皮細胞 / 微小環境 / 酸感受性受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
癌組織は周囲の正常組織に比べ酸性に傾いている。この酸性環境は癌細胞に作用して増殖を促進させることや、細胞外基質の融解酵素であるMMPの活性化を引き起こすことで、浸潤・転移といった癌の悪性形質の発現に関与することが報告されている。本研究では、癌組織の酸性環境がリンパ節転移にどのように関与しているのかを明らかにするため、プロトンとリンパ管内皮細胞(HDLEC)との相互作用に着目した。 HDLECを酸性環境下(pH6.4)で培養すると、コントロールに比較して細胞増殖の促進が認められた。また、通常培養では、HDLECは多角形で敷石状の増殖パターンを示したが、酸性条件下では突起を有する紡錘形細胞へと形態変化を生じた。細胞形態の変化は、遊走能や浸潤性の変化を示唆するものと考えられる。そこで、トランスウェルを用いたinvasion assayを行ったところ、酸性環境下において浸潤能の亢進が認められた。 以上のような細胞機能の変化をもたらすメカニズムを検討する目的で、リンパ管新生に関与する分子の発現をリアルタイムPCRにて検討した。その結果、VEGF-C、VEGF-D、IL-1b、IL-8、CXCL1のmRNA発現は、酸刺激により促進されることが明らかとなった。特にIL-8の発現増加は顕著であり、タンパクレベルでの産生増加もELISA法により確認された。HDLECはIL-8レセプターであるCXCR1/CXCR2を発現していたことから、酸刺激により誘導されたIL-8は、HDLECにおいてオートクライン的な作用を有する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ほぼ、研究計画どおりに進んでいる。現在までに得られた成果をもとに、論文投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究から、IL-8の発現変化が重要である可能性が示唆された。そこで今後は、HDLECにおけるIL-8の機能解析を中心に、添加実験あるいは発現抑制系を用いた検討を予定している。また予備実験において、HDLECでは数種の酸感受性受容体の発現が確認されている。したがって今後はHDLECの機能変化に寄与する主要な受容体の同定をおこない、細胞内シグナル伝達経路についても検討する。
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Causes of Carryover |
ほぼ予定通りの使用であり、小額が端数として残っている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度の使用予定額と合わせて、主として実験試薬や器具などの購入に充てる。
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Research Products
(3 results)