2015 Fiscal Year Research-status Report
血流影響下での同種心臓弁・血管移植後石灰化に対する炭酸ランタンによる抑制法の検証
Project/Area Number |
15K10207
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山内 治雄 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (60726735)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小野 稔 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (40270871)
木下 修 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (40598512)
益澤 明広 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (30709572)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ホモグラフト / 炭酸ランタン / リン酸バインダー / 高リン血症 / ウサギ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、成長期の若年者へ移植された同種心臓弁・血管(ホモグラフト)の石灰化を、若年ウサギを用いた血流影響下での動物実験で証明し、炭酸ランタンの石灰化抑制効果を検証することである。 先行研究では、成長期の若年者へ移植されたホモグラフトは石灰化を伴う変性が術後早期に現れ、耐久性に問題があり、成長期特有の高リン血症が移植グラフトの石灰化促進の原因であることを、ラットの大動脈皮下移植モデルを用いて証明した(山内ら JTCVS 2013)。また、腸管からのリン吸収を抑制するリン酸バインダーとして臨床使用されている炭酸ランタンが、ホモグラフトの石灰化抑制効果を有することをラット大動脈皮下移植モデルで証明した(木下ら AATS 2010)。 これらの研究成果を元に以下のことを検証する。 ①1羽のNew Zealand White Rabbit(ドナー、生後7週)から腹部大動脈および下行大動脈をホモグラフトとして摘出し、2羽のJapanese White Rabbit(レシピエント生後7週)の頸動脈に移植した後、通常飼料で飼育することで、ホモグラフト石灰化促進の血流影響下モデルを確立する。飼育期間を2週・4週・8週・12週の群をそれぞれ3匹ずつ作成し、その後犠牲死させ、血中カルシウム・リン濃度の測定、ホモグラフトの病理学的評価、ホモグラフト石灰化の定量評価(原子吸光度法)を行う。適切なホモグラフト石灰化促進モデルの週数を決定する。 ②炭酸ランタンの経口投与により、若年齢レシピエント(Japanese White Rabbit)のホモグラフト石灰化の抑制効果および有害事象の有無を検証する。炭酸ランタンを1%・3%・5%の濃度含有させた飼料を作成し、ホモグラフト移植の術前・術後にウサギに与え、①で決定した週数飼育した後に犠牲死させ、上述の血液検査、病理学的評価、石灰化の定量評価を同様に行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2016年3月末日時点で、上記研究実績の概要における①の段階が終了した。これまでに、1羽のNew Zealand White Rabbit(ドナー)から腹部大動脈および下行大動脈を摘出し、2羽のJapanese White Rabbit(レシピエント)の頸動脈へそれぞれ移植し、レシピエントを通常飼料による飼育で2週×7羽、4週×5羽、8週×4話、12週×6羽の計22羽を生存し得た。尚、ウサギはストレスや環境変化に極めて弱いため、この経過中に14羽のレシピエントのウサギが死亡している(生存率61%)。生存し得た上記22羽のレシピエントのウサギから血液検査(血清カルシウム濃度、リン濃度)・病理学的検査・原子吸光度法によるグラフト中のカルシウム含有量の測定が終了し、若年ウサギの血流下ホモグラフト石灰化モデルに適正な週数は4週または8週と考えられた。それぞれにメリット・デメリットが考えられるため、上記研究実績の概要における②の段階では、4週と8週いずれの週数でも検証を行う方針となった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、レシピエントのウサギに通常飼料を与える群と炭酸ランタン含有飼料を与える群を作り、炭酸ランタンのホモグラフト石灰化抑制効果を検証していく。現在、オリエンタル酵母(株)に依頼し、炭酸ランタン含有飼料を作成中で、4月末には届く予定である。5月より適宜ウサギに同様の移植手術を行い、通常飼料または1%・3%・5%炭酸ランタン含有飼料を与えて、4週間または8週間の飼育を行い、これら8群×8羽の計64羽を目標に生存させる。同様の血液検査(血清カルシウム濃度、リン濃度)・病理学的検査・原子吸光度法によるグラフト中のカルシウム含有量の測定を行い、炭酸ランタンのホモグラフト石灰化抑制効果の検証と有害事象の有無を評価する予定である。
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Causes of Carryover |
当該年度では、主にウサギを用いた実験を行ったが、当初予定していたよりも現時点で使用しているウサギの数が少なく、飼育代が予定よりも低く抑えられていること、及び炭酸ランタンを含有するウサギの餌の使用もまだ実施していないことから、当該年度に予定した使用額を、実際の使用額が下回ることになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度には、全年度の研究結果を踏まえて炭酸ランタンを用いたウサギの実験をより多くの匹数で実施する上、炭酸ランタン含有の餌代としても予算が必要である。飼育代に加えて、研究検体の解析にかかる費用に対しても、次年度使用額を用いる計画である。
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