2016 Fiscal Year Research-status Report
移植肺由来血中遊離DNAの定量による肺移植後急性拒絶反応の新しい診断方法の確立
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15K10256
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
杉本 誠一郎 岡山大学, 大学病院, 助教 (40570148)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 肺移植 / 一塩基多型 / 急性拒絶反応 / DNA / 診断 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、臨床肺移植において、レシピエント血中にある移植肺由来の血中遊離DNAを定量することで肺移植後の急性拒絶反応を診断することを目的にしている。昨年度の血漿サンプルの集積と実験系の確立に引き続き、本年度は更なる症例の集積と解析を行った。まず、生体肺移植ドナーとレシピエントの一塩基多型(SNP)をreal time PCRを用いて比較し、ドナー由来のSNPを同定した。移植後14日間、レシピエント血中遊離DNA中の移植肺由来遊離DNAが占める割合をdigital droplet PCRを用いて測定し、経時的変化と臨床経過を対比した。生体肺移植13症例で検討した結果、安定例が5例、感染例が4例、急性拒絶反応が4例であり、急性拒絶反応を発症した症例では、移植肺由来の血中遊離DNAが上昇することが統計学的な有意差をもって証明できた。また、移植肺由来の血中遊離DNAは、現在一般的に使用されている臨床検査よりも鋭敏に肺障害を検出することができ、臨床的に急性拒絶反応と診断されるより早期に、移植肺由来の血中遊離DNA量の上昇を認める症例が存在した。重要なことに、感染例では移植肺由来の血中遊離DNAの有意な上昇は認められなかった。このため、臨床肺移植における移植肺由来の血中遊離DNAの測定は、急性拒絶反応の早期診断・治療だけでなく、感染との鑑別にも有用である可能性が示唆された。肺移植後急性期の主な合併症である感染と急性拒絶反応の鑑別は、治療方針が相反するため肺移植後管理のキーポイントであり、今回の研究成果は臨床肺移植に大きく貢献する可能性がある。また、生体肺移植後の原発性移植片不全においても移植肺由来の血中遊離DNAが上昇していたため、その機序についても今後研究予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
症例集積や移植肺由来の血中遊離DNAの解析などが順調に進んでいるため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、更なる症例集積や解析に加え、適切なSNPの選定により移植肺由来血中遊離DNAの測定個数を最低限にし、研究コストを可能な限り抑えていく。また、肺移植後の原発性移植片不全における血中血中遊離DNAの役割についても研究を行っていく。
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Causes of Carryover |
購入予定であった物品の費用が残額を上回り、次年度に物品を購入する予定に変更したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
購入予定であった物品を次年度に購入する予定である。
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Research Products
(4 results)