2017 Fiscal Year Research-status Report
肝虚血再灌流傷害におけるマイトファジー機構の解明と新規予防法の開発
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15K10173
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
矢永 勝彦 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (70220176)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白井 祥睦 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (10785364)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 肝虚血再灌流障害 / マイトファジー / Parkin / ミトコンドリア / アデノウイルスベクター |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は肝切除術または肝臓移植における虚血再灌流障害について、マイトファジーに焦点をあて、その機構を解明するものである。さらにマイトファジーのイニシエーターであるParkinを導入することにより、虚血再灌流傷害の新たな予防法を証明する。本研究は細胞培養実験および動物実験において検証され、実証された結果は将来的に臨床研究への応用を目標とするトランスレーショナルスタディである。さらにPARK2への介入による虚血再灌流障害の軽減策の検討も世界初の試みとなる。オートファジーと肝虚血再灌流傷害との関係は過去にいくつか報告があるものの、いずれもオートファジー亢進の最下流を確認するにとどまっており、本質は未解明なままである。オートファジーに関連する虚血再灌流傷害における遺伝子導入療法は世界初の試みであり、今まで効果的な改善策がなかった領域の新機軸となりうる可能性を含む。また、初代肝細胞を樹立し、疑似的な虚血再灌流モデルを作製し、Invitroでのメカニズムを解明する。 今回、申請者らは肝虚血再灌流傷害におけるParkin、マイトファジーを介した生体防御機構について解明し、マイトファジーを標的とした新たな肝虚血再灌流傷害の軽減策を検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在までに、本学の動物実験委員会の承認を得て実験を開始した。C57BL/6jを用いて虚血再灌流モデルを作成した。マウスは麻酔下に回復し、血管クリップを用いて左葉および中葉を選択的に血流遮断し(70%虚血)、任意の時間経過後医血管クリップを外して再灌流した。再灌流後は0-48時間まで経時的な評価を行った。阻血時間は20分、30分、60分に設定し、条件検討を行った。再灌流後の肝障害を肝逸脱超すお、アポトーシス関連タンパク(Cytochrome C, cleaved caspase 9、cleaved PARP)、病理学的評価、電子顕微鏡による形態学的な評価を行った。再灌流一時間後から肝逸脱酵素の上昇を認め、6時間後にピーク後漸減する傾向を認めた。同時にアポトーシス関連タンパクは再灌流後1-6時間後に発現が最も強く、その後漸減した。HE染色では60分虚血では再灌流後1時間より出血性変化を認め、その後は壊死領域が拡大した。電子顕微鏡による評価では膨化したミトコンドリアを観察した。20分虚血の病理評価では軽度の出血性変化を認めたものの壊死性変化は認めなかった。Parkinの変化は再灌流後24時間以降に発現の増強を認め、アポトーシスと相反する挙動を示した。一方、PAKRK2ノックアウトマウスであるB6,129S4-Park2(tmlshn)/Jを繁殖し、上記マウスと同様の条件で虚血再灌流障害を与えた。現在、回収した血清、蛋白、病理を解析中である。また、pFC14K HaloTag CMV Flexi VectorにクローニングかPARK2を導入しプラスミドを作成した。現在アデノウイルスベクターを作成中である。また、In vitroでは窒素条件下にて低酸素環境を作成し、虚血再灌流モデルを作成し、アポトーシス関連タンパク、PARK2の発現レベルを評価中である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の進捗状況は当初の研究方針より遅れているが、今後の研究推進方策には大きな変更はない。変更点としては、初代肝細胞樹立に大幅に時間を要するため、分化度の高い癌細胞を用いることとした。癌細胞を用いることは過去に多くの研究で用いられており、オートファジーおよびParkin発現が虚血再灌流保護的な働きをしていることを示す。マイトファジー阻害によるアポトーシス評価を行う。マイトファジー阻害剤(mdivi)を用いてマイトファジー減衰を確認し、虚血再灌流障害後のアポトーシスの評価および細胞活性を評価する。同時にPARK2ノックアウトマウスを用いて評価する。PARK2導入アデノウイルスベクターを用いてIn vitro、I nvivoにおけるParkin強制発現を確認し、虚血再灌流障害時にマイトファジーおよびアポトーシスに与える影響を確認する。
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Causes of Carryover |
2017年度にPARK2強制発現アデノウイルスベクターを作成し、In vivo、In vitroにおいてParkinの強制発現およびその効果を確認する予定であった。しかし、アデノウイルスベクターの作成に時間を要したため研究計画の練り直しを要し、未使用額は追加研究の経費に充てることとした。
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