2016 Fiscal Year Research-status Report
集学的研究手法を用いたアテローム血栓塞栓症に対する包括的対策法の開発
Project/Area Number |
15K10231
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
福田 幾夫 弘前大学, 医学研究科, 教授 (50344594)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | アテローム塞栓症 / 大動脈粥状硬化 / 脳塞栓症 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き、上行大動脈を正確に切開するシステムの開発を行った。定常圧負荷をかけた豚大動脈標本を、我々が設計開発した血流非遮断大動脈吻合器を用いての穿孔実験を継続した。本システムは、直径10mmの正円の孔を上行大動脈を遮断することなく作成する穿孔器と、大動脈にあらかじめ縫着した人工血管から構成される。本システムのもっとも重要な点は、大動脈の全層に亘って、辺縁が平滑な孔を開けることが現状では大きな克服すべき困難である。大動脈壁は心外膜、大動脈外膜、中膜、内膜の4層から構成されており、それぞれ弾力繊維、膠原繊維、平滑筋、実質細胞の分布数が異なっており、一様ではない。実臨床では、大動脈壁には石灰化や脂肪沈着など二次的変化が加わり、層ごとの硬さは異なっており、容易ではない。解決のために穿孔器の基本設計は変更なく、円形剪刀の開発とシステムの統合を行なっている。 現在までに開発された試作器は、豚健常大動脈の全層をパンチアウトする直径10mmの正確な孔を開けることが可能であり、切開した大動脈片を確実に大動脈外に回収することが可能であった。本システムの円刃は、精密加工業者の協力で完成したもので、大動脈の穿孔のみならず、小児心臓手術における右心室から肺動脈へのジャンプグラフトの作成や、補助人工心臓装置の左心室筋肉の切除にも使用可能ではないかと考え、新たな設計を計画している。 年度後半では、動物を用いた検証実験を予定しているが、豚大動脈標本を用いた実験で穿孔器システムの不具合が発生し、後半の実験は延期となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前述のごとく、豚大動脈標本を用いた大動脈穿孔実験では、本研究費を活用した低侵襲大動脈穿孔器が確実に標本に平滑かつ均一な孔を開けることが可能であることを示された。以前のシステムでは、細胞成分が中心の内膜の穿孔が不十分であり、内膜の剥離などが生じたが、新たなシステムでは、内膜層まで均一に綺麗な孔を作成することが可能であった。円形の刃を作成するのは技術的に最も困難な点であるが、刃物メーカー数社に検討を依頼し、最終的に1社が開発に協力してくれたことにより成功に至った。先端形状も正円、斜円15度、斜円30度のものを試した。斜円30度のものが最も切開孔が均一で、内膜損傷も少なかった。 一方で、切開した大動脈片を回収するシステムは独自の形態が必要であり、回転する円刃の支点にもなるため、強度と複雑な形態が必要になるため、システム改善が必要であり、年度後半では開発された器械の点検及び改良に当てている。このため、研究は2016年12月以降はやや遅れているが、システムの調整が行われれば、順調に進捗する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は大動脈穿孔器のシステムの耐久性の強化を前半に確実に行う。このため、改良された大動脈穿孔器を安定した状態で再使用できるように調整、改良を行う。斜刃30度の円刃を用いて豚大動脈標本が確実に切除でき、内膜の剥離が起こらないことを肉眼的に確認する。これは肉眼写真、拡大写真、顕微鏡的観察で確認する。さらに年度後半では豚を使った実験を行う。これは、体重60kg前後の豚を用いて、麻酔をかけた上で胸骨を切開し、上行大動脈に人工血管を縫合し、大動脈穿孔器を用いてこれに孔を開けることで、大動脈を遮断することなく吻合できることを確認する。これを上行大動脈から弓部大動脈にかけて3~4箇所行う。豚は犠牲死させ、上行大動脈を取り出して肉眼写真で大動脈内部から観察する。標本を固定して人工血管吻合部を顕微鏡的に評価する。 また、手術で摘出した上行大動脈を使用して、ex vivoで動脈硬化の強い大動脈に本システムが使用可能かどうかを実験的に確認する。 研究が順調に進めば、本システムを用いて上行大動脈から頚動脈にバイパスを作成し、慢性実験を行う。豚は半年後に犠牲死させ、吻合部の内皮化の状態を肉眼的および顕微鏡的に観察する。
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Causes of Carryover |
2016年度後半に大動脈穿孔器システムの調整と改良が必要であったため、共同開発をしているメーカーに調整依頼をしている。調整改良が年度をまたぐことになり、調整費の支払いが2017年度に繰り越す必要が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
大動脈穿孔器の調整・改良は5月までに完了予定であり、直ちに実験を再開する予定としている。豚大動脈モデルでの実験が安定した結果が得られるようになれば、豚を用いた実験を開始する予定である。
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Research Products
(7 results)
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[Presentation] Pulmonary embolectomy in Japan2016
Author(s)
Ikuo Fukuda, Wakako Fukuda, Satoshi Taniguchi
Organizer
9th Conference of the German-Japanese Society of Vascular Surgery
Place of Presentation
Grand Prince Hotel Hiroshima(広島県・広島市)
Year and Date
2016-08-19 – 2016-08-20
Int'l Joint Research
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