2016 Fiscal Year Research-status Report
臨床応用に十分な長さと蠕動運動機能を持つ全周性食道の再生:犬を用いた研究
Project/Area Number |
15K10119
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
萩原 明郎 同志社大学, 生命医科学部, 教授 (90198648)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 再生医学 / 消化管 / 動物実験 / 足場材料 / 羊膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
H28年度はH27年度に引き続き、食道や腸管に応用できる全周性組織の再生と血流豊富な消化管壁の作成方法をさらに発展させた。すなわち、最終目的である臨床応用可能な、言い換えれば臨床上安全な全材料から成り、蠕動運動を行い長さ20cm以上の全周性食道をイヌで再生するために、H28年度も、臨床的安全性が判っている足場材料を用いて、繊維化・瘢痕化と血流不足を克服することに注力した。そのために、再生足場には既に臨床現場でも使用されている新規の吸収性不織布であるポリグリコイドやポリ乳酸とカプロラクトンの共重合体(比率が75-25%、50-50%)の足場を開発した。H28年度には従来は作成が困難であったポリ乳酸とカプロラクトンの共重合体の多孔性不織布足場をエレクトスピニング法で作成する技術を確立した。すなわち例えば従来のエレクロトスピニング法で作成すると、繊維径が小さ過ぎることや繊維間の隙間が小さすぎる(多孔性が不十分)などの足場材料として欠点があり、また一方メルトブロー法で作成すれば多孔性には優れるものの繊維径が大きく不均一で繊維に結節状の不均一部分が出来る(繊維形状の欠点)などの欠点があった。それに対してH28年度に我々が開発したものは、繊維径が1~10ミクロンの均一な繊維径に調節が可能で、かつ繊維間隔もスペーサーの使用で任意に調節が可能な不織布足場材料である。これを用いて、H28年度には、動物実験で血管が豊富な大網ロール作成技術が確立した。更にこれを利用して、自家や同系の脂肪組織由来間葉系幹細胞、線維芽細胞、平滑筋細胞、心筋細胞や内胚葉系上皮系細胞の腹腔内培養技術を確立した。すなわちこれらの細胞を播種した吸収性不織布の再生足場を大網で裏打してロール状三重巻きチューブとし、動物で腹腔内共培養し、大網から隣接再生足場へ血管新生させ全周性チューブ状組織を再生することが可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計画が若干遅れた理由は、前項で述べたように、繊維化・瘢痕化と血流不足を克服するための足場材料を臨床応用可能な(すでに臨床応用されており臨床的安全性が既知である)足場材料を用いて作成する場合、その性能の安定性に不安があったためである。これに対してH28年度には、既に臨床現場でも使用されている新規の吸収性不織布であるポリグリコイドやポリ乳酸とカプロラクトンの共重合体を用いて、繊維径が1~10ミクロンの均一な繊維径に調節が可能で、かつ繊維間隔もスペーサーの使用で任意に調節が可能な多孔性不織布足場をエレクトスピニング法で作成する技術を確立した。その結果H28年度には、これを用いて動物実験で血管が豊富な大網ロール作成技術を確立し、すなわちこれらの細胞を播種した吸収性不織布の再生足場を大網で裏打してロール状三重巻きチューブとし、動物で腹腔内共培養し、大網から隣接再生足場へ血管新生させ全周性チューブ状組織を再生することが可能となった。このように若干遅延していた原因はH28年度中に克服された。
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Strategy for Future Research Activity |
上記理由の様に遅れの原因が克服されたので、今後は順調に研究を進めることが可能な見込みである。 第一段階In Vitro実験 無菌的に実験動物から口腔粘膜上皮、ADSC、FB、胃平滑筋細胞を採取・培養し、吸収性の再生足場上に播種し、1週間培養して「細胞を播種した足場」を作成する。 第二段階In Vivo実験 予め作成した上記の「細胞を播種した足場」を使用し、再生は次の2段階の手術で行う。① 第一回手術: イヌを開腹し、「細胞を播種した足場」を大網で裏打ちする。これをロール状に三重に巻いてチューブ状とし、これを熱架橋ゼラチンフレークで覆う(食道再生チューブの作成)。この食道再生チューブをまず腹腔内に2-3週間置き、この間に(a)消化管由来細胞が三次元腹腔内共培養される、(b)大網血管から血管が「細胞を播種した足場」に新生する、つまり食道再生チューブの腹腔内熟成である。この間にチューブ内腔面に粘膜上皮細胞が、丁度潰瘍表面が上皮化する如く再生するが、羊膜上の再生であるため線維(瘢痕)化が起こらず、また消化管由来間質細胞がフィーダー細胞となり、かつ血流が良好に保たれ、粘膜層の再生・長期維持がなされる。②第二回手術:食道再生チューブが熟成する2-3週後に、食道再生チューブの両端を消化管の間(実験モデルとして食道と胃の間)に端々に吻合・間置する。 第三段階再生結果の評価 上記の再生手術の3ケ月後以降、3ケ月毎に経時的に再生食道の検査を行い、再生食道の蠕動運動能機能を評価する。その場合、動物は6ケ月間隔で犠牲死せしめ、再生食道を摘出して再生状態(食道壁各層の再生状態、瘢痕形成の有無などの病理組織学的所見)を評価する。統計学的解析の観点から、一時点につき5匹を犠牲死させる
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Causes of Carryover |
B-Aの5916円は、研究の進捗状況の欄等に記載の通り、研究が予定より若干遅れたため、購入予定の物品を購入しなかったからである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度(2016年度)の研究の実績の欄等に記載の通り、今年度後半の研究により次年度には今年度の研究の遅れを取り戻すめどが立ったので、次年度には当初の予定通りの研究を進める計画である。そのため上記の5916円は、1年遅れて次年度に実施するの研究に使用する計画である。
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[Presentation] Novel anti-adhesion devices using scaffold material for regenerative medicine2016
Author(s)
Hiroyuki Tsujimoto, Tsunehisa Horii, Hiroe Miyamoto, Hiroko Torii, Yuki Ozamoto, Toshitaka Takagi, Hideki Takamori, Shuko Suzuki, Shinichiro Morita, Yoshito Ikada, Akeo Hagiwara
Organizer
40th World Congress of the International College of Surgeons
Place of Presentation
京都国際会議場、京都市、日本
Year and Date
2016-10-23 – 2016-10-26
Int'l Joint Research