2016 Fiscal Year Research-status Report
樹状細胞サブセットに着目した新規癌ワクチン療法の開発
Project/Area Number |
15K10146
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
松田 健司 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (30398458)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
瀧藤 克也 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (00254540)
山上 裕機 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (20191190)
堀田 司 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (50244744)
勝田 将裕 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (50464673)
横山 省三 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (90398462)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 樹状細胞サブセット |
Outline of Annual Research Achievements |
抗原提示細胞である樹状細胞は、機能的特性のことなる複数のサブセットから構成されている。その中でも、CD8α陽性樹状細胞が、抗腫瘍・抗ウイルス免疫応答において、重要な働きをしていることが明らかになっている。そのCD8α陽性樹状細胞に特異的に発現する分子として、ケモカイン受容体XCR1が見いだされた。さらに、XCR1のリガンドは、ケモカインXCL1であるが、抗原によるT細胞の活性化のために、CD8a陽性樹状細胞におけるXCL1/XCR1システムが重要であることも報告されている。本研究では、抗原特異的ペプチド・XCL1融合タンパク質を用いることにより、選択的に“真の樹状細胞”と考えられるCD8a陽性樹状細胞(XCR1陽性)に抗原特異的ペプチドを送達させることにより、非選択的に抗原を免疫する従来のシステムよりも、より強い免疫応答を活性化相で惹起させる方法を確立することを目的としている。昨年度構築した、マウスXCL1ケモカインに抗原ペプチドととしてAH-1、または仮想抗原としてよく用いられるOvalbmin由来ペプチドを融合させたワクチン(融合タンパク質)の作成を今年度は引き続き行い、大量精製可能となる条件設定を行った。ある程度の融合タンパクが得られたことから、作成した融合タンパク質を用いてin vitro , in vivoの実験を並行して開始した。in vitroで融合タンパク質がCD8a陽性樹状細胞(XCR1陽性)に送達されるかを、またin vivo で抗原特異的な細胞傷害性T細胞が誘導されるか、といった融合タンパクワクチンの動態、免疫応答を検索した
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
構築されたXCL1-抗原 融合タンパクの大量精製を開始した。培養細胞株としては293T細胞を用いた。融合タンパクの発現ベクターをtransfectionする方法として、リン酸カルシウムを用いたが大量精製の効率が不良であり、Polyethylenimine(PEI)を用いることで大量精製効率が改善された。transfection後、細胞培養上清を回収しタンパク精製を行っているが、この過程でも硫酸アンモニウムによるタンパクの塩析の条件、脱塩カラム使用条件、また融合タンパクに結合させているtagに対する抗体ビーズを用いたタンパク溶出条件を検討し効率的な大量精製の方法を模索している。一方で、精製された融合タンパクの一部を用い、in vitroにおいて、融合タンパク質がXCR1陽性樹状細胞に送達されるかの検討を開始している。マウス骨髄よりFlt3Lにて樹状細胞を誘導し、様々な濃度の融合ワクチンと共培養し、tagに対する抗体で染色しXCR1陽性樹状細胞(CD8a陽性細胞)でtagが検出されるかFlowcytometryを用いて検討中であるが、有意な検出には至っていない。また、抗原としてAH-1、OVAそれぞれの融合タンパクを in vivoに投与し抗原特異的CTLの誘導がみられるかを検討中している。OVAを含むの融合タンパクの皮下投与では、アジュバントとの併用が必要ではあるが、抗原特異的CTLの誘導が効率的に行われることをマウス脾臓で確認できており、XCL1/XCR1 systemが関連していることが示唆される。
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Strategy for Future Research Activity |
In vitro、またin vivoで使用するに十分な量の融合タンパク質が得られれば、in vitroにおいて融合タンパク質がXCR1陽性樹状細胞に送達されるかについて検討を重ねる。また、in vivoにても融合タンパク質の送達を確認する。具体的には、マウス皮下に融合タンパク質を投与し、所属リンパ節や脾臓中のCD8a陽性樹状細胞もしくはXCR1抗体を用いてXCR1陽性樹状細胞として検出し、融合タンパク質由来のtagが検出されるか、flowcytometryや免疫染色にて確認する。融合タンパク質を単独で、あるいはアジュバントと共に免疫し、脾細胞や所属リンパ節中の抗原特異的CD8 T細胞(CTL)をtetramer染色や抗原特的なIFNg産生にて検討しているが、その際、融合タンパク質の投与量や投与回数、投与間隔を検討する。抗原特異的CTLの活性化が投与条件によってより良好に確認される条件が決まれば、マウスに腫瘍を接種した後、融合タンパク質を免疫することで腫瘍増殖が抑制されるかどうか(治療モデル)、また、腫瘍存在下でのCD8+樹状細胞やCTLの活性化を検討する。またワクチン後に腫瘍を接種しその増殖抑制がみられるかの予防モデルでも検討する。腫瘍局所での樹状細胞やCTLの活性化を、腫瘍浸潤リンパ球や腫瘍浸潤樹状細胞を腫瘍より分離して検討する。この際に、樹状細胞やT細胞の活性化マーカーの他、PD-1、PD-L1などのimmune checkpoint分子の発現も時間経過を追って検討する。Immune checkpoint分子の発現が強く誘導されているのであれば、高く発現が誘導されるタイミングにて、抗immune checkpoint薬を投与することで、さらに強い抗腫瘍効果が得られるか検討する。
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