2016 Fiscal Year Research-status Report
心臓大血管手術中ヘパリン投与下での自己濃厚血小板採取方法の確立に関する研究
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15K10247
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Research Institution | Kawasaki Medical School |
Principal Investigator |
種本 和雄 川崎医科大学, 医学部, 教授 (90330547)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 血小板 / 自己血 / ヘパリン / 血小板機能 / 血小板凝集能 / 心臓手術 / 止血 / 成分採血 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヘパリン投与下で採取された自己血小板が、ヘパリン投与前に採取されたものと採取血小板数、血小板機能ともに差がないことを示すためにブタを用いた動物実験を行った。全身麻酔したブタを用いてヘパリン投与前と後で自己血小板採取を行った。採取には成分採血装置COMPONENT COLLECTION SYSTEM (HEMONETICS社)を用い、血小板凝集能はHEMATRACER 712 (HCM社)にて測定を行った。採取した自己濃厚血小板浮遊液中の血小板数は非ヘパリン群で153.6±67.6×10・4乗/μl、ヘパリン群で142.8±47.6×10・4乗/μlであり、有意差はなかった(p=0.69)。血小板凝集能はADP2μM凝集で非ヘパリン群32.1±9.2%、ヘパリン群で24.1±13.6%(p=0.183)、コラーゲン2μ凝集で非ヘパリン群43.4±28.5%、ヘパリン群で28.8±16.4%(p=0.183)で何れも有意差はなかった。 今回の結果でヘパリン投与前後で比較すると、採取した自己濃厚血小板浮遊液中の血小板数、血小板凝集能ともに差がなく、ヘパリン投与が自己血小板採取に影響を与えないことが分かった。 体外循環を用いた手術24例に対して人工心肺開始後早期に人工心肺回路から自己血小板製剤を作成し、人工心肺離脱プロタミン中和後に返血した。平均5単位(3~14単位)の採取が可能であった。自己血小板製剤返血前後で血小板数は33,000増加し、血小板凝集能の改善もみられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
基礎データとなる動物実験の進行や、それを受けての臨床適応のための倫理審査などに手間取ったために臨床例での施行が遅れたが、すでに臨床例で24例の症例収集が行われ、順調に症例が蓄積されているので、平成29年度では大いに進展することは間違いない。
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Strategy for Future Research Activity |
上記基礎データを受けて、本学倫理委員会に申請を行い、臨床で人工心肺手術を行う患者において自己血小板採取の検討を行う。具体的には人工心肺回転による循環を確立してすぐに、人工心肺回路に成分採血装置を繋いで濃厚自己血小板浮遊液を採取する。手術手技を完了して人工心肺を離脱し、プロタミンにて中和をした後に、採取しておいた自己血小板を患者に返血する。手術開始時、プロタミン投与後、自己血小板返血後の血小板数、血小板凝集能を検討する。再手術症例、緊急手術、透析患者、血小板数異常症例などを除外する予定なので、年間50例程度の症例でデータを収集することを想定している。 今後も引き続いて臨床症例の蓄積に努め、自己血小板返血による血小板数増加、血小板凝集能改善などの結果を出したい。また自己血小板製剤投与による術中術後出血量減少などのデータも明らかにしたい。
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Causes of Carryover |
臨床研究の開始が、倫理委員会の手続きなどのために遅延していたため、臨床での使用が遅くなり、本年度は臨床例への使用が予定していた症例に達しなかったため、予算使用額が予定より少なくなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2017年度では、すでに順調に進んでいる臨床研究がさらに進んで症例数が増加するため、その費用として支弁する予定である。
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