2015 Fiscal Year Research-status Report
X線透過性素材(PEEK材)を用いた手術器具の開発
Project/Area Number |
15K10236
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
腰地 孝昭 福井大学, 医学部, 教授 (40273536)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 就久 福井大学, 医学部附属病院, 講師 (00397283)
田邊 佐和香 福井大学, 医学部附属病院, 助教 (00401993)
高森 督 福井大学, 医学部, 助教 (80397273)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 手術器具 / X線透過性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はハイブリッド手術室での血管内治療に使用する、X線透過性剛性素材を用いた新しい手術器具の開発を目的とする。 近年、循環器系疾患の血管内治療が急速に発展しつつある。心臓血管外科領域に於いては、胸部ならびに腹部大動脈瘤に対するステントグラフト術や経カテーテル式大動脈弁置換術など、ハイブリッド手術室での透視を併用した手術が増加しており、この際胸部大動脈や大動脈弁まで到達し、拡張した場合30mm径にもおよぶステントグラフトや人工弁を留置するためには7-9mm径のシースを大腿動脈や腸骨動脈を直接露出して挿入する手技が必須となる。この際に用いる開創器などの鋼製手術器具は透視下でガイドワイヤー操作を行う場合、X線不透過でありこれ自体が視野障害となり手技上の安全性や手術進行の点で問題と成り得る。 そこで今回X線透過性の高い鋼製素材であるPEEK(Poly Ether Ether Keton;ポリエーテルエーテルケトン)材を用いた鋼製手術器具を作製し、その利便性と実用性を検証して臨床使用に耐えうる器具を開発することを目的とした。PEEK材はその特性(非常に高い耐熱性及び剛性、吸水性が低い、寸法安定性が高い、高い表面硬度及び機械的強度、耐薬品性に優れる等)から鋼製手術器具の材料に適していると考えられ、また安全性の高い素材であり、実際に医療用材料として生体に使用されている実績がある。 以上を踏まえ本研究では先ず基礎実験としてPEEK材のX線透視下における視野確保、細径ガイドワイヤー等の視認性での優位性を確認した。 本結果より開創器の試作品を株式会社シャルマンに委託・作成し、動物実験にてX線透視下における視野確保、細径ガイドワイヤー等の視認性、創展開状況、器具破損の有無、使用後の洗浄、滅菌の利便性について評価し、結果臨床使用に耐えうると判断した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は動物実験に先がけて、通常使用しているハイブリッド手術室においてPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)材プレート(3.95mm厚及び19mm厚)、ステンレスプレート(1mm厚~)、アクリルプレート(2mm厚)、及び各種ガイドワイヤー(0.018、0.032、0.035inch)、マーカー付きカテーテル、造影剤を使用し、各種プレート下でのX線透視下 における視認性及び操作性に関する基礎研究を施行した。 その結果、ステンレスプレートでは1mm×2枚以上の厚さにおいて視認性が著しく低下し、各種ガイドワイヤー及びマーカーの視認が困難であったのに対し、PEEK材では3.95mm×4枚(15.80mm)及び19mm厚でも視認性は保たれており、各種ガイドワイヤーやマーカー及び造影剤の視認性は良好であった。 この結果を踏まえ、先端部分のみならず、ヒンジ及びラチェット部以外の全体ををPEEK材で作成した開創器の試作品を作製した。 動物実験では試作品は上記の通りヒンジ及びラチェット部は金属で構成されているためこの部分のX線透視下での視認性は低下するものの、従来品と比べ明らかに視野障害は軽減され、各種ガイドワイヤーやマーカー及び造影剤の視認性は良好であった。また開創器の本体の目的である創の展開については従来品と比べ劣性は認めず確実に創展開が可能であり強度的に問題なく破損は認めなかった。また創部への侵襲性(皮膚障害や出血)も認めず、洗浄・滅菌(オートクレーブ)に関する不具合も認めず、臨床使用にも使用可能と判断した。 この結果を元に開胸器に関してもデザインを決定し、現在試作品を作成中である。
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Strategy for Future Research Activity |
開創器に関しては動物実験を積み重ねることにより更に改良点を探るととも胸部大動脈瘤ならびに腹部大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術や閉塞性動脈硬化症、急性下肢動脈閉塞症例のうちハイブリッド手術室でX線透視下に手術治療を行う症例に対し臨床試験を行い、その安全性と利便性を評価する。 本臨床試験では総大腿動脈または外腸骨動脈を露出させる際にX線透過性素材(PEEK材)を用いた開創器を使用し、X線透視下における視野確保、細径ガイドワイヤー等の視認性、創展開状況、器具破損の有無、使用後の洗浄、滅菌の利便性の各項目について5段階に術者(研究代表者あるいは分担者)が評価する予定である。
また開胸器に関しても試作品を作成し、動物実験による上記項目の評価及び試作品の改良を行い、臨床使用に耐えうる試作品であると確認された後に開創器同様臨床試験を行い、その安全性と利便性を評価する予定である。
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Causes of Carryover |
動物実験用手術器具及び薬剤を購入予定にあたり当施設所有の物品を可能な限り使用し、結果的に想定額よりも安価に抑えることができたため
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
動物実験継続予定であるため、次年度(平成28年度)物品費として使用する予定である。
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