2015 Fiscal Year Research-status Report
DNAメチル化の網羅的解析による潰瘍性大腸炎術後回腸嚢炎発症の機序解明
Project/Area Number |
15K10136
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
川村 幹雄 三重大学, 医学部附属病院, 医員 (00722589)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
問山 裕二 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00422824)
大北 喜基 三重大学, 医学部附属病院, 助教 (20378342)
楠 正人 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50192026)
荒木 俊光 三重大学, 医学部附属病院, 講師 (70343217)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 潰瘍性大腸炎 / 回腸嚢炎 / DNA methylation / サイトカイン |
Outline of Annual Research Achievements |
潰瘍性大腸炎(Ulcerative colitis: UC)の治療においては有効な内科治療が奏功せず手術に至る症例が2-4割存在する。UCに対する標準外科治療は大腸全摘、回腸嚢肛門(管)吻合(以下IPAA)であるが、術後合併症の代表として回腸嚢炎があげられる。回腸嚢炎は手術症例の15-50%に生じ、術後QOLを大きく損なうためUC外科治療において解決すべき問題となっている。その成因、発症機序については不明な点が多く標準的治療も確立されていない。そこで我々は術後回腸嚢炎発症に関与するDNA methylationを網羅的に解析することで、回腸嚢炎発症のリスク因子、治療経過と関連する因子を同定することを目的とした。初年度の計画として回腸嚢炎のratモデルを作成し回腸嚢炎発症に関与するCpG island methylationおよびtarget遺伝子(mRNA)の同定を目標とした。Ratモデルの制作着手にしたが手術手技ならびに手術後の生存が困難であったため並行して他の実験を行うこととした。当科には潰瘍性大腸炎手術症例の、大腸全摘時の標本から採取した回腸末端粘膜が保管されており、クリニカルサンプルを用いた関連mRNAの同定も併せて行うこととした。大腸全摘時回腸粘膜よりtotal RNAを抽出しcDNA化、ライブラリを作成した。試験的にproinflammatory cytokinesを測定しこれらのmRNA発現と周術期因子および回腸嚢発症との関連について検討した。その結果術後回腸嚢炎を発症した患者群で非発症群より有意にIL-1βが高値でありIL-1β高値群は術後回腸嚢炎の累積発症率が高い傾向がみられた。来年度はさらに新たなtargetの検索、mRNA解析、メチル化解析を含め、鋭意、実験を計画的に進め、国内外の学会や論文等で精力的に発表を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度の計画として回腸嚢炎のratモデルを作成し回腸嚢炎発症に関与するCpG island methylationおよびtarget遺伝子(mRNA)の同定を目標とした。Shebani ら(Inflamm Bowel Dis. 2002:)はDextran sulfate sodiumを用いた回腸嚢炎ラットモデルを、Banasiewicz Tら(Med Sci Monit. 2012)肛門狭窄を人工的に作成することにより惹起された、回腸嚢炎状態を誘導している。実験的にラットモデルの制作に着手したが、大腸全摘、回腸嚢肛門吻合後の生存が非常に困難であり、安定したモデルの確立に至らなかった。そのため動物実験を中心とした実験系より計画変更となった。一方でクリニカルサンプルを用いた実験は、抽出したRNAはその後の実験に耐えうるqualityを有しておりおおむね順調に経過しているものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定では、回腸嚢炎ラットモデルを用いた、treatment naive modelからの回腸嚢炎発症の病態機序解明を目指したが、動物モデルの作成が困難であり今後はクリニカルサンプルを用いた実験に移行する方針である。 具体的には保存されている大腸全摘時回腸末端粘膜を用いてDNAを抽出し、これよりDNAmethylation array、pyrosequencerによるDNAmethylation statusの評価に移る予定である。保存されている回腸粘膜の例数は限定されており、いずれも少量のサンプルであることから、解析困難であることも予想される。その際は、病理評価用にパラフィン包埋された回腸末端のブロックを薄切し、回腸粘膜をマイクロダイセクションすることでサンプル採取し、DNA抽出することで代用することとする。
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Causes of Carryover |
初年度に回腸嚢炎実験動物モデルを作成する予定で予算を計上していたが他の実験系に変更したため余剰が生じたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今後はクリニカルサンプルを用いた実験に移行し、DNAmethylation array、pyrosequencerによるDNAmethylation statusの検討に使用する予定である。 可能であればmRNAもさらに抽出しこれを用いたarrayにも使用する予定である。
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Research Products
(2 results)